話題の「ゼロ円葬」 「生活保護なら葬式はタダ」は都市伝説

5月18日(金)7時0分 NEWSポストセブン

ジャーナリスト、浄土宗僧侶の鵜飼秀徳氏

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 簡素で格安な葬儀が人気となっている。中には、まったくお金のかからない「ゼロ円葬」というものまで耳にする。こうした葬儀の実態とは? 浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が分析する。


 * * *

 葬送の簡素化が、急拡大してきている。葬送とは「死者を弔い、祀る儀礼や慣習」のこと。一般的には、葬式や墓地への埋葬などを指す。故人に対し、残された人は、地域の寺社と関わりを持ちながら、繰り返し弔いを重ねる。一般的には「死者がカミに昇華する」と言われる50回忌まで、生者と死者との関係は続けられていく。それが日本人の、死者への向かい方であった。


 しかし、そうした弔いの慣習が次第に失われ、日本は「無葬社会」と化しつつある。顕著なのが、葬式の規模の縮小である。


 参列者を集めないタイプの葬式「家族葬」。葬式をせずにダイレクトに火葬する「直葬」。これらの簡素な葬式はかつて、世間に死の事実を知られたくない場合に行われる「タブーな葬式」であった。だが、この5年ほどでごく一般的になりつつある。都心部では家族葬が全体の5割、直葬は3割以上を占めているとのデータもある。


 また、「墓なんかいらない。遺骨は全部海に撒いてほしい」などと、墓を建立せず「散骨」を望む者も少なくない。火葬後、船をチャーターして遺骨を海に撒く葬送サービスなどがある。


 さらに、「送骨」なるサービスを手がける寺院もある。利用者は宅配便を使って、遺骨の入った骨壺を寺院に送り、供養してもらう。遺骨は個別、あるいは合同で納骨堂や永代供養墓に収められる。永代供養付きで3万〜5万円が相場である。


 合理的とも、バチ当たりとも思えるこの送骨サービス。だが、この葬送を選ぶ人の理由を聞けば、多少は納得できるかもしれない。


 例えば足腰が不自由になって、伴侶の遺骨を菩提寺に運べないというケース。あるいは、遠い親戚の遺骨が回り回ってきて、埋葬先に困惑するケース。また、生活困窮者の受け皿としても利用されている。


 とにかく葬送は簡素に、カネをかけずに、というのが最近の潮流だ。だが、ネット上では一部、誤った情報も流れている。


 ひとつは「ゼロ円葬」と言われるもの。これは喪主が生活保護を受けている、あるいは身寄りのない故人にかわって、国が最低限の「送り」をしてくれることを指す。「生活保護を受ければ行政がタダで葬式をやってくれる」と誤解している人もいるようだが、それは事実ではない(注1)。


【注1/生活保護法第18条は、「遺体の運搬」や「火葬」「埋葬」などに限って保護を受けられることを規定している。したがって、原則的には通夜・葬儀・告別式・戒名授与など、きちんとした「弔い」は含まれない。】


 また、一時ワイドショーなどで、「大学医学部に献体(注2)をすれば葬式費用がタダにできる」などとのまことしやかな話も流れたことがあった。だが、それはありえない。葬式費用を浮かせるための献体は本末転倒であり、大学側がそれを受け入れることはない。


【注2/解剖など医学研究のために遺体を提供すること。】


【プロフィール】うかい・ひでのり/1974年、京都市生まれ。成城大学卒業後、新聞社記者、日経BP社を経て2018年に独立。主に「宗教と社会」をテーマに取材を続ける。著書に『寺院消滅』、『無葬社会』(いずれも日経BP刊)など。近著に『「霊魂」を探して』(KADOKAWA刊)。現在、浄土宗正覚寺(京都市右京区)副住職、東京農業大学非常勤講師、浄土宗総合研究所嘱託研究員。


※SAPIO 2018年5・6月号

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