「ゴミ屋敷で死んだ債務者」の謎の死に様… 差し押さえ物件のリアル

2023年5月20日(土)14時0分 tocana

 不動産競売物件情報サイト「BIT」では、税金滞納などで差し押さえられた物件を見ることができる。差し押さえの結果である物件そのものはこうして誰でもネット上で閲覧することができるが、差し押さえの現場そのものは通常は知りえないものだ。そうした中、トカナでは過去に、差し押さえのリアルな実情を語った不動産執行人ニポポの記事を掲載した。以下、「暗黒物件」シリーズの第二回を再掲する。


 不動産執行人は大量に発生した虫、汚物、ネズミのみならず、債務者の死体にも晒されることがあるという……。


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※ こちらの記事は2018年11月4日の記事を再掲しています。


——DV・自殺・暴力団・宗教・統合失調症…事故物件よりも鬱になる「暗黒物件」の闇を“不動産執行人”ニポポが語り尽くす…!


●これまでの「暗黒物件」シリーズはコチラ


 借金や住宅ローン返済の滞りから発生した、不動産の差し押さえを行う「不動産執行」。


 この仕事で一番厄介なことはなんですかと問われれば、多くの執行人がこう答えるだろう。


「死体の第一発見者になること」


 もちろん執行中の出来事であるため、殺人の嫌疑がかかるようなことはないのだが、警察への報告義務が生じるだけでなく、そのまま死体の隣で作業を続行しなければならないケースも多いということで、なんと言っても気分がよろしくない。


「臭いは?」と臭気を気にかけてくれる方も多いのだが、既に臭気を発しているような死体であれば、近隣からの通報が入り発覚している事例がほとんど。


 とはいえ、我々も普段からゴミ屋敷、汚物、大小さまざまな動物と臭気に晒されているため、少々鼻が“バカ”になっているのかもしれない。


 今回はそんなことを改めて痛感させてくれた物件を一つご紹介。当該物件の債務者が、一体どういう経緯で不動産執行に至ったかは“とある理由”(後述)から、執行人である私(ニポポ)にも分からないが、物件そのものの衝撃度は群を抜いていた。


 この日の不動産執行は長雨の影響もあり、全員に手早く終わらせてしまおうという思いがあった。


 某地方都市のかつては飲み屋街だったのであろう横丁。駅チカながらも人口減のため客足は遠のき、看板を下ろすことなく出ていった空きテナントの並ぶ区画に、なぜかポツンと佇む平屋建てが当該物件だった。


 今回はベテランの鍵師、ダンディーな執行官、やたらとにこやかな立会人、そして若手の不動産鑑定士という執行人チーム。


 このダンディーな執行官はいつも着る服のセンスも若々しく、車もピカピカに磨き上げられたおしゃれなSUV、なにやら隙を感じさせない人物として知られていた。


 建物をぐるりと見渡すと、窓の施錠が甘かったため、鍵開けは窓から行われることに。雨の影響で緩和されてはいたが、外周の苔やカビなどからも相当湿気の溜まりやすい物件であることが伺える。


「ゴミ屋敷になってるんで、気をつけてください」


 早々に解錠を済ませた鍵師よりアナウンスが入る。


 開けられた玄関より内部を覗くと、確かに内部はゴミ屋敷化していたが、雨漏りと蚊やハエといった虫の大量発生の方が遥かに気にかかる。


 そのため土足での入室が検討されたが、「一面畳敷きですし、一応スリッパで入りましょう」との決断が執行官より下された。


 注文住宅のようで狭い平屋建てながらも縦のスペースが活用されていたり、空間が上手に切り取られていたりと間取り自体は悪くない。


 室内には雨漏りによる痛みとゴミによる足場の悪さ、不快な臭気、なにより体にまとわりつく虫の煩わしさ。これらからいち早く開放されたいとの思いが強かったか、膝丈まではあろうかというゴミの上をズンズンと突き進む執行官。


 奥の部屋に差し掛かる頃、けたたましい叫び声が響いた。


「ネ、ネズミぃぃぃいいいいいぃいいいぃいぃぃ!!」


 普段から隙がなく窮屈さすら感じさせるほどのダンディーな執行官が、どこかの猫型ロボットのような悲鳴を上げ慌てふためき逃げ惑う姿は実に滑稽で、現場には珍しく執行人たちの笑い声が溢れることに。


 執行官がネズミに驚かされた奥の部屋へと進むと、確かにアチラコチラでゴミの中がガサゴソと動いており、時折ネコほどもあろうかという大きなネズミが我々の侵入に驚き走り回る姿を見せた。


 この日の不動産執行は雨脚に加え虫やネズミの影響もあり、近隣に対する境界トラブルの聞き込み調査は後日に回されることになり、いそいそと片付けられた。


「いやあ、みっともない姿をお見せしてしまって。今日は土足にすべきでしたね」


 ダンディーな執行官から珍しく笑い話での締めという手土産をもらい、各々が現場を後にした——。


 思わぬ形で再びこの物件の話題が上がったのは数日後、別の現場で顔を合わせたあのダンディーな執行官が慌てた様子で切り出したのだ。


「あのネズミの現場、ゴミの下から債務者の死体が出てきたらしいですよ……。自殺ですって……」


 そう言われればあの時、大量発生していたネズミや虫、そして臭気が我々にシグナルを発していたのだろうが、「早く終わらせたい」の一心で誰一人としてそこに目を向けることができなかった。


 よく考えればこれまで多くのゴミ屋敷に入ってはきたが、虫に加えネズミが発生している現場に出くわしたことはなく、もう少し疑問を感じるべきだったのかもしれない。


 債務者の死体がどのような経緯でゴミの下へと隠されることとなったのかはわからないが、ベテラン執行人たちの言葉によると今回の事例のようにゴミの下から死体が出てくるケースは少なくないという——。


 そして、債務者が不動産執行に至るまで転落した経緯は、債務者自身の口からしか聞くことができないため、今回のように債務者が死亡しているケースでは、全てが闇の中なのだ。


 笑い溢れる珍しい現場という明るいイメージで記憶されていた今回の物件だったが、一転「死体の上を歩いていたかもしれない」という実に後味のよろしくない暗黒の記憶へと上書きされることになった。


 発見された死体は、思いの外崩れていたそうだ。
(ニポポ)


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