地球の自転を止めて核兵器からアメリカを守る狂気の「レトロ計画」とは

2024年5月20日(月)12時0分 tocana

 兵器開発とはアイデア勝負の側面もあり、これまでにもさまざまな奇想天外な兵器が考案されてきたが、ナチスや日本軍も仰天するのが冷戦時代の米軍である。1960年には地球の自転を止める計画が真剣に検討されていたのだ。


■ロケットエンジン1000機で地球の自転を止める!?


 米ソ冷戦時代のアメリカ政府の最もシリアスな懸念の1つが、ソ連によるアメリカ本土への先制核攻撃であった。


 アメリカ本土の各所にある主要なミサイル発射基地の正確な位置はほぼソ連側に知られており、当然、先制攻撃ではこれらの基地が同時に狙われることになる。もしこれらの基地が同時に被害を受けた場合、報復攻撃の能力が著しく失われることが政府内で大きな問題となったのだ。


 そこで1960年、アメリカの軍事分析家たちは地球の自転を止めてロシアの核攻撃からアメリカを守るという驚くべき計画を立案した。


「レトロ計画(Project Retro)」と名づけられたその奇想天外な計画案は、ソ連の先制核攻撃を検知した際にアメリカ中の大出力ロケットエンジンを1000機同時に稼動させて地球の自転を一瞬だけ停止させるという驚愕のプランであった。


 自転を一瞬停止させることができれば、ソ連から放たれたミサイルの着弾地点が狂い、各ミサイル基地の攻撃能力が温存されるのである。


 しかしこの計画にはいくつかの致命的な欠陥があることに米国防総省(ペンタゴン)のダニエル・エルズバーグ氏はすぐに気づいた。


 地球の自転速度は赤道上では時速約1674kmにもなっており、もし一瞬でも止まれば地表にあるあらゆるものが物凄い速度で“ズレる”ことになる。海岸沿いの都市は巨大な津波によって壊滅し、地表は捲り上がるほどの地滑りが起きて大災害となる。皮肉にも先制核攻撃の被害とは比べものにならないカタストロフィーが起きるのだ。


 そしてそもそもロケットエンジン1000機で地球の自転を止められるはずはなく、ある物理学者の試算では地球の自転を止めるには1000兆基のロケットエンジンが必要であるということだ。


 発想は面白いかもしれないが、この「レトロ計画」はまったくのナンセンスであり、たとえ一時の間であったにせよ政府と米軍で検討されていたというのはやはり当時の冷戦下の軍事的緊張は計り知れないものがあったということだろうか。


■冷戦時代の米軍の“トンデモ兵器”


 米ソ冷戦時代の1950年代から1960年代にかけて、米軍ではほかにも興味深くもあり突拍子もない新型兵器が考案されている。


●原子力ジェットエンジン
 原子力(核エネルギー)をエネルギー源としたジェットエンジンで航空機やミサイルを飛ばす計画が検討されており、 1955年には核弾頭を搭載したSLAM (Supersonic Low Altitude Missile、超音速低高度ミサイル) が考案された。


 SLAMの射程は16万キロ(10万マイル)にも及び、ソ連に熱核弾頭を打ち込むことを目的に設計された。いくつかの試作品が製造されたものの、その後に考案された大陸間弾道ミサイル (ICBM) 技術に取って代わられた。


●核地雷
 主に「核地雷」として知られる原子破壊兵器(Atomic demolition munition、ADM)は想定される戦場に埋められ、起爆させて敵軍を妨害することを目的に考案された。冷戦中には実際にイタリアと西ドイツ、韓国に配備されている。


 実際に使用されたことはないのだが、もし起爆させれば一帯が核に汚染されるためそのリスクが甚大であることはいうまでもない。


●空対空核ミサイル
 AIR-2ジニー(AIR-2 Genie)は、ダグラス・エアクラフトが開発した核弾頭搭載の空対空ミサイル弾で、敵の爆撃機編隊を撃破するために開発された。


 ミサイルは空中で爆発し燃焼するため放射性降下物はほとんどなかったが、アメリカの都市上空で使用できることを示すデモンストレーションでは、5人の空軍士官を立たせた上空でジーニーを爆発させ、その安全性がアピールされた。


 米ソ冷戦のプレッシャーの中で、両陣営の熾烈な軍拡競争が行われていたが、兵器や戦術面でも常に敵を凌駕するアイデアが練られていたことはいうまでもない。いずれも実戦で使われなかったことは不幸中の幸いなのだろう。


参考:「Daily Mail」ほか

tocana

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