【アイドル刺傷】ドイツ人は語る「地下アイドル文化は日本の宝。高い道徳性が生んだ文化をなくしてはダメ」

5月26日(木)8時0分 tocana

※イメージ画像:ThinkStockより引用

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 私はルドルフ・グライナーです。日本とドイツ、そして世界の文化について研究しています。

 亜細亜大経営学部3年生でアイドル活動をしていた東京・武蔵野市の冨田真由さんが21日、小金井市のライブ会場前でファンの男にナイフで首や胸など20カ所以上をメッタ刺しにされた事件を聞いて、「地下アイドル時代の終焉」も囁かれていると聞き、どうしても書かずにはいられなくなりました。
 なぜなら私が見て、ほかの国になく、日本にだけある文化が「地下アイドル」と「ご当地アイドル」であり、これが本当に素晴らしい文化だからです。

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■地下アイドルのライブ参加

  私も日本に来たとき、「地下アイドル」を見に行ったことがあります。世界各地にも洞窟のようなライブハウスやジャズクラブがありますが、日本の場合は「アイドル」グループが出てきて、ファンと一緒になって騒ぐという感じで、とても異様です。ファンとアイドルは、非常に近い距離ながらも舞台と会場の関係が守られており、ファンは“舞台”を楽しんでいます。

 そしてライブ終了後、「物販」というコーナーがあり、そのアイドルが“舞台”からおりてきて、直接自分の商品を売ったり一緒に写真を撮ったりします。舞台が終わった後、楽屋に行って直接語らうことを、ライブハウス全体で行うような状況に、さすがに私も目を疑ったものです。こんなにたくさんのファンを相手にする「アイドル」は、実にすごいし、それを数少ないスタッフで行うなど、ほかの国では考えられないことなのです!

■日本の特徴「物販」

・高い道徳性と秩序

 そもそも日本人は、3.11の震災でも暴動を起こさず、みなで助け合った人種です。そのような高い道徳性と秩序をもつ日本だからこそ、この物販の仕組みが成立していると私は思います。これがほかの国であれば、必ず奪い合いが始まり、最悪の場合、殺し合いに発展してもおかしくありません。あるいは、ボブ・サップのようなガードマンを50人以上雇うとか……。

・時間を守る国民性

 次に、“時間を守る”のも日本人の特徴です。日本人は世界一地下鉄のダイヤも航空機のタイムテーブルも守ります。まさにその時間に対する几帳面さが、一人何分という時間でお話をするというようなことができるようになるのです。

 社会的地位も何も関係なく、日本の中における「秩序」によって成り立つ物販は、素晴らしい文化であり、宝なのです!

■楽しそうなアイドルたちに楽しそうなファン

 では、なぜそのような楽しい集いができるのでしょうか? 一つは、外国人がアクトレスに感じているものと同様に、「美しい」「カワイイ」女性を対象にそれを「見る」「応援する」楽しさです。しかし、それならばわざわざライブハウスに行ってアイドルを見る必要がありません。では、この「地下アイドル」といわれる人々にあって、「有名な芸能人」に対する感覚ではないものは何でしょうか?

1、「育ててゆく」という感覚

 欧米人は「出来上がったものを摘み取って喜ぶ」ところがあり、私はこれを、狩猟民族的であると思いますが、これに対して日本人は、「育てる」ことで、「自分も一生に成長する」ことを非常に強く望む農耕民族的な性質があります。それだけに「デビュー当初から応援している」とか「デビュー前から注目していた」というような言葉が、アイドルファンの間で「自慢のひとつ」であるような会話として出てくるのです。

2、ファンの自己表現の場になっている

 しかし、もうひとつあります。それは「ファン自身がアイドルに見られていることを喜ぶ」ということです。日本では「参加型アトラクション」が欧米以上に人気ですが、それはアイドル業界でも同じです。「自分が一方的に応援している」のではなく、「アイドルが自分のことを覚えていてくれる」「アイドルが前の会話の続きをしてくれる」ことに対し、満足するのです。彼らの着ているTシャツに、何か所もサインや日付があるのは、まさに、「何回も来ている証拠」をアイドルに見せて、自分をアピールしているからです。それは「アイドルを応援する」のではなく「アイドルに注目されたい」という気持ちのあらわれです。

 この、「アイドルに注目されたい」という感覚は世界各国あり、それが「ストーカー事件」に発展していることは多々あります。ただ、日本ではこの「見られたい願望」が健全に発展し、地下アイドルの物販につながっていました。要するに、「地下アイドル」こそ、実はテレビなどには出ていないけれども、最も発展した日本の文化のかたちだったと思うのです。そして、ここまで文化を発展させたのは、日本国民特有の高い道徳性にほかなりません。

 しかし、日本でも悲しい事件が起きてしまいました。何の罪もないアイドルが、被害に遭うなど絶対にあってはいけないことです。そして、これは日本の新しい文化を絶やしてしまいかねない、とても衝撃的な事件です。どうか、今後同じような事件が起きないよう、そしてこの文化をなくさないよう、ファンも、アイドルも、運営側も努力していかなければなりません。安易に「地下アイドル」「握手会」をなくそうと考える前に、何か新しい安全対策を考えた方が、今後の日本の文化の発展に繋がると思います。
(文=ルドルフ・グライナー)

※イメージ画像:ThinkStockより引用

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