40代シングル、『積立NISA』が気になっている。が、金より得を積もうと思い、ゴミ拾いを始めることにした

2024年6月4日(火)8時0分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第25回は「積立NISAよりも積立NEESAN(姐さん)だ」です。

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積立NISAやるべき?


話題の『積立NISA』が気になっている。あちこちで情報が流れているので、皆様も周知だとは思うが、政府が推奨している非課税投資制度のことだ。一般社団法人投資信託協会が、20〜79歳の男女を対象に行った2万人アンケートによると、そのうちの13.8%が保有しているらしい。

ぼんやりと(やったほうがいいよなあ……)と思いつつ、中高年特有のフットワークの重さが邪魔をしている。同い年の友人と先日も『積立NISA』の話題になった。

「うちの息子がね、私がずっと『積立NISA』について騒いでいたから『積立兄さん』という人がいるんだと思っていたらしいの」
「(笑)」
「ひさちゃんは『積立NISA』、やってる?」
「まだなんだよねえ、やるなら色々と調べたいと思っていたら時間が過ぎてしまって。他でちょっとやってはいるけど、本腰は入っていないかも」
「でも本当にやる価値があるのかな」

二人とも、特に株取引、信託などを信用していないということではない。我が実家も含む、日本の家庭財務は“貯金”をベースに資産形成を続けてきた。私も「金を貯めろ」と口が酸っぱくなるほど、親から言われて育った世代だ。「金に働いてもらう」という話には、未だに尻が据わらない節がある。

「この前、株をやってるゆうこりん(小倉優子)は国が推奨しているから、怪しいって言っていたんだよ。けど私の友人で投資に詳しい子がいるんだけど、その子は少額でもいからやっておけばと。どっちが正しいのか分からんな……。いっそのことタンス預金でいいやと思っちゃう」
「うーん、でもお金よりももっと積立ておくべきものがあると思うんだけど」
「ほう」

さて、おばさん二人の会話はどんな方向へ向かうのか。

金よりも徳を積む


友人は老後の心配をして日々稼いだ金を積み立てていくのなら、徳を積んだほうがいいのでは? と話し出した。おばさん二人で真剣に話しているが、中身はない。

「例えば投資に手を出したとして、大災害が起きたらどうなるのか分からないし、投資したお金が手元にくる絶対的な保証はないでしょ。それに有事に必要なのは、現金でもなく、助け合いなんですよ。それなら近所の人に優しくするとか、一日一善を重ねていくとか。徳を積んだほうが将来的にいいんじゃないのかしら」

「そのほうが最終的に回り回って、自分のところに現金ではなく、徳が返ってくるかもしれないよなあ」
「地震が起きた直後に『積立NISA』の書類を持ち歩いても価値はないけれど、近所の人との相互協力に巡り合うほうがよっぽどいいと思う」

おばさん二人の会話はヒートアップしていく一方である。プロの投資家が聞いていたら、笑いが止まらないだろう。

「そのための徳積みかあ。そういえば、あの大谷くんもその辺に落ちているゴミを拾うんだって。人が捨てた運を拾っているんだそうよ」
「そうよ。そうなったら、私たち、毎日徳を積もうよ。『積立NISA』じゃなくて『積立NEESAN(姐さん)』でどう?」
「いいねえ、さっそく今日から始めるわ」


(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

将来を危惧した投資制度のことを話していたつもりが、いつの間にか善行に会話がすり替わっていた。これがおばさんトークの流儀である。私も『積立NEESAN』にすっかり感化され、脳内から『積立NISA』が消えていた。

都会のゴミはハードだった


どんな徳を積もうかと考えて、まずは賢者(前述の大谷くん)を真似てゴミ拾いをすることにした。昨年からややサボりつつも、1日7000歩のウォーキングを地味に続けている。公園以外の道路にはゴミが落ちているはずだ。

ビニール袋とトングを持ち、ウォーキングへ出かけた。

(うわ……ひっど……)

今までその辺のゴミを意識して歩いていなかったせいなのか、都会のゴミは想像以上にハードだった。紙クズレベルではなく、コンビニ弁当のケース、食べかけのパン、ペットボトルにIQOSの吸い殻……。ここは明け方の新宿歌舞伎町や、センター街ではなく、東京都内の静かな住宅街のはずなのに、公道がゴミ箱のようになっている。

細かなゴミだけではなく、堂々と家具も捨ててある。数百円を支払えば粗大ゴミは回収してくれるのに、なぜその行為を怠るのだろうか。下方を向いて歩くだけで気分は落ち込んだ。それでも『積立NEESAN』の精神を思い出して、いくつかはトングで拾って帰宅する。

なんだかやるせない気持ちになったので、都会のハードゴミ事件のことを地元の静岡県浜松市の友人に電話で話をした。友人もウォーキングをしているという。私からの話を聞いて「頑張って拾うわ!」と息巻いていた。後日、友人から連絡があった。

「あのさあ、地元にゴミなんて落ちてんかったわ。道路がすんごいきれいで、拾うゴミがなかった」


ウォーキングの(個人的)メイン会場の公演はゴミなし、です(写真提供◎筆者 以下すべて)

そう、地元は一軒家が並んでおり、強制参加の町内会の掃除制度もある。私の住んでいた町は年々、高齢化が進んでおり、日中働いていない老人たちが積極的に掃除をする光景をよく見る。持ち家の周辺を汚したくない気持ちもあるのだろう。

きっと地元の諸先輩方は自然に『積立NEESAN』を遂行している。私たちのように年金が支払われないかもしれない恐怖に怯えることもなく、(人によるけれど)豊かな老後を過ごせているのだと思うと、これは尊敬に値する。

(やっぱり田舎は老後に住むか、二拠点生活かなあ)

当初は老後への不安から『積立NISA』について考えていたはず。それがいつの間にか徳を積む精神に内容がすり替わり、地方移住まで結論が行き着いた。これだからおばさんはやめられない。

婦人公論.jp

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