巨人・コロナ感染、謎の新語「微陽性」に球界も騒然

6月4日(木)10時0分 JBpress

「微陽性」の結果が出た巨人の坂本勇人内野手。同じく「微陽性」の大城卓三捕手ともども、都内の医療機関に入院し、これから連日PCR検査を受ける。陰性が確認でき次第、チームに合流するという(写真:AP/アフロ)

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 球界に衝撃が走った。プロ野球の巨人は3日、坂本勇人内野手と大城卓三捕手の2選手に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことを発表した。

 球団側は先月末に大学医学部の研究に参加する形で監督、コーチ、全選手らに希望を募って抗体検査を実施。その結果、坂本ら4人から感染後の回復を示すとされる抗体が見つかり、あらためてPCR検査を実施したところ坂本と大城の陽性が判明したという。両選手は無症状で何の自覚もないだけに罹患してしまった当人たちはもちろん、周囲の誰もが大きなショックを受けた。


コロナ禍の中、初めて聞いた「微陽性」

 この日は本拠地・東京ドームで埼玉西武ライオンズを相手に無観客での練習試合が14時から予定されていた。しかし試合は当日になって急遽中止。試合中止の判断は賢明な判断だったとはいえ、どうしても不安が残るのは坂本と大城が前日も東京ドームで組まれていた練習試合・西武戦にスタメン出場していたことだ。チームメートやスタッフらと濃厚接触があった疑いは避けられない。しかも対戦相手の西武側の選手らも濃厚接触とまではいかないにせよ、近距離でともに激しい動きによる荒い息遣いを伴ってプレーしたのだから不安は拭えないだろう。

 さらにさかのぼれば、両選手はそれまで行われていたチーム練習や個人練習にも参加している。ここでも複数の人たちと濃厚接触があったことはおそらく否定できない。両選手の行動範囲を基に濃厚接触の疑いがある人たちをすべて割り出してPCR検査を行った上、たとえ陰性であっても後日の発症を警戒し自宅等で一定期間の“隔離ルール”が課せられるとなれば、日本球界全体がちゃぶ台をひっくり返されることになる。ようやく6月19日に決まった今季開幕も危うくなってくるだろう。

 ところが、こうした不安を1つの“新語”が打ち消す格好となった。球団の発表によると、坂本と大城の新型コロナウイルスの遺伝子量(CT値)は微量にとどまり、正常値ぎりぎりの「微陽性」にあたるという。感染からの回復を示す「IgG抗体」も持っているといい、どうやら陽性反応が出ていても不安要素はほとんどないらしい。


過去の「陽性患者」の中にも「微陽性」患者はいたのでは?

 JリーグとNPB(日本野球機構)の合同で定期的に行われている「新型コロナウイルス対策連絡会議」の専門家メンバーからも「他人に感染させるリスクも高くないと推察される」という見解を受け、都内の医療機関に入院することになった両選手は陰性が確認され次第、早期にチーム合流を目指す方向性で固まった。複数のメディアの見立てでは、6月19日の開幕にも間に合う可能性が出てきたというから驚きである。

 巨人は両選手との濃厚接触者についても26人に3日夕、PCR検査を実施。それ以外の一軍の選手、監督、コーチ、スタッフらも全員が4日午前にPCR検査を行うことになった。対戦相手の西武も濃厚接触に該当する所属選手やスタッフ、関係者はいないことを確認し、4日以降から練習と練習試合を予定通り行う方針。PCR検査の結果も踏まえて問題がないと判断されれば、巨人も5日以降の練習試合実施を目指すという。

 この巨人2選手から陽性反応が出たことについてNPBも現段階で開幕に支障をきたす案件ではないと判断している模様で、やはり「6・19」は揺るがないようだ。

 それにしても、何だか釈然としない。感染してしまった坂本と大城は本当に気の毒で早期回復を願うばかりだが、それでも「微陽性」という言葉には引っかかりを覚える。世界にも誇れる日本の高い医療レベルの中において、これだけ新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になってから随分と経っているのにもかかわらず、このタイミングで急に出てきた“新語”だからだ。

 別に正常値ぎりぎりであってもこれまで通りに「陽性」という呼称でいいと思うのだが、やっぱり限りなく陰性に近いことを強調しておきたいがために用いられた便利な言葉のような気がしてならない。ネット上で「微陽性」のワードが一時トレンド上位にランクインしていたように世の中の人たちも多くが「微陽性って初めて聞いたけど一体何なの?」などというトーンで反応していたようだ。

 他球団からも、このような声が上がっている。

「いずれにしても、この『微陽性』に関しては専門家チーム、あるいは有識者や医療関係者からのもっと詳しい説明が欲しいところです。この『微陽性』の範囲におさまる場合は『他人に感染させるリスクも高くない』というのであれば、これまで罹患した多くの人たちの中にも同じようなレベルでかなりの軽症だったはずの感染者が必ずいるということになる。なぜ、今までそこにクローズアップされることがなかったのか。

 今回この発表のみで終わってしまうと、こうした周囲の疑念は残ったままになってしまうことにもなりかねない。都合よく作られた言葉ではないことを万人に証明する意味でも、そして今後同じグラウンドに立ってプレーする選手たちやチーム関係者たちが安心して全力で戦えるシーズンにするためにも、この『微陽性』が限りなくセーフティーに近いことをさらに明確に示しておく必要性があります」


抗体検査実施は2球団だけ、他にも「微陽性」選手がいる可能性

 球界内からはNPBに対して注文をつける意見も少なくない。今回、坂本と大城のPCR検査による「微陽性」が確認されたのは、そもそも球団が独自で行った抗体検査がきっかけだ。この抗体検査を実施したのは12球団の中で巨人と福岡ソフトバンクホークスのみである。

 ホークスのOBはこう訴える。

「早急にNPBが音頭をとり、抗体検査ないしPCR検査を12球団に徹底させるシステムを整えないとシーズン開幕後も世の中に不安を残したままになってしまう。

 検査をしていない巨人、ソフトバンク以外の球団には“隠れ感染者”あるいは“隠れ微陽性”がピンピンしながらプレーし、実は潜在しているのではないか。こうやって実際に巨人から無症状の『微陽性』が2人も出た事実があるのだから、そういう疑いを多くの人たちに持たれたとしても何ら不思議はないだろう。

 全国的に検査体制が整っていないことは承知しているが、このコロナ禍で開幕を強行しようとしている以上、NPBとコミッショナーは統括する立場でもあるのだから残り10球団を説き伏せるぐらいの強い統率力を示して欲しい」

 プロ野球界は6・19の強行開幕後も、しばらく「微陽性」の“新語”がキーワードとなるかもしれない。

筆者:臼北 信行

JBpress

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