アウディの出稿5箇条とは?Yahoo!ニュース×業界キーマンが「記事広告」のあり方を考える

6月6日(水)11時59分 MarkeZine

 5月23日、Yahoo!ニュースは「おもしろいだけが記事広告ですか?」と題したトークイベントを開催。これからのスポンサードコンテンツのあり方を探るべく、企業のマーケティング担当マネージャーや編集者など様々な視点からディスカッションが行われた。

 2018年5月23日、Yahoo!ニュースは、「おもしろいだけが記事広告ですか?」と題したトークイベントを開催した。アウディジャパンの井上大輔氏、博報堂ケトルの嶋浩一郎氏、ノオトの宮脇淳氏、Yahoo!ニュース編集の井上芙優氏の4名が登壇。様々な視点からディスカッションを行い、これからのスポンサードコンテンツのあり方について意見を交わした。モデレーターは、Yahoo!ニュース編集の永井千晴氏。

■アウディ井上氏の考える記事広告出稿5箇条

永井千晴(以下、永井):いまやメディア側にとって大きな収益源でもある記事広告。記事広告ときくと、「やってみた」「使ってみた」などの「おもしろ広告」を思い浮かべる方も多いと思いますが、実はそのほかにも様々な記事広告があります。エンタメ色の薄い記事広告とはどんなものなのか、またどんな意味があるのか伺ってみたいと思います。まず広告主側として、アウディジャパンの井上さんからお話しいただけますでしょうか。

(左から)Yahoo!ニュース 編集 井上芙優氏
有限会社ノオト 代表取締役 品川経済新聞編集長 宮脇淳氏
博報堂ケトル 代表取締役社長 クリエイティブディレクター・編集者 嶋浩一郎氏
アウディジャパン株式会社 マーケティング本部 デジタル&CRM マネージャー 井上大輔氏
Yahoo!ニュース 編集 永井千晴氏

井上大輔(以下、井上大):まず記事広告には2種類あると思います。「おもしろ広告」などの「拡散力」が強みのものと、第三者に自社商品を批評してもらうことで信頼を高めるもの。後者はその「コンテンツ制作力」を期待して出稿しています。アウディでは記事広告をよく使っているのですが、そのなかで勝ちパターンがみえてきたので紹介します。

アウディ井上氏の考える記事広告5箇条

1.コンテクスト(文脈)を整理する

2.だれに、何をしてもらうかを決める

3.KPIを一つだけ決める

4.「拡散力」と「コンテンツ制作力」のどちらを買うかを決める

5.メディアに任せる

井上大:まず、記事広告を出稿する際に大事なのは、ターゲットを決めること。アウディではいつもカスタマージャーニーマップを作っています。たとえば、「Q2」という車を売り出したいと思ったとき、ターゲットであるお客様は、(1)知っているけど忘れてしまった、(2)検討候補には入っている、(3)かなり積極的に検討しているという、3種類に分けられます。

 つぎに、記事広告によってターゲットをどう変えていきたいかを決める。たとえば、知っているけど忘れてしまった人には、「思い出して、候補に入れてもらう」。候補に入っている人には、「複数ある候補のなかから、さらに絞り込んでもらう」など。そのうえで、KPIを一つだけ決める。これは「一つだけ」というのがポイントです。複数でもいいけど、一番重要なものは決めることが大切です。

 検討候補に入っていない人に対しては、「おもしろ広告」を使って、とにかく商品を思い出してもらいます。この場合、商品説明はほとんどしない。反対に、検討候補に入っている人に対しては、自動車雑誌としてタイアップして、車のレビューを書いてもらうなどして商品の良さを具体的に説明しています。ここまで決まれば、あとは読者のことを一番よくわかっているメディアの人に任せたほうがいいでしょう。

嶋浩一郎(以下、嶋):この5箇条が整理されていたら頼まれるほうもキュンキュンしますね(笑)。5つとも大事だと思いますが、なかでも一番大事なのは、KPIを一つに絞ることですね。これができていないところは非常に多い。記事一つでそんなたくさん解決できないよ……って、いつも思います。クライアントがKPIを決めることで、記事の作り手も作りやすいですよね。

宮脇淳(以下、宮脇):そうですね。そこさえ決まっていれば、任せっぱなしでも間違いがない。ちゃんとした制作会社に頼めば。

嶋:ノオトさんとかね(笑)。

■決め手は「共感」Yahoo!ニュース×パナソニックの読ませる記事広告

永井:続いて、Yahoo!ニューススポンサード広告の事例をご紹介したいと思います。井上芙優さん、お願いします。

井上芙優(以下、井上芙):まずご紹介したいのが、パナソニック創業100周年特別企画として作成した「クリエイティブ・ライフ」という連載記事広告です。制作をノオトさんに依頼し、半年間かけて14本作りました。

嶋:どういう狙いで、どういう記事を作られたんですか?

井上芙:共働きのご家庭が増えているという社会背景を踏まえ、「家事育児をパナソニックの家電が応援する」というメッセージを記事に込めたものになります。14本の記事はすべて夫婦の「家事育児」や「コミュニケーション」の話になっていて、なかにはパナソニック製品の紹介を一切入れず、ドキュメンタリー的に客観的な事実と専門家の意見のみを書いた記事もあります。パナソニック製品を登場させる際にも、自然な形で入れるように心がけました。記事の文章量も多く、読み込むものになっています。

Yahoo!ニュース×パナソニック「クリエイティブ・ライフ」

宮脇:どういう悩みがあるのか一つひとつ洗い出して作ったので、かなりリアリティのある記事に仕上がったと思います。まわりの反応もすごくよかった。これは「共感できる」というところがポイントだったと思います。

井上芙:この手の話題は炎上リスクも高いので、編集する際にはかなり念入りにチェックしましたが、SNSでもすごく好評でほっとしました。

嶋:話題になるのはいいことだけど、炎上になるのは避けたいというギリギリのところですよね。

■記事広告が効果的に?「世界観のあるメディア」とは

永井:ノオトさんは多くの記事広告を作ってこられたと思います。いくつか事例をご紹介いただけますか?

宮脇:「おもしろ」以外の例として、「北欧、暮らしの道具店」を紹介したいと思います。「北欧、暮らしの道具店」は、「BRAND NOTE(ブランドノート)」という記事広告コンテンツの配信を行っていて、その記事広告の制作を担当したことがあります。

 久原本家の「茅乃舎だし」の記事広告で、1回目は福岡まで行って「茅乃舎だし」を作っているお店を取材して紹介。2回目はクラシコムのスタッフさんの自宅で「茅乃舎だし」を使った料理を食べて紹介するというものでした。

 内容的には「おもしろい」を追わず、商品の紹介にとどめたものです。何がすごいかというと、「北欧、暮らしの道具店」というメディアがきちんとブランドとして確立できていることです。「北欧、暮らしの道具店」を好む読者と、久原本家(広告主)のターゲットがマッチしているので、記事広告の力が効果的に発揮されました。
実際の記事広告

嶋:広告主が記事広告を出稿するのは、コンテンツを作ってほしいだけではなくて、そのメディアで紹介してほしいという理由も強いですよね。先ほどの例だと、「北欧、暮らしの道具店」に紹介されるから意味があるというように。

 ネットメディアは世界観を作るのが難しいけど、「北欧、暮らしの道具店」や「ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)」など、ネットメディアのブランディングに注力して、世界観を作り上げているメディアが魅力的です。

■ネットメディアの世界観作り

井上芙:世界観作りはYahoo!ニュースでも悩んでいるところです。「クライアントは何を期待してYahoo!ニュースに出稿しているのか」、「クライアントと読者、両者に求められるコンテンツとは何か」編集の立場から日々考えています。

永井:なぜネットメディアは世界観を作りにくいのでしょうか?

嶋:ネットメディアは、PV市場主義だからだと思います。多くの場合、ネット記事の記者や編集者は世界観を作ったところで会社から評価されない。PV数で評価されます。そんななかで「自分のメディアの世界観」について考える人がなかなか生まれにくいのではないでしょうか。

永井:アウディさんは、どういうメディア・作り手を求めますか?

井上大:先ほどから話題になっている「世界観のあるメディア」は、残念ながら日本にはまだ少ないと思います。だから、そういうメディアがあるといいなと思います。

 編集者には、自分のメディアに対して「我」と「偏愛」を持って欲しいと思います。たとえば、イギリスのある雑誌の編集長は、自分で記事を全部チェックしているそうです。その雑誌は日本でも売っていますが、日本語版はありません。日本語版を出さない理由を編集長に聞いたところ、「日本語にしたら自分が読めないから」と答えたそうです。そのくらいの「我」と「偏愛」がないと、ブランドが確立したメディアにはならないのではないでしょうか。

■ネットで広がる記事広告の可能性

嶋:ネットメディアの特徴として、個人が際立つようになってきたことが挙げられます。「この人に批評してほしい」という広告主も多くなってきた。アイデア次第で、ネットの強みを生かした新たな記事広告もできるではないでしょうか。

宮脇:ネットのおもしろいところは、雑誌と違って記事広告に対する意見交換ができることだと思います。自分が思っていない感想を読むことで、新たな知見が得られるのも、ネット記事広告の希望だと思います。

井上芙:紙とは違ってネットだから実現できること、たとえば文中に動画を入れるとか、ネットユーザーにとって一番刺さるコンテンツを提供していきたいです。

MarkeZine

「Yahoo」をもっと詳しく

「Yahoo」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ