がん、糖尿病、心臓病、肺炎まで“死に至る病”を引き起こす「歯周病」の恐怖

6月9日(土)9時0分 週刊女性PRIME

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「40代は歯のメンテナンスの始めどきです。ケアを怠ると、50代でも歯が抜けてスッカスカになりますよ! おまけに全身疾患のリスクも高くなります」

 そう話すのは歯科医の遠山敏成先生。なんともオソロシイ話だけど、これは現実。

■歯は身体じゅうの病気とつながっている!?



 厚生労働省の歯科疾患実態調査(H28年)によると、なんらかの理由で歯を失い「すべて自分の歯ではない」人の割合は、40〜41歳で31・1%、45〜49歳で41・1%と年を重ねるほどに増えていく。

 50〜54歳では61.5%と、なんと半数以上が歯を失っているというからシャレにならない。

「ミドル世代は女性ホルモンの分泌量が低下し始めるころ。それにより骨粗しょう症を心配する方が増えてきます。しかし、忘れてはならないのが歯とそれを支える骨の存在。骨が弱くなる年代は歯も弱くなるので、いまから歯を守ることが大切です」(遠山先生)

『8020運動』をご存じだろうか? 平成元年に、当時の厚生省と日本歯科医師会が提唱した、80歳までに20本の歯を残すという趣旨の運動だ。H28年時点で、80歳で20本以上の歯が残っている人は51・2%。H23年調査の40・2%と比べて大きく増えている。

「80歳で20本という数字は、まだまだ甘いと思います。どうせ目指すのならば、80歳で28本、“すべて自分の歯”を目指していただきたい」

 と熱く語るのは、矯正歯科医の坂本紗有見先生。

「全身疾患に比べて、歯に何かトラブルがあったとしても、病院に行くのが遅れがち。歯並びやかみ合わせが悪いと、8020に達成していない人が多いのです」(坂本先生)

 本来であれば、歯の健康に最も気を配るべきオーバー40の読者世代。とはいえ毎日はあわただしく、病院にかかるとなれば治療費も気になる。そのため、歯に多少の痛みや異変を感じたとしても、我慢してしまいがちなのでは? 

 前出の遠山先生も、坂本先生の意見に口をそろえる。



「私の歯科医院に来院するミドル世代の患者さんも、ホワイトニングなどの美容目的で来院することが多く、ケアの必要性には気づいていません。特に気をつけてほしいのは歯周病。美容目的で来院したのに歯がグラグラでは、それどころではありません」

■フロスをするか、それとも死ぬか



 前述のとおり、40代になると、4割以上が自分の歯を1本でも失っている。虫歯で抜いたせいと思うかもしれないが、それは間違い。歯を失う最大の原因は歯周病だ。前出の厚労省調査によると、45歳以上では2人に1人が歯周病にかかっている。



「歯周病の影響は口の中だけにとどまらず全身疾患といわれています。アメリカの歯周病学会では“Floss or die”、フロス(糸ようじ)をするか、それとも死ぬか、と恐ろしい標語で啓蒙しているほどです」

 歯周病は糖尿病や心臓病、動脈硬化から誤嚥性肺炎、早産、ED(勃起不全)にいたるまで、さまざまな病気との関連性が指摘されている。がん、認知症に影響するという研究報告も。「歯周病は全身疾患」「歯周病は万病のもと」といわれるゆえんだ。

 歯を失ったうえ、命にかかわるような病気で苦しむかもしれないとは、なんともつらすぎるではないか。

 歯周病に詳しい歯科医の若林健史先生が指摘する。

「歯周病患者は年齢とともに多くなります。しかし、治療を通じた私の実感ではもっと若いうちからかかる人も多く、成人の8割は該当するのではないかとみています。『サイレント・ディシーズ』(静かに進行する病気)と呼ばれ、気づいたときはすでに遅く40代で総入れ歯という患者さんが実際に存在するからです」

 歯のぐらつきや歯ぐきからの出血、歯肉がぶよぶよしているなどの症状がサイン。歯が長く見える場合も要注意だ。

「それでも、早くからケアをすれば歯を残すことは可能です。さらに、ほかの病気を防いだり改善したりすることもできます」

 と、若林先生は早期発見、早期治療を推奨する。



「歯周病のなかには進行の早いタイプも。放っておいたら、あっという間に歯を失うことになります。気になる症状があれば、ためらわずに受診してほしいですね」

 日本歯周病学会は、1度でも出血に気づいたら歯周病の疑いがあるとして、早めの受診をすすめている。

 さあ、気づいたいまが始めどき。まずは歯周病について正しい知識を手に入れ、効果的なケアを実践しよう。

■全身を蝕む恐怖の歯周病毒素



 いまや国民病ともいえる歯周病。身近な病気だけど、そのメカニズムは、あまり知られていない。

「歯周病は細菌による感染症です。自分以外の人やペットの犬などからうつり、口の中のケアが悪いと発病します」

 そう話すのは前出・若林先生。スプーンやストローの共有、親子や恋人同士のキスでもうつることがあるという。数は少ないが、遺伝子が影響する若年性の歯周病もある。

 歯周病と聞いて多くの人が抱くのは、食べカスが歯垢に変わり、歯にダメージを与えるイメージでは? 実は、歯垢のほとんどは食べカスではなく細菌のかたまり。この中に歯周病の原因となる菌も含まれている。

「そうした細菌によって、歯そのものではなく、歯を支えている歯槽骨や歯肉などの組織が細菌に侵され、破壊されて起こるのが歯周病です」(若林先生、以下同)

 口の中には常時、700種類もの細菌がいる。このうち歯周病の原因となる菌は、わかっているだけでも100種類以上あるといわれている。

「人間ひとりの口の中には何種類かの歯周病菌がいて、コンビネーションで悪さをしていきます。なかでも、レッドコンプレックスと呼ばれる悪性度の高い3種類の菌がいると、歯周病は5倍早く進みます」

 歯周病菌はタンパク質やアミノ酸をエサにして、歯の周囲にネバネバとした歯垢を作る。歯のみがき方が悪いと、歯に付着した歯垢はどんどん厚くなり、さらに菌がつきやすくなる。

「虫歯菌は酸素を好み、歯の表面につきますが、歯周病菌は酸素が嫌いなので歯と歯ぐきの隙間に入り込みます。歯と歯ぐきに間には1〜2ミリの隙間があり、ここから奥へ奥へと潜り込んでいくのです」

 さらに、歯周病菌は毒素を出す。すると身体の防御反応が働いて炎症を起こし、歯周炎に。



「歯垢は口の中のカルシウムと結合して、歯みがきでは取りづらい硬い歯石を作ります。この段階で、歯科医師や歯科衛生士による歯垢や歯石の除去、正しい歯磨きを行えば元に戻ります。



 しかし、進行すると歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の隙間)ができ、炎症はさらに広がっていく。そして深さ4ミリを超えると、歯周病と診断されます」

 ここまでくると、口臭がきつくなり、口の中がネバネバして歯と歯の間に隙間ができるように。

「この状態になっても、歯周病であると本人は気がつかない場合がほとんど。さらに進行すると、口臭は一層強くなり、歯がぐらつき始めます。本来の位置から動いて歯並びが悪くなったり、ものをかめなくなったり、発音しづらくなります」

 やがて歯の土台となっていた歯槽骨が溶け、歯は抜け落ちてしまう。

■糖尿病や動脈硬化も引き起こす



 歯周病の影響は歯の状態悪化だけにとどまらない。

「歯周病が進行すると、歯周病菌とその毒素が毛細血管に入り、血液中に流れ出して全身に回ります。また、糖尿病や動脈硬化、心臓血管疾患、肺炎に骨粗しょう症、早産などの疾患を引き起こしたり、悪化させたりします」

 特に、糖尿病とは密接な関係がある。

「歯周病になると、そうでない人と比べて2・6倍も糖尿病になりやすいことがわかっています」

 糖尿病は血管障害、神経障害、網膜症、腎臓病などの合併症を引き起こし、生活レベルを著しく低下させることで知られている。そこへ加えて、“第6の合併症”と呼ばれているのが歯周病。

「糖尿病にかかると免疫細胞の働きが弱まり、歯周病菌に対する抵抗力が弱まります。そのため歯周病にかかりやすくなるのです」



 糖尿病で食事や運動に気をつけていても血糖値が下がらないときは、歯周病を疑えといわれているほど。

 さらに、歯周病の毒素には、血糖値を一定に保つ働きがあるホルモン・インスリンの効果を阻むものがある。これも糖尿病を悪化させてしまう原因につながる。

 また脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの病気ともかかわりが深い。

「こうした循環器疾患の発生率は、歯周病が重症化した人の場合、そうでない人に比べて1・5〜2・8倍も高いことが研究でわかっています」

 循環器疾患の原因となる『アテローム性動脈硬化』は、コレステロールなどが血管の壁についてアテローム(かゆ状の塊)を作り、血管が硬く狭くなることで発症する。

 そのアテロームから、歯周病菌が発見されたという複数の報告がある。心臓病の人では、心臓の内膜や弁膜から歯周病菌が発見されている。

■骨にまで影響



 オーバー40の読者世代で気をつけたいのが、骨粗しょう症とのかかわりだ。

「歯周病が出す毒素は骨の新陳代謝に影響を及ぼします」

 骨粗しょう症の人が歯周病になると、歯槽骨がもろくなり、悪化しやすいといわれている。



「40〜50代の女性の中には、そろそろ孫が生まれるという人もいるでしょう。実は、歯周病菌は早産を引き起こす原因にもなります。歯周病菌のなかには、陣痛を起こすホルモンの分泌を誘発するタイプがあるからです」

 気づかぬ間に、自覚なく全身の病気に影響を与えている歯周病。

「歯周病による全身病の症候群を、私は『ペリオドンタルシンドローム』(歯周病に関連した全身疾患症候群)と名づけ、全身の健康管理のひとつとして位置づけています」

 ぺリオドンタルシンドロームには死にいたるような恐ろしい病気が含まれている。まだこの中には分類されていないものの、やはり歯周病との関係が指摘されている病気がある。日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなるといわれるがんだ。

 米バッファロー大学の研究によると、歯周病の女性はそうでない女性と比べ、食道がんになるリスクが3倍高かったという。



 また、肺腫瘍では31%、悪性黒色腫(メラノーマ)では23%、胆のうがんや乳がんでは73%もリスクが高まっていたことも報告されている。

 加えて喫煙者である場合、さらに悪影響が。乳がん、肺がん、胆のうがんのリスク増が確認されたそうだ。

「この調査結果だけでは、歯周病ががんを誘発しているとは断言できません。しかし今後、さらなる研究がされて、その関連性が確認されると思います」

 また、認知症の6割を占めるとされるアルツハイマー病への影響も取りざたされている。

 九州大学の研究グループが昨年発表した報告では、マウスに歯周病菌の毒素を5週間にわたって注射したところ、認知機能が低下。脳に炎症が起きて、アミロイドβというタンパク質がたまっていたという。アミロイドβはアルツハイマー病の原因になるといわれている。

「歯周病がもたらす悪影響は多岐にわたりますから、今後さらに、さまざまな疾患との関連が研究されることでしょう」

■あなたは大丈夫?

歯周病進行度セルフチェック



・歯肉がときどき赤く腫れる

・歯肉がむずむずしてかゆい

・歯が浮いた感じがして腫れぼったい

・冷たいものがしみる

・歯をみがくと歯肉から出血する

・下の前歯の裏側に歯石がついている(ざらざらした感じがする)

・朝起きたとき口の中がネバネバする

・歯肉を押すと血や膿が出る

・口臭を指摘された・自分で臭いと感じる

・「サ行」の音が発音しにくい

・歯と歯の間に食べ物がはさまりやすい

・歯を押すとぐらぐらする(★)

・歯肉が下がり、歯が長くなった感じがする(★)

・以前とは歯並びが変わったような気がする(★)

上記の14項目のうち、あてはまるものが

0〜2個:健康な歯、歯肉

3〜4個:歯周病の可能性あり

5個以上:歯周病である可能性がきわめて高い

★がついている項目すべてが該当:重症の歯周病である可能性が非常に高いので、すぐに治療をはじめて。

出典『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会・著(朝日新聞出版)


【この3人に伺いました!】

若林健史先生

歯科医。若林歯科医院院長。長年、歯周病治療に従事し、つねに最新の治療を行う第一人者。日本歯周病学会理事、日本歯周病学会専門医・指導医、日本臨床歯周病学会副理事長

坂本紗有見先生

矯正歯科医。銀座並木通りさゆみ矯正歯科クリニック院長、日本矯正歯科学会認定医。30年近く矯正一筋のプロ中のプロ。ていねいで熟練した腕前の治療が好評。

遠山敏成先生

歯科医。マイスター春日歯科クリニック院長。「日本顎咬合学会学術大会」において優秀発表賞を受賞。最新技術を取り入れた治療が好評。

週刊女性PRIME

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