なぜ韓国でいち早く「ペット同伴搭乗」が実現したのか。背景に“日本と異なる”ペット事情の影響が

2024年6月12日(水)21時50分 All About

2024年年初に発生した羽田空港の航空機衝突事故は記憶に新しい。その後「ペット同伴搭乗」が議論を呼んだが、お隣の国の航空会社はどうだろうか。ペットとの共生社会を目指す韓国の現在を紹介する。

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2024年年初、羽田空港で日本航空機と海上保安庁機が衝突するという大事故は記憶に新しい。その際、乗客は全員救助されたものの、貨物室で同乗していたペットが犠牲となった。
この事件を受け、ペットの機内同伴の可否がネット上で大きな議論となり、移動の際のペットの扱い方に注目が集まっている。
日本ではペット同伴搭乗を許可している航空会社は少ないが、お隣の国はどうだろうか。韓国の航空会社とペットの機内同伴条件、そしてペットとの共生社会を目指す韓国の現在を紹介する。

ペットは機内同伴可能

韓国の主要航空会社のペット同伴規定は下記の通りである。多少の条件の違いはあるものの、機内同伴可能だ。

【大韓航空】

・同伴可能なペット:生後8週間以上の犬、猫、鳥(貨物室での預かりは生後16週間以上)
・機内持ち込み条件:ペットとケージの合計重量が7kg以下で、機内でペットをケージから出すことはできない。大人1人あたり1匹(受託荷物では2匹可)
・ペット輸送料:国内線3万ウォン(3460円)、国際線(日本)15万ウォン(1万7304円)
・その他:SKYPETSサービスあり。ペット運送料金にもマイレージ使用可能で、ポイント加算あり

【アシアナ航空】

・同伴可能なペット:生後16週間以上の犬、猫、小鳥類
・機内持ち込み条件:ペットとケージの合計重量が7kg以下。機内でペットをケージから出すことはできない。大人1人あたり1匹(受託荷物では2匹可)
・ペット輸送料:国内線3万ウォン(3425円)、国際線(日本)14万ウォン(1万5987円)
・その他:ペット運送料金にもマイレージ使用可能で、ポイント加算あり。機内持ち込み用ペットケージは国内の空港(仁川空港を除く)で購入可能

【チェジュ航空】

・同伴可能なペット:生後8週間以上の犬、猫、鳥
・機内持ち込み条件:ペットとケージの合計重量が7kg以下。機内でペットをケージから出すことはできない
・ペット輸送料金: 国内線1匹2万ウォン(2283円)、国際線(日本)7万ウォン(7993円)
・その他:「ペットパス」サービスあり(ペット向けスタンプ積算サービス)。同伴イベントなどを不定期開催


【ティーウェイ航空】

・同伴可能なペット:生後8週間以上の犬、猫、鳥
・機内持ち込み条件:ペットとケージの合計重量が9kg以下。機内でペットをケージから出すことはできない。大人1人あたり1匹
・ペット輸送料金: 国内線3万ウォン(3425円)、国際線(日本)10万ウォン(1万1419円)
・その他:「t’pet」サービスあり(ペット向けスタンプ積算サービス)
その他、ジンエアー、エアプサン、エアソウル、エアプレミア、イースター航空、エアロK、旅客運航を行うほとんどの航空会社が、ほぼ同様の規定でペットの客室内同伴搭乗が可能だ。

拡大するペットツーリズム市場

韓国ではペットのことを「伴侶動物」と表現する。特に伴侶動物を家族同然に考えている人々のことをペッペム族(펫팸족/Pet+Family)、伴侶動物を自分を愛するがごとく大切に考えている人たちのことをペッミ族(펫미족/Pet+Me)と呼ぶ。
KB金融グループが毎年発表している「伴侶動物報告書」(2023)によると、2022年末には伴侶動物と暮らす世帯数は552万で、これは全世帯数の25.7%にあたる。人口では1262万人にあたり、5人に1人が伴侶動物と暮らしている計算になるという。
また、1年間に伴侶動物を同伴して旅行に出かけたことがある割合を調べた韓国観光公社の「伴侶動物同伴旅行実態調査(2022)」によると、65.7%が日帰り旅行の経験あり、53%が宿泊を伴う旅行の経験ありと回答している。
ペットと共に暮らす人は年々増え続けており、ペット関連市場も成長を続ける中、「ペットツーリズム」にも注目が集まっているのだ。

ペット用の機内食、マイレージサービスもある

航空業界も例外でなく、ペッペム族やペッミ族を顧客に取り込むため、ペット関連のプロモーションを打ち出さない企業はない。
ペットの機内同伴搭乗はすでに定着したサービスであるために、韓国では今、+αのサービスにおける競争が始まっている。
そのため、各社からさまざまなペット向けプロモーションが打ちだされている他、利用料金も国内線約2万ウォン(2283円)〜、国際線7万ウォン(7993円)〜と比較的リーズナブルだ。
「チェジュ航空」はペットフレンドリー航空会社としてよく知られている。2023年には、韓国の航空業界で初となるペットのための機内食ペットミールを販売した。
ペット食品専門製造社と共同で開発した鮭、ささみなどのメインミール、他にもイチゴ、キャベツ、かぼちゃ、ブルーベリーなど犬に有用な栄養素を凍結・乾燥させる技法で作られており、各1万5000ウォン(1712円)で販売され話題となった。
チェジュ航空の報道資料によると、2019年には7000件ほどだったペット同伴搭乗は、2022年には1万8000万件まで伸びている。利用者増加に伴い、「ペットパス」というサービスも導入した。
これは、搭乗のたびにスタンプが積算され、6個でペットの運送料金が国内線50%割引、8個で国内線(片道)無料となるというもの。ペットのためのマイレージサービスというわけだ。
2024年4月には、韓国の航空運送業界初、ペット専用機の運行を実施し、チケットは7日で完売した。
ペットは専用キャリアの中に座ることが条件ではあるが、保護者の隣の席に座り、空の旅を楽しんだ。緊急時に対応できるよう獣医師も搭乗したという。6月には第2回目の運行も決定している。
金浦空港には2023年、8000平方メートル規模のペットの休憩所「ペットパーク」がオープンしている。ドッグマネージャーも常駐しており、主に搭乗前の犬が利用しているそう。
出発当日は、このペットパークで遊んだ後、記念撮影、記念品贈呈などのイベントを行ってから搭乗、出発というスケジュールで、ペッペミ族やペッミ族たちからの注目を集めている。
ティーウェイ航空も搭乗ごとに無料搭乗の特典を受けられるスタンプ制度「t’pet」を実施している。2021年にはペットの名前を記載したペット専用搭乗券を発給開始。
その他、ペット専用トラベルキットの提供や、グッズ開発も行っており、特にペット用客室乗務員スカーフとユニフォームは人気商品だ。「t’pet」利用回数に応じてそれらの商品が贈呈されることもある。
イースター航空は動物保護団体とともに遺棄犬保護・里親キャンペーンを実施し、里親になった顧客には、国内線の航空券無制限提供とペットパスポートを支援することを発表している。
そして、韓国の2大航空会社もペット機内同伴搭乗サービスに取り組んでいる。
大韓航空は、韓国の航空会社の中でもいち早くペットの機内同伴搭乗を実現した。このサービスに関しては、すでにキャリアも長いが、新たにSKYPETSサービスを導入し、より本格的にペット同伴搭乗サービスに乗り出している。
アシアナ航空もペットと機内同伴搭乗を希望する顧客の増加に合わせ、対象顧客にペットのエサ、おやつ、おもちゃ、折りたたみ皿などペット専用旅行キットを無料提供するなどのプロモーションを行ってきた。
動物を好まない顧客への配慮としては、各社、間隔を空けた配席を行うなどの対策を行っている。例えばエアソウルの場合、セルフチェックイン時にペットがいる座席を表示することで、動物を好まない人たちがペット同伴搭乗者の近くの座席にならなくてすむよう工夫している。

人とペットの共生社会を目指して


韓国でいち早くペット機内同伴搭乗などのサービスが実現している背景には、韓国が日本以上にペット、特に犬や猫を同伴するということに寛容ということも大きく影響している。
例えばスーパーやコンビニ、その他さまざまな店に、ペットを抱いた状態で出入りする人は多い。また、多くの店舗でそれが黙認されている傾向にある。
他にも、ペット同伴で利用可能なことを宣伝するカフェや飲食店、ホテルなどは年々増加している。
韓国を代表する人気の大型ショッピングモール・スターフィールドのいくつかの店舗では、ペット同伴が可能で、リードをつけた状態であれば、人間と一緒に並んで店舗内を歩くこともできる。
もちろんこれらが可能となるのは、飼い主のペチケット(페티켓/ペット+エチケット)というモラルが守られることが大前提にある。最近ではペチケットに対する意識も高まっているが、この点は課題も多く残っているようだ。
人とペットの共生社会を実現させるべくさまざまな取り組みを試行錯誤する韓国。航空会社のペット機内同伴サービスも、今後ますます拡大していくことが予想される。
※レートは2024年6月11日時点のもの

松田 カノンプロフィール

翻訳家・カルチャーライター。在韓16年目、現地のリアルな情報をもとに韓国文化や観光に関する取材・執筆、コンテンツ監修など幅広くこなす。著書に『ソウルまるごとお土産ガイド(産業編集センター)』などがある。All About 韓国ガイド。
(文:松田 カノン(翻訳家・韓国専門カルチャーライター))

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