最も危険なインターネットカルト「Tsuki Project」とは？ 被害者多数、自殺者も…

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　不気味な事件について取り上げているアメリカのYouTuber、エリック氏によるチャンネル『Scare Theater（スケア・シアター）』より2017年に起こったとある事件を紹介している。

　事の発端はアメリカ版2chとも言えるオンライン掲示板「Reddit」のとある書き込みからだった。

「やあ、私達の弟のジェイク・フェールが行方不明なんだ。昨日の深夜頃に家で見たのが最後だ。財布には全ての身分証が残っていて、パソコンのハードドライブは全て消されている。こんな事は全然彼らしくないし、携帯もFacebookアカウントも持ってないから連絡先は限られているはず。弟は本当に誰とも付き合いがなくて、誰か何か知っている人がいれば今すぐに連絡が欲しい。本当に心配で、ただ弟が無事かどうかを知りたいんだ。」

　2017年7月13日ジェイク・フェールという名の17歳の少年が自宅から行方不明となった。

　彼のパソコンのハードドライブが消去され、どこへ行ったのか痕跡が残されていなかった。

　彼が唯一残したものは「LFE」と呼ばれるものについての数枚のメモだけだった。

　約1カ月後の8月12日、ジェイクの遺体は森林で発見され死因は自傷行為であり残念ながら警察は犯罪の可能性はないと述べた。

　実際にこの事件の真相は、ジェイクがツキ・プロジェクトとして知られるものへの関与により悪影響を起こした以外にももっと複雑であった。

　2019年、エリック氏はツキ・プロジェクトについて短い動画を作成したがその後プロジェクトのメンバーから脅迫を受け一度動画を削除した。

　しかし、被害者達のためにも再度この動画を作成することにしたという。

「『ツキ・プロジェクト』とは一体？」

　2017年、4chにある匿名のユーザーが投稿をし始めた。

　その人物は、この世界は「システムスペース」と呼ばれる他のシミュレートされた現実世界での仮想現実であると主張した。これらのシミュレーションは「オーロラ」と呼ばれるエネルギーによって実行されており、彼によると私達のシミュレーションは「ライフ」と呼ばれ150年後にはオーロラを他のシステムに解放させるために削除されてしまうという。

　もちろん最初は誰も彼のことを真剣に受け止める人などいなかったが、彼はこの奇妙な話を続け、「システムスペース」と呼ばれるWebサイトを作成。彼は人々がサイトに登録できるようにし、システムが削除された時に彼らの魂を「LFE」と呼ばれる別のシステムに移すことができると主張した。

　彼のコミュニティーは急速に成長し、何千人ものメンバーが集まった。

　Tsuki（Webサイトの作成者をここではツキと呼ぶ）は、2017年7月1日にこれらの転送が完了するとコミュニティーに告げた。多くのフォーラムユーザーはその日が来たら自分自身を“オフ”にする計画をお互いに立てていた。

　ここで「自分自身をオフ」ことについて誤解が生じた。ツキもそれを理解し「LFEに移る為に実際に自殺をする必要はない、7月1日以降に自然に人生が終わるまで待てばいい。自分自身を終わらせることは魂の粉砕につながる可能性があり、それは本質的にあなたの魂が消滅することを意味する。」と書き込んだ。だが、一部のメンバーはそれを聞き入れなかった。というのも、以前ツキは「認知症やその他の脳損傷を発症した場合、これも魂の粉砕につながる可能性がある」と述べていたため、加齢や事故などで脳に異常が出る前に自らの存在をオフにすることを望んだからだ。

　一方、ツキ自身はLFEにさほど真剣ではなかったようだ。コミュニティメンバーへLFEへのファイル転送用にストレージスペースの購入オプションを提供し、ビットコインで支払わせるなど、金儲けに走り出した。また、「万が一自分自身を終わらせることになったとしても、その前にシステムスペースについて語らないこと。また関連するものは全て取り除くように」と、自身へ疑いの目が向かないよう細心の注意を払っていた。

　ほどなくして、メンバーらはツキのやっていることを見破り始めた。彼の行動に対して声を上げるため、多くの懐疑的なグループが作られた。

　遂にのツキの友人の1人である「スヌープ」が、プロジェクト全体が虚偽であり、そのアイデアは日本のビジュアルノベル『Rewrite』からの盗用だと明らかにした。

　これはツキにとって終わりの始まりであった。彼はメンバーに対して急速にダメージコントロールを行おうとし、メンバーは彼に敵対し始めた。ツキは彼を罵倒するメンバーを追放するようになり、IPアドレスまで公開した。状況は更に悪くなり、最終的に彼は多くの信者を失い「システムスペース」のWebサイトは削除されたのだ。

　このプロジェクトによって命を絶ったシステムスペースのメンバーは多いとされるが、実際に関係性を確証するのは難しかった。エリック氏はこの悲劇について語るために彼の家族に連絡を取りインタビューをする予定だったが、実現していない。カナダのジャーナリスト、クリス・ウォーカーもまたこの事件について2018年CBCラジオで話したが、現在そのエピソードが削除されている。エリック氏はウォーカー氏に連絡を取っているが返事はないとのこと。

　長い間、ツキの正体は謎だった。ツキ・プロジェクトの背景にいる人物は男性である疑いが濃厚であり、彼の身近な人物の内の1人が漏らしたメールによると、ツキは「この重みをわかってほしい。これは私が忘れたい過去であり、結果を考えると深く後悔している。そして完璧な脅迫材料にもなる。このことは、たとえあなたが定年退職後の70歳になっても奥さんだろうが誰にも話さないでくれ。私はいつも信頼のできる人物を選んできたのだから」と述べていたという。

　結局のところ、彼がこのことを後悔しているかどうかより、積極的に人々に自ら命を断つことを勧め、少なくとも1人が実際にそれを実行したことがわかっており、彼はその責任を取っていない。

　動画の最後にエリック氏は「あなたの個人情報を漏らした人達を非難したいところだが、この動画内の全ての情報は全てあなた自身が公開した公に入手可能なものだ。100%あなたと確認することができなかったため、この動画内にあなたの写真を含めなかった。私は十分親切だろう。そうだろ？」とツキに挑戦的なメッセージを送っている。