【未解決】元有名ミュージシャン、禁断の発明によって“消された”? 謎の失踪と死「クレイマー事件」とは

2024年6月11日(火)23時0分 tocana

 1990年代半ば、先進技術の開発に没頭するも謎の失踪を遂げた元ミュージシャンがいる。それは、1966年に結成された伝説のロックバンド「アイアン・バタフライ」の元ベーシストのフィリップ・テイラー・クレイマーだ。



■実業家、研究者としての第二の人生が急転直下の転落


 有名人やセレブの未解決事件は大きなニュースになり、人々の記憶に残る出来事となる。元ロックスター、フィリップ・テイラー・クレイマーのケースもまた実に不可解な事件だ。


 フィリップ・テイラー・クレイマーは、1974年から1980年にかけてロックグループ「アイアン・バタフライ」のベーシストとして活躍し、音楽活動からの引退後も成功したミュージシャンとして人々の称賛を受けていた。


 音楽活動引退後のクレイマーは、異色の経歴を歩みはじめた。


 クレイマーは心機一転して大学に入り直し、航空宇宙工学の学位を取得。MXミサイルシステムの開発など、ペンタゴン(米国防総省)とのあらゆる種類の研究開発に携わった。また、コンピューターエンジニアリングにも深く関わり、数学とコンピューターの専門家としての名声も獲得している。


 1990年に彼はビデオ圧縮技術の先駆的な仕事に携わるベンチャー「Total Multimedia Inc」と「Soft Video Inc」という会社を共同設立した。


 その一方でクレイマーはかねてから興味・関心のあった超光速通信とワープ航法の理論的研究に着手した。実業家であり研究者でもあり、妻と2人の子どもに囲まれた家庭生活もまた充実したもののように見えたが、その先には暗雲が立ち込めていたのである。


 クレイマーの2つの会社が次々と経営破綻し、リストラの後に1994年に事業を再編。画期的なデータ圧縮技術の開発も道半ばにして中断を余儀なくされた。クレイマーが妻に話した内容によれば、その技術は行方不明の子どもの顔の写真をコンピューターに入力すると、数秒以内に何千人もの群衆の中からその子どもを見つけることができるアプリケーションソフトであったという。


 会社の経営破綻後数カ月で、クレイマーの行動は奇妙な方向へと変わりはじめた。彼は部屋に引きこもるようになった一方で、それまでのやや気難しい性格から自信に満ちた振る舞いを見せるようになったのだ。周囲の者に彼が語った発言は、たとえば次のようなものだ。


「神は完璧な科学者です! 混沌は完璧な秩序です」
「あなたは中心に置かれなければなりません。あなたが中心にいるなら、超新星爆発が起こって残骸が来ようとも、あなたは救われるでしょう」
「世界のすべての不思議を見て、それでもそれ自体が盲目である瞳の美しさから学びなさい。違いは昼と夜です」


 こうした発言をビジネスパートナーや妹、友人たちに口にしていたことが証言に残されている。



 彼はまたジェームズ・レッドフィールドによる人気のニューエイジ思想書『The Celestine Prophecy』(邦題『聖なる予言』角川書店 )に深く傾倒し、神秘的なエネルギーフィールドの存在と、振動を利用して人生を変えより高い次元に上がることに強い関心を抱いていたという。


 すっかり“スピリチュアル”な人物になってしまった当時のクレイマーだが、1995年2月に彼と一緒にハイキングに行った妻のジェニファーは次のように振り返っている。


「私たちは我が家のそばの丘の頂上までハイキングに行きました。頂上から下を見渡せば、私たちが住んでいる街全体を見ることができます。近くの大学に属する丘の上には十字架がありました。そして彼は十字架を指さし『ほら、ハニー、私たちの家はこの十字架の道にある』と言いました。彼は日常生活のすべてに神聖な意味を見いだしていたのです」(ジェニファー)


 このハイキングの翌日にあたる1995年2月12日、クレイマーは自動車を運転して義父を訪ね、その後、ロサンゼルス国際空港へ取引先の投資家であるグレッグ・マティーニとその夫人を迎えに行った。


 夫妻の乗った旅客機が到着するずいぶん前に空港に到着したクレイマーは妻、仕事仲間、元アイアンバタフライのドラマーで親友のロン・ブッシーなど、さまざまな人々に合計17回もの電話をかけたことが通話記録から判明している。


 電話を受けた者によれば、クレイマーは泣いていたようであり、強いストレスと恐怖を感じているようであったという。


 その後のクレイマーの言動も不可解で、マティーニ夫妻をここで迎えずに後に夫妻が泊まるホテルに会いに行くと言ってみたり、妻には「大きな驚きがある」とほのめかし、自殺をするつもりであると口にしたり、O・J・シンプソンは無実であると主張したりしていたのである。そしてその後、クレイマーの消息はプッツリと途絶えることになる。


■謎の失踪


 空港での一件の後、クレイマーはどこへも電話をかけておらす、彼のクレジットカードも一切使われていなかった。


 クレイマーのこの奇妙な失踪をきっかけに大規模な捜索と調査が開始されたのだが、クレイマーの部屋には本来FBIなどしか入手できないはずのO・J・シンプソン事件に関するビデオ映像があり、クレイマーがこの映像のビデオ分析に取り組んでいたことがわかってきた。


 妻のジェニファーの証言では、失踪直前のクレイマーがきわめて妄想的だったことが報告されている。彼は当局に追われており、捕まれば連行されると妻に話していたという。


 しかし、ジェニファーによればクレイマーには私生活の上で敵対的人物はおらず、犯罪や麻薬に関与したこともなければ、ビジネスでのグレーな取引などもなかったため、“追われている”というのはあまりに奇妙なことであった。


 またこの時期に夫妻が父親を訪ねたときに、クレイマーは安いプラスチック製の子どものオモチャを父に渡して、それが不思議な装置であると説明したこともあったという。クレイマーはオモチャを渡しながら父に向って「これですべて大丈夫です。あなたが理解していないことはわかりますが、これで大丈夫です」と説明したのだった。


 そして失踪の日から2週間後に、行方不明のクレイマーから自宅の妻に1度だけで電話があったという。そこでクレイマーは具体的な話は一切せず「ハロー、ハロー」と一方的に挨拶を続けてから電話を切ったということだ。


 その後もクレイマーの捜索は何年も続いたのだが、なぜ電話をかけたのか、失踪前の数日間の彼の奇妙な発言や行動が何を意味したのか、または彼がどこに行ったのかについての手掛かりは何一つ得られなかった。


 ガレージセールや電気店などでクレイマーを目撃したという報告はいくつかあったが、いずれも裏付けは取れず、ニュースやテレビ番組でも多く報道されたが新しい展開は見られず、何らかの謀略に巻き込まれたのではないかという噂も囁かれるようになった。


 失踪前のクレイマーの言動を注意深く考慮すると、1つには彼が何らかの先進技術を発明したか、あるいはアクセスすることができたのではないかという仮説だ。そしてその先進技術は支配者層にとって世に公開してはならないものであったため、クレイマーが“消された”のではないかとする説である。


 もう1つは『聖なる予言』に傾倒していた彼が、さまざまなプラクティスによって実際により高次の存在になることを遂げ、この物理的世界からはいなくなったのだという説である。


 そのほかにもクレイマーは自分の意識をコンピュータにアップロードして肉体を消し去ったのだという見解や、エイリアンに誘拐されたとする説、どこかに身を隠しているだけだという説などがまことしやかに語られるようになった。


■クレイマーは何者かに殺されたのか?


 謎が謎を呼ぶ「クレイマー失踪事件」であったが、1999年5月29日、謎の少なくとも一部がある意味で呆気なく解決された。クレイマーの遺体が見つかったのだ。


 同日、カリフォルニア州マリブ郊外のデッカーキャニオンの谷底で車ごと転落したクレイマーの遺体が発見された。遺体は干からびていたが、歯科記録によりクレイマーであることが確認され、死因は単に転落による致命的な鈍的外傷であると見なされた。


 当局の最終的結論は会社の経営破綻などクレイマーの財政問題による「自殺の可能性」が濃厚であるというものであった。しかし、彼の周囲の多くの人は納得していない。


 そのうちの1人は父親のレイ・クレイマーである。レイはかつて息子から「もし僕が死んで、それは自殺だと片付けられても、それを絶対に信じないでほしい」と告げられていたというのだ。


 そしてレイは、彼の息子がワープ航法や超光速通信などの画期的な研究に取り組んでいることを知っている人々から標的にされたのだとの考えを述べている。


「息子はずっと前から、彼を悩ます人々がいることを私に話していました。彼らは息子の研究を横取りしようとし、彼らの何人かは彼を脅しました。彼はかつて、自分が自殺するつもりだと言ってもそれを信じないでと私に言いました。その時には助けが必要なのです」(レイ・クレイマー)


 クレイマーの友人ロン・ブッシーは、「彼はこの新しいテクノロジーで突破口を開いたばかりだったので、誰かが彼の頭に銃口を突きつけたのだ」と話す。


 はたしてクレイマーは何者かに殺されたのか。それとも正気を完全に失い自殺を図ったのか。あるいは偶然の自動車事故であったのか。いまだに解決の糸口すらつかめない謎に包まれた有名人の未解決事件がこの「クレイマー失踪事件」である


参考:「The Debrief」 「Mysterious Universe」、ほか


 


※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。

tocana

「ミュージシャン」をもっと詳しく

「ミュージシャン」のニュース

「ミュージシャン」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ