退職金に頼らない「老後貯金」の方法

6月14日(木)18時30分 All About

来の年金額減額は避けられないようです。退職金制度もどんどん変化し、これまで以上に老後貯金の自助努力が必要になりました

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2016年12月に成立した「年金制度改革関連法」により、2018年4月にはマクロ経済スライドが完全実施、2021年4月には賃金・物価スライドの見直しが行われます。将来の年金額減額は避けられないようです。退職金制度もどんどん変化し、これまで以上に老後貯金の自助努力が必要になりました。

老後資金として必要なのは総額1億30万円!?

2013年4月1日施行の(改正)「高年齢者雇用安定法」(厚生労働省)と少子高齢化の影響なのでしょうか、定年後も多くの人が働き続けています。では、「65歳でリタイア、妻は同い年、共に90歳まで生きるAさん夫婦」の老後資金を考えてみましょう。

※90歳では男性25%、女性50%が生存します(平成28年簡易生命表)。

Aさん夫婦の老後期間は25年。老後資金として準備する必要があるのは、日常生活をまかなう生活資金と、家のメンテナンス費用や医療・介護費などを賄う予備資金です。

●生活資金の目安額

生活資金の目安額を、総務省「平成28年 家計調査報告(家計収支編)」をもとに計算してみましょう。

夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみの無職世帯の月間支出総額は26万7546円。これは食費や交際費、水道光熱費などの基本的生活費に所得税や個人住民税、固定資産税、社会保険料などを加えたものです。Aさん夫婦の生活資金は約8030万円(26万7546円×12カ月×25年)になります。

●予備資金の目安額

予備資金は個人差が大きく、一般に1500万〜2000万円と想定する人が多いようです。

●老後資金の目安額
老後資金の総額は、「生活資金+予備資金=8030万円+2000万円=1億30万円程度になります。

老後資金の3本柱は公的年金、退職金、金融資産

老後の支出は、公的年金等、退職金、金融資産でまかないます。一般にこれら3つを老後資金の柱といいます。では、公的年金と退職金について詳しく見ていきましょう。

公的年金だけでは赤字の可能性大

年金生活者の多くは、老齢厚生年金や老齢基礎年金などの公的年金で生活費の6割程度から全額をまかなっています。平成27年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金(65歳、老齢基礎年金を含む)の平均年金月額は次の通りです。(「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業年報(概要)」より)
・老齢基礎年金  5万5688円
・老齢厚生年金  男性17万8928円/女性10万9180円

これをもとに、前出のAさん夫婦の月間収支(=平均年金月額−月間支出総額)を、「共働き世帯」と「妻が専業主婦世帯」の2タイプで計算してみましょう。

共働き世帯(老齢厚生年金を受給)
夫の年金額17万8928円+妻の年金額(10万9180円−支出26万7546円
=2万562円

妻が専業主婦世帯(夫は老齢厚生年金、妻は老齢基礎年金を受給)
夫の年金額17万8928円+妻の年金額5万5688円−支出26万7546円
=▲3万2930円 

共働き世帯は、生活費を年金だけで全額賄うことができ更に2万円の余裕、25年間で620万円の黒字です。一方、妻が専業主婦世帯は、毎月3万2930円が不足。老後25年間の生活資金として約1000万円(=3万2930円×12カ月×25年間)を準備する必要があります。

これは、現在の年金給付状況が続くと想定したものです。しかし2016年12月に成立した「年金制度改革関連法」により、2018年4月マクロ経済スライド完全実施、2021年4月賃金・物価スライドの見直し、が行われます。

2014年度の年金受給の代替率は62.7%(現役世代の平均収入34.8万円に対し夫婦の年金収入21.8万円)ですが、2050年度は50%程度に低下する予想です。共働きであれば老後は黒字のAさん夫婦も、将来的には年金だけで生活費を賄うことは難しくなるのかもしれません。

退職金は企業規模で格差が

退職金と言えば「定年退職するときには2000万円程度の退職一時金を受け取る」というイメージです。ところが現在は退職一時金制度と退職年金制度を併用する企業が増加し、退職金は、退職年金原資の一部を退職一時金で受け取り、残りを企業年金として受け取るパターンに変わってきました。企業規模や退職金制度によって退職金の額に差があります。自社の退職金の制度と相場を早めに確認することをお勧めします。

●大企業のモデル退職金
・高校卒  2048万円
・大学卒  2374万円
*日本経済団体連合会「2016年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」より

●中小企業のモデル退職金
・高校卒  1083万円
・大学卒  1139万円
*東京都「平成28年中小企業の賃金・退職金事情」より

大企業と中小企業では1000万円を超える差があります。では退職金制度(退職一時金のみ/退職一時金と退職年金を併用)による差はどのくらいになるでしょうか。東京都の調査では、退職一時金と退職年金併用のほうが退職一時金だけの場合より200万円〜400万円も多くなりました。

●退職一時金のみのケースの退職金
・高校卒  1041万円(1218万円)  
・大学卒  1016万円(1397万円)
*( )は退職一時金と退職年金を併用のケース

財形年金貯蓄と個人型確定拠出年金でバッチリ!

老後貯蓄の代表は、税制上の優遇措置がある「財形年金」です。そこに強力な助っ人が出現しました。それは「個人が自助努力で老後資金を作ることを支援する制度」として2017年1月に国が導入した個人型確定拠出年金(以下「 iDeCo」とする)です。同年7月時点の加入者は58万4000人程度(2017年8月25日付「日本経済新聞」より)です。

iDeCoは、会社員や公務員、自営業者、学生、専業主婦など現役世代の原則20歳以上60歳未満のほぼすべての人が加入できる制度です。10年以上加入すると60歳以降に一時金あるいは年金として受け取ることができます。

確定拠出年金は投資信託で運用するものと考えがちですが、運用商品には元本確保型(定期預金や年金保険など)があります。これらは、税制優遇措置が加わりピカイチの「老後貯金」、おそらく財形年金貯蓄を超える、ツールになります。

ただし、掛け金の額や口座を設ける金融機関によっては、優遇措置があっても様々な手数料負担から元本を割り込む可能性がありますので、加入する前に金融機関の取り扱い金融商品・手数料・サポートサービスの内容を比較し検討することがとても重要です。

では、iDeCoのメリット・デメリット・注意点をご紹介します。

●メリット
・拠出した掛金は全額小規模共済等掛金控除として所得控除を受けることができる……所得税と住民税合わせて30%の人が2万円/月を拠出すると、所得税+住民税が7万2000円軽減する。
・運用中の利益は非課税
・一時金での受け取りは「退職所得控除」、年金受け取りでは「公的年金等控除」が受けられる

●デメリット
・引き出しは原則60歳以降。急にお金が必要になっても中途引出は不可
・運用結果は自己責任。運用次第で掛金割れ(=元本割れ)の可能性あり

●注意点
加入から受け取りに至るまで次のような手数料がかかる
・加入手数料
・移換手数料
・掛け金拠出時の手数料3つ:収納手数料(国民年金基金連合会に年間1236円)/事務委託手数料(信託銀行に年間768円程度)/口座管理手数料(金融機関により異なる)
・給付時(年金の受け取り時)にかかる費用:(送金1回あたり432円(税込み))
・還付時(掛け金の払い戻し時)にかかる費用

専業主婦は、課税所得がないので所得控除は活用できず、運用の手数料負担が重くのしかかります。加入するメリットがあるか、じっくり考えましょう。

マッチング拠出制度で効率よく老後貯金

2012年1月に導入されたマッチング拠出制度とは、企業型確定拠出年金制度を導入している企業で会社が拠出する掛金に従業員が掛金を追加して拠出する制度です。ということはiDeCoでは必要な手数料が不要。定期預金や年金保険など元本確保型商品で運用すればiDeCoより効率よく老後貯金できます。

とは言っても2016年にこの制度を導入済みの企業は35.8%(「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」日本経済団体連合会)です。利用できる人は少ないですね。

65歳以降も働き続けることで「定年退職」がなくなる!?

2015年の60〜64歳の雇用者は438万人、65歳以上は458万人。65歳以上の雇用者が65歳未満を超えました(内閣府「平成28年版高齢者白書」より)。60歳以上の高齢者の28.9%が「働けるうちはいつまでも」と考えていますが、それが現実のものになりつつあります。一生涯現役=老後資金準備は不要!なんてことにもなりそうです。
(文:大沼 恵美子)

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