人間にも「三毛猫のような模様」が存在する! 皮膚に描かれた「ブラシュコ線」とは?

2023年6月17日(土)7時0分 tocana

 どんなに毛深い人でも“モフモフ”の動物たちほどの体毛は生えないが、もしも彼らと同じくらいモフモフだった場合、人間の身体にもシマウマや三毛猫のようなユニークな柄のパターンがあらわれてくるという——。


人間の皮膚に描かれた模様「ブラシュコ線」とは

 髪を七三に分けるにしても人によって右分けか左分けかが違ってくるが、それは頭のてっぺんの“つむじ”の具合が影響していることは明らかだろう。


 もしも頭髪並みに体毛が濃かった場合、人間の体表にもつむじのような模様のパターンがあらわれてくるというから興味深い。これは「ブラシュコ線(Blaschko lines)」と呼ばれる皮膚構造のパターンである。


 ドイツの皮膚科医アルフレッド・ブラシュコ(1858-1922)は、20世紀初頭までに50人以上の被験者の皮膚を研究した。彼は身体全体のホクロ、アザ、その他の皮膚の状態のパターンに注目し、それらが一定の線に従っているように見えることを発見したのだ。


 ブラシュコ線は出生時にすでに存在しているもので、血管や神経などの他の既知の身体システムとは無関係であった。背中ではV型ライン、前胸部〜側胸部ではS型ライン、四肢では垂直のラインを描いている。


 頭皮のつむじや首のうねりなどのブラシュコ線の詳細なパターンは、100年後に医師のルドルフ・ハップルによって図にされた。


 これらのブラシュコ線は、胚の発育中に細胞が分裂して皮膚に成長するまでの軌跡をたどったものであると現在考えられている。具体的には膚表面の主要な細胞であるケラチノサイトと、皮膚の色素を担う表皮深部の細胞であるメラノサイトの経路によって形作られる。


 このように一部のパターンは線として表示されるが、他のパターンはより大きなパッチとして表示される。遺伝子パターンのパッチワークはモザイク現象と呼ばれ、X染色体に関連する形質だけでなく、発生初期に発生する突然変異でもあらわれる可能性がある。


■突然変異によってブラシュコ線が見える人々もいる

 人間の色素の色はX染色体上の遺伝子だけで決まるわけではないため、通常は人間ではこのブラシュコ線の影響を見ることはできない。しかし他の動物では毛色の遺伝子はもっぱらX染色体に関連付けられており、たとえば三毛猫の毛色のパターンが形成される。


 そして条件によっては人間にもこれらのブラシュコ線が見える場合がある。色生成細胞に関わる突然変異によってブラシュコ線に続く縞や渦巻きとして現れる色素細胞モザイクを引き起こす可能性がある。


 下の画像の「タイプ1a」と「タイプ1b」は最も一般的に見られるパターンで、その他はそれほど一般的ではない。


 人間のモザイク現象のもう1つのきわめてまれなケースはキメラ現象である。キメラ現象とは、2つの異なる受精卵が融合して 1つの個体を形成することで、最終的には遺伝的に異なる2つの肌タイプがランダムに組み合わされて、上の画像の「タイプ2」である市松模様のモザイクとして現れることがある。


 研究者の中には、これらの線がツタウルシによる皮膚炎のような発疹の広がり方も説明しているのではないかと疑う声もあがっている。湿疹や乾癬などのより一般的な皮膚疾患も同じパターンであらわれる可能性がある。


 したがって、自分のユニークなブラシュコ線がどのようなものであるかを推測するのも楽しいことだが、これらのパターンを理解することは、医師が皮膚の状態を診断するのにも役立つのである。


 もしも自分が体毛“モフモフ”のネコ型ヒューマノイドであったら、どんな毛色のデザインがいいのか考えればいろいろと想像が膨らみそうだ。そして一部の人々が髪を染めたり、タトゥーを入れたりするのは、生まれる前の胚細胞にさかのぼる潜在的欲望の発露なのかもしれない!?


参考:「Science Alert」ほか

tocana

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