若い世代の自殺、死因1位は先進国で日本だけ…H30年版自殺対策白書
2018年6月20日(水)18時45分 リセマム
平成30年版自殺対策白書は、「自殺の現状」「自殺対策の基本的な枠組みと若者の自殺対策の取組み」「平成29年度の自殺対策の実施状況」から構成。年齢階級別の自殺者数の推移を見ると、50歳代は平成15年を境に減少傾向にあり、近年は60歳代〜20歳代の各年齢階級においても減少傾向にある。
一方で、若い世代の自殺は深刻な状況にあり、15歳〜39歳の各年代の死因の第1位は「自殺」。10〜14歳においても、1位の「悪性新生物」に続く2位となっている。厚生労働省によると、「こうした状況は国際的に見ても深刻であり、15〜34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進国では日本のみ」だという。白書では、フランス・ドイツ・カナダ・米国・英国・イタリアの6か国のデータとの比較も掲載。自殺の死亡率(人口10万人あたりの死亡者数)は、ドイツで7.7、米国で13.3、英国で6.6などだが、日本は17.8と高い傾向にある。
画像:先進国の年齢階級別死亡者数および死亡率(15〜34歳、死因の上位3位)
また、自殺対策強化月間におけるSNS相談の実施結果の分析も掲載。厚生労働省は平成30年3月の自殺対策強化月間にあわせて、若者一般をおもな対象とするSNS相談事業を集中的に実施。13団体がSNS(LINE、Twitter、チャット)による相談を行ったところ、相談延べ件数は10,129件にのぼった。そのうち、LINEによる相談をおこなったのは11団体で、相談件数は10,017件。11団体9アカウントの「友だち」登録数の合計は69,549人だった。
10代〜20代の女性のみを対象とした1団体(LINE1アカウント)を含めて単純計算をしたところ、年齢階級別の相談件数は、不詳を除くと「19歳以下」が42.7%、「20歳代」39.4%を占め、82.1%が29歳以下だった。また、男性よりも女性の相談の方が多いこと、1回あたりの相談所要時間は「30〜60分」がもっとも多いことなどもわかった。
平成30年4月には、SNS相談事業を実施した13団体を集めた報告会が開催された。成果や今後の課題などについて意見交換を行ったところ、対面や電話でのコミュニケーションが苦手な人を相談につなげられたなど、SNS相談のニーズは確実に存在することが明らかになった。一方で、相手の反応が見えないなどの難しさも指摘されている。
厚生労働省は平成30年度、文部科学省と連携して、SNSを活用した相談対応強化のための実践的研究を実施する予定。SNS相談事業の実施結果の詳細な分析、相談体制の整備方針の検討、相談支援ノウハウを集約したガイドラインの作成などを行う。研究で得られた中間的な成果は、SNS相談を実施する団体での活用を求め、さらなる課題の提示や改善案についてフィードバックを得る考え。その後、最終的な成果物を取りまとめるという。