抜け穴だらけの“ザル法” 批判の声も…裏金問題を受け「改正政治資金規正法」成立 いまだ残る問題点を専門家が解説
2024年6月22日(土)6時0分 TOKYO FM+
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。6月20日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「改正 政治資金規正法、成立」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆抜け穴の多い「改正政治資金規正法」
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた「改正政治資金規正法」が6月19日(水)に参院本会議で可決・成立しました。議員の罰則強化や政治資金の透明性の確保などが明記され、多くの項目が2026年1月1日に施行されます。
ユージ:塚越さん、改正政治資金規正法が成立しました。改めて内容を教えてください。
塚越:裏金問題の再発防止策としてできたのですが、やはり抜け穴が多く、生煮えのまま通ってしまった感じです。改正案ではなく「改定案」と捉える人もいますし、私もそう思います。
まず、議員本人の罰則を強化する、いわゆる「連座制」の導入のため、収支報告書の「確認書」の作成を議員に義務付け、議員が確認を怠って会計責任者が不記載などで処罰されると、議員も公民権停止になる可能性があるとしました。
あくまで「可能性」という話ですが、これを自民党は「連座制」としました。例えば会計責任者が嘘をついた場合、議員を処罰しない例外規定をつくっています。つまり、会計責任者が嘘をついたことにすれば、議員は罰せられないことになります。裏金で国民が怒っているのに、この程度の改正ではどうなのだろうと思います。
ユージ:それは連帯責任であるべきですけどね。
◆領収書類の公開は10年後 時効になるので誰も罰せられない?
ユージ:国民が納得できないといえば、パーティー券の問題もありますよね。
塚越:問題となったパーティー券ですが、購入者の公開基準額を今の「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げました。もともと自民党は10万円としていたのですが、公明党の批判もあって5万円になりました。
ただし、5万円はパーティー1回あたりの金額であり、例えば4回開いて同じ人や団体が買えば、今と同じです。これは、やはり抜け穴じゃないかということですね。
ユージ:パーティーの回数が変わってくるかもしれませんね。あとは、政策活動費ですね。
塚越:政策活動費ですが、こちらは項目ごとの使い道や支出した年月を開示して、10年後に領収書などを公開するとしています。公開方法や上限額などの詳細は決まっていません。
岸田文雄首相は「施行日の2026年1月1日に間に合うよう検討する」と言っているのですが、始まるのが遅いですし、これだけ重要な法なのに、まだ詰めきれないで成立させています。
透明性を確保するための第三者機関を設置することなどが義務付けられていますが、結局「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、世間の関心がなくなったらどうなるか分かりませんよね。
さらに政治資金規正法と所得税法の時効は5年なので、10年後に不正が分かったとしても時効になっているので、誰も罰せられないことが考えられます。なぜ10年という縛りにしたのか、明確な答えは見えてきません。どうみても、逃げ切りたいという気持ちが見えてきます。
ユージ:聞けば聞くほど抜け穴が多いなという気がしてきます。
◆データベース化もされておらず、調査も一苦労…
塚越:他にも変わったところはいくつかありますが、野党が求めた企業団体「献金」の制限や禁止は盛り込まれていません。政治にお金がかかると言われていますが、だったら少なくとも、税金を原資とする「政党交付金」をなくしてほしいと私は思います。さらに企業献金を禁止にしないなら、どの企業がどれくらい献金しているのかが分かるようにルールをつくるべきかと思います。
というのも、問題になっている「政治資金規正法」は、単に政治家のお金を減らすのが目的ではありません。現状の法律には最初に「政治活動が国民の不断の監視と批判の下におこなわれるようにするため」と書いています。
どういうことかというと、お金の収支を明らかにするのが目的で、「献金してはダメ」と言っているわけではありません。むしろ献金などの国民の自発的意思を損なってはならないとも書いてあります。
お金を受け取ってもいいけれど、全部ガラス張りにして、どういうふうにあるのか、国民が分かるようにチェックしましょう、という話です。結局これができていないなと思います。
ユージ:お金に関して、ブラックボックスのままだと納得できませんね。
塚越:さらにいうと、公開される情報は「データベース化」する必要があります。まず今回の裏金問題は、最初に「赤旗」が報じた後に神戸大学の上脇博之教授が、正月返上で公開されている情報を調べたことで発覚しました。あくまで氷山の一角です。
公開されている文書の多くは「PDF」という形式で、要するに文書があるだけで(データベース上での検索・比較などができない)、教授は政治資金報告書から派閥の収入の報告書とパーティー券を買っている政治団体の資質を1個ずつ比べました。とても大変な作業です。
例えば「岸田文雄」などの名前で検索すれば、すぐに分かるようなデータベースを作るべきですし、そのためにはExcelなどにまとめたデータが必須です。法律が通っても、膨大な量があるのでこれを調べないといけません。
データベースができていないのが問題だと、ビデオジャーナリストの神保哲生さんが話しています。あまりメディアで言われていないのですが、非常に重要です。ここを今後、法律で詰めていかないと、我々も監視できなくなってしまうのが問題だと思います。
ユージ:改めて、この政治資金規正法についてどう思いますか?
塚越:やはり、“ザル”法なのかなと思います。「変えたくない」という自民党の意思が透けているように私は見えてしまいます。
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6月20日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年6月28日(金) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
◆抜け穴の多い「改正政治資金規正法」
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた「改正政治資金規正法」が6月19日(水)に参院本会議で可決・成立しました。議員の罰則強化や政治資金の透明性の確保などが明記され、多くの項目が2026年1月1日に施行されます。
ユージ:塚越さん、改正政治資金規正法が成立しました。改めて内容を教えてください。
塚越:裏金問題の再発防止策としてできたのですが、やはり抜け穴が多く、生煮えのまま通ってしまった感じです。改正案ではなく「改定案」と捉える人もいますし、私もそう思います。
まず、議員本人の罰則を強化する、いわゆる「連座制」の導入のため、収支報告書の「確認書」の作成を議員に義務付け、議員が確認を怠って会計責任者が不記載などで処罰されると、議員も公民権停止になる可能性があるとしました。
あくまで「可能性」という話ですが、これを自民党は「連座制」としました。例えば会計責任者が嘘をついた場合、議員を処罰しない例外規定をつくっています。つまり、会計責任者が嘘をついたことにすれば、議員は罰せられないことになります。裏金で国民が怒っているのに、この程度の改正ではどうなのだろうと思います。
ユージ:それは連帯責任であるべきですけどね。
◆領収書類の公開は10年後 時効になるので誰も罰せられない?
ユージ:国民が納得できないといえば、パーティー券の問題もありますよね。
塚越:問題となったパーティー券ですが、購入者の公開基準額を今の「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げました。もともと自民党は10万円としていたのですが、公明党の批判もあって5万円になりました。
ただし、5万円はパーティー1回あたりの金額であり、例えば4回開いて同じ人や団体が買えば、今と同じです。これは、やはり抜け穴じゃないかということですね。
ユージ:パーティーの回数が変わってくるかもしれませんね。あとは、政策活動費ですね。
塚越:政策活動費ですが、こちらは項目ごとの使い道や支出した年月を開示して、10年後に領収書などを公開するとしています。公開方法や上限額などの詳細は決まっていません。
岸田文雄首相は「施行日の2026年1月1日に間に合うよう検討する」と言っているのですが、始まるのが遅いですし、これだけ重要な法なのに、まだ詰めきれないで成立させています。
透明性を確保するための第三者機関を設置することなどが義務付けられていますが、結局「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、世間の関心がなくなったらどうなるか分かりませんよね。
さらに政治資金規正法と所得税法の時効は5年なので、10年後に不正が分かったとしても時効になっているので、誰も罰せられないことが考えられます。なぜ10年という縛りにしたのか、明確な答えは見えてきません。どうみても、逃げ切りたいという気持ちが見えてきます。
ユージ:聞けば聞くほど抜け穴が多いなという気がしてきます。
◆データベース化もされておらず、調査も一苦労…
塚越:他にも変わったところはいくつかありますが、野党が求めた企業団体「献金」の制限や禁止は盛り込まれていません。政治にお金がかかると言われていますが、だったら少なくとも、税金を原資とする「政党交付金」をなくしてほしいと私は思います。さらに企業献金を禁止にしないなら、どの企業がどれくらい献金しているのかが分かるようにルールをつくるべきかと思います。
というのも、問題になっている「政治資金規正法」は、単に政治家のお金を減らすのが目的ではありません。現状の法律には最初に「政治活動が国民の不断の監視と批判の下におこなわれるようにするため」と書いています。
どういうことかというと、お金の収支を明らかにするのが目的で、「献金してはダメ」と言っているわけではありません。むしろ献金などの国民の自発的意思を損なってはならないとも書いてあります。
お金を受け取ってもいいけれど、全部ガラス張りにして、どういうふうにあるのか、国民が分かるようにチェックしましょう、という話です。結局これができていないなと思います。
ユージ:お金に関して、ブラックボックスのままだと納得できませんね。
塚越:さらにいうと、公開される情報は「データベース化」する必要があります。まず今回の裏金問題は、最初に「赤旗」が報じた後に神戸大学の上脇博之教授が、正月返上で公開されている情報を調べたことで発覚しました。あくまで氷山の一角です。
公開されている文書の多くは「PDF」という形式で、要するに文書があるだけで(データベース上での検索・比較などができない)、教授は政治資金報告書から派閥の収入の報告書とパーティー券を買っている政治団体の資質を1個ずつ比べました。とても大変な作業です。
例えば「岸田文雄」などの名前で検索すれば、すぐに分かるようなデータベースを作るべきですし、そのためにはExcelなどにまとめたデータが必須です。法律が通っても、膨大な量があるのでこれを調べないといけません。
データベースができていないのが問題だと、ビデオジャーナリストの神保哲生さんが話しています。あまりメディアで言われていないのですが、非常に重要です。ここを今後、法律で詰めていかないと、我々も監視できなくなってしまうのが問題だと思います。
ユージ:改めて、この政治資金規正法についてどう思いますか?
塚越:やはり、“ザル”法なのかなと思います。「変えたくない」という自民党の意思が透けているように私は見えてしまいます。
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6月20日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年6月28日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/