メラニンを減らしても肌は白くならない?化粧品研究・開発者が白さについて科学的に解説

2024年6月24日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

日々新しい美容法が生まれ続ける昨今、「今のスキンケアが自分に合っているか分からない…」と思っている人も多いはず。そのようななか、工学博士でありながら化粧品の研究・開発にも携わる、FILTOM研究所長の尾池哲郎さんは「ふだんのスキンケアを科学の視点でとらえかえせば、目からウロコの美容論にたどりつく」と話します。そこで今回は、尾池さんが科学の視点から「美とは何か」を徹底分析した著書『美容の科学:「美しさ」はどのようにつくられるか』より、一部引用、再編集してお届けします。

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肌の色とは何か


美容や医学では美白について「メラニン」視点で考えます。

メラニンをいかに打ち消し、あるいは発生しないようにするか。それが美白向け美容商品、医薬品、医療機器の基本的な考え方です。

しかし工学ではもっと基本的なメカニズムから考えることになりますので、「光」「色」にまでさかのぼってみます。

いわゆる光のスペクトル(波長分布)です。

一歩下がって、美白の景色を遠くから俯瞰してみます。

可視光は波長の長い方から「赤(せき)・橙(とう)・黄(おう)・緑(りょく)・青(せい)・紫(し)」の色に分けることができますが、それらすべての色をすべて含むと「白い光」になります。

白いカーテンはほぼすべての色を反射しているから白く見えるのであり、メラニンはほぼすべての色を吸収するため色が反射できず黒っぽく見えます。

赤とは赤以外の光を吸収しているから、赤い光の波長だけが反射して目に届いています。

ちなみに絵の具を全て混ぜると黒っぽくなってしまうのは、すべての波長を吸収してしまうからです。

では、美白における白とはいったいどのような白の事を言っているのでしょうか。

どんな人の肌も何らかの波長が必ず吸収されていますから、すべての波長を含む「真っ白」な白のことを言っているわけではないと思います。

ではどんな色がベースになっているのでしょうか。

肌に入った光は、どんな波長が吸収され、どのように発色しながら目に届いているのでしょうか。

どんな肌に白っぽさを感じるのか


まず光が目の前の肌に入っていくところから考えます。

その時はすべての波長を含む「白い光」が入っていると仮定します。

そして角質層の水分や油分を通り抜け、細胞やセラミドに接触しつつ、表皮最下層である基底層にあるメラニンに接触して一部の波長が吸収されつつ、一部の光は毛細血管中の赤血球で赤く発色し、様々な場所で反射や屈折をくり返して、もと来たルートを逆にたどり、肌の外に飛び出し、目に肌の色情報を届けます。

この時、目に届く光の量が多ければ、明るい色を感じ、さらに多いと、白っぽく見えてきます。

なぜなら一部の波長が吸収されるからといって、すべて吸収されるわけではないからです。

写真家の中では光量が多すぎる写真を「白ボケ」と表現することがあります。

どんな写真も明度を上げ過ぎるとすべての波長が現れて白っぽくなっていきます。

ただ肌の場合は発光しているわけではありませんので、やや白っぽく感じる程度でしょう。

できるだけ多くの光が目に届くような肌には明るさや透明感、白っぽさを感じることになります。

逆に肌内部で屈折や散乱を起こしすぎると光量が下がるだけでなく、解像度も下がり、ぼやけてしまいます。

肌の色というものが肌の状態を伝える情報であると考えると、肌の内部が光をスムーズに通すような状態、つまり屈折や散乱を起こさないような透明感を持つ状態であれば、より正確な情報を手に入れることができます。

情報を正確に伝える透明感


ここで「透明」について正確に捉えてみたいと思います。

透明とは一言で言えば「物質の境目が無い状態」のことです。


(写真提供:Photo AC)

このように言えば、岩も境目が無ければ透明になるのか、と思いますがその通りです。

岩が透明に見えないのは、結晶と結晶の境目(ヒビ、亀裂、界面)が無数にあるため、そこで光が屈折し、さらに光の吸収も起きるため、なかなか光が通り抜けられないからです。

逆に結晶がきれいに成長すれば透明に見えますし、一部の波長の吸収がきれいな発色となり、宝石が生まれることになります。

その点、液体はよく混ざり合い、境目が生じにくいため透明になりやすい状態です。

液体に含まれる粒子が十分に小さければ、透明に見えます。

牛乳は分散している粒子が大きいため、光の散乱が起きて白く見えてしまいますが、メロンソーダは成分の粒子が十分に小さいので透明に見えます。

ということは、肌も細胞の結晶がきれいで、成分が十分に小さければ透明に見えるのでしょうか。

その通りです。

実際にクラゲだけでなく、中南米のグラスフロッグなど透明で体内が透けて見える生物はたくさんいます。

しかし透明な肌は紫外線の破壊力をダイレクトに受けますので大変危険です。

私たちのような一見透明に見えない肌でも、わずかに侵入してくる紫外線で肌が損傷を受け、いわゆる「物質の境目」が生じてきます。

たとえば角質細胞間に隙間が生じ、そこで光の屈折が起き、「くすみ」となります。

光の屈折が水と空気の境目でよく起きることは、池の水面を通して水中が見えにくくなる体験のとおりです。

美白にとって重要なこと


肌内部の発色を正確に外部に伝えるためには、細胞や細胞間質、角質層をできるだけ光がスムーズに通り抜けられるように欠陥を少なくし、シームレスで(境目のない)透明な状態にしておく必要があります。

そうすれば肌内部で反射した光の波長がそのまま目に届き、明るい発色の肌になります。

ここまで考えると、美白とメラニンの関係が、やや遠のいた印象を感じるかもしれません。

メラニンはたしかに光の多くの波長を吸収する性質がありますが、同時に肌の内部の欠陥を防ぐ重要な役割もあります。

肌内部が透明感を持ち、光が十分に反射して目に帰ってくる状態であれば、肌は明るく見え、白っぽささえ感じるようになります。

美白にとって重要なことはメラニンを減らすことではなく、透明感を低下させる欠陥を防ぐことであり、UVを防ぐことです。

※本稿は、『美容の科学:「美しさ」はどのようにつくられるか』(晶文社)の一部を再編集したものです。

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