男性の育休、なぜ広まらない 「義務化もやむ無し。取りたい人が取れるようになるには、まずは全員が取れるようにならないと」支援団体

2019年6月26日(水)17時17分 キャリコネニュース

ユネスコが6月13日に発表した『先進国における家族に優しい政策』報告書によると、父親の有給の育休期間が6か月以上あるのは、調査対象41か国の中で日本だけだという。さらに日本は、給与を全額支給された上で仕事を離れられる期間は30.4週で1位。2位韓国(17.2週)、3位ポルトガル(12.5週)を大きく引き離した。

しかし、世界最高水準の育休制度があるにも関わらず、日本の男性の取得率は低い。2018年度の取得率は6.16%と過去最高だったものの、以前として女性の取得率とは大きな開きがある。

制度と利用実態がかけ離れているのはなぜか。男性の育休取得推進・啓発を行うNPO「ファザーリング・ジャパン」の塚越学さんは、パタハラ被害ばかりを取り上げるメディアにも責任があると指摘する。

「育休を取って良かったという事例もたくさん出ているのに広まらない」

6月初旬、カネカ元社員の家族がツイッターで、夫が育休取得を理由に不利益を受けたと主張し注目を集めた。しかし塚越さんは、「私達のところにもパタハラの相談は来ますが少数です」と語る。

連合は2014年の調査で、子供のいる働く525人にパタハラ被害の有無を聞いている。このうち「制度利用を認めてもらえなかった」、「制度を利用したら嫌がらせされた」などの被害を経験したという人は11.6%だった。ファザーリング・ジャパンが行った別の調査でも、育休取得で「同僚や上司からの評価が下がった」と答えた人は1割を切っていたという。

「メディアがそうした事例ばかり大々的に取り上げると、それが全体であるかのような錯覚が生まれます。報道を見た男性は、育休を取りたくても『こんな酷い目に遭うのか』と躊躇しますし、配偶者も『それなら取らないで』となりがちです。ここ十数年、報道の姿勢が変わっていないと感じます」

「育休を取って良かったという事例もたくさん出ているのに広まらない」と言う。例えば厚労省の「イクメンプロジェクト」には、

「仕事の面では職場全体で取得を後押ししてくれた為、何の躊躇もなく育休に入ることができたのですが、育休中は苦難の連続でした」(20代、子供2人)
「育休は対象となる子や妻のためだけでなく、私自身が心身健やかに家事・育児に取り組むなかで自身の生き方・働き方、家族のあり方を見つめる機会にもなります」(30代、子供2人)
「『男が取る必要あるの?』という意見があるのも確かです。必要があるかないかは育児休暇を取得した私でも正直分かりません。ただ取得した後に自分が感じたのは『妻にとっては確実に必要』だったいうことです」(30代、子供2人)

などの声も集まっている。しかし、こうした事例がメディアで取り上げられることは少ない。

「男性の育休は贅沢品」の現状変わるか

「周りに迷惑をかけることを過度に嫌がる国民性」や「性別役割分業」の根強さも、取得率が上がらない要因と分析する。ユネスコの報告書でも、男性の育休取得が進まない背景の1つに「休暇を取得しづらい社内の雰囲気」を挙げている。

「かつては、女性が一般職、男性が総合職で扱う仕事の重要度が違うため、女性のほうが育休を取りやすいということはありました。しかし、今やそういうステージは過ぎ、男女とも総合職で働いています。同じ仕事をしているなら、どっちが休んでも困るのは一緒なのに、女性総合職は育休を取って男性は取らない。これは男性に育休の発想がないためです」

そういう面では、自民党の議員連盟が進める男性の育休取得義務化は「不本意だがやむ無し」と受け止めているという。

「取りたい人が取れる空気を作るにはまず、全員が取れるようにならないと。日本の場合は『周りが取るなら俺も取ろうかな』という方向で進むのが良さそうです」

女性にとって育児休業制度はかつての「贅沢品」から「必需品」に変わったが、「男性にとっては相変わらず贅沢品」だ。「取りたいですかと聞かれれば取りたいが、実際にはみんな取らない。だからこそ一回『試供品』として全員に使ってもらうことが必要でしょう」と指摘する。

自民党の議員連盟の提案で産休に関する言及はなかったが、塚越さんはフランスの例に倣い、「産休と育休を分けて考えるべき」とも提案していた。

「産後休暇の8週間以内に育児と妻のサポートを経験することで、男性の脳も子育てに適した脳に変わります。その後、取りたい人が更に取るようになれば、育休取得率は10%を超えるのではないかと思います」

政府は2020年に、男性の育休取得率を13%まで引き上げる目標を掲げている。


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