猛暑とインバウンド急増でじわじわ広がる感染症の脅威、防ぐ方法はあるのか

6月27日(木)8時0分 週刊女性PRIME

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 昨年末から今春にかけ、風疹やはしかの感染者数が増え続けている。来年の東京五輪を控え、政府も感染症対策の強化を推進するという。過去には2016年のリオデジャネイロ五輪ではジカ熱が懸念され、昨年の平昌冬季大会ではノロウイルスの感染が広がった。

 現在、日本はさまざまな感染症の危機にさらされているが、中でも蚊やダニが媒介する感染症は、地球温暖化というものに影響され増加するおそれがあるとの指摘がある。温暖化により、それらのすみかとなる環境、動物の分布域が変わってきていることに起因しているのだ──。

■猛暑日が確実に増えていく



「昨年の夏は猛暑であったことが記憶に新しいと思いますが、昨年、埼玉の熊谷で41・1℃という歴代1位の記録を出しました。個々のケースで高温になった理由を科学的に立証するのは難しいのですが、高温化する大きな原因のひとつに地球温暖化があります」

 こう話すのは、地球温暖化などを研究する専門家の向井人史さん。このような温暖化に対し、国際的な対策として2015年にパリ協定が採択された。この協定では、産業革命から世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えることなどを目標としている。

 しかし先日、気象庁気象研究所などの研究チームから、気温上昇が2℃に抑えられても、日本で35℃以上となる猛暑日は現在の1・8倍に増えるという予測結果の発表がなされた。

「体感的に夏は、ほぼ毎日が猛暑日といってもいいかもしれません。年によってばらつきは出るかもしれませんが、確実に猛暑日は増えると予想されています」(向井さん)

 このような気候の変化に伴い、自然環境でもすでに変化が起こってきており、例えば日本周辺のサンゴの分布域が北上しているのが確認されている。向井さんはこう続ける。

「陸上の生物でも温暖化により各種の影響が考えられます。例えばデング熱などを媒介する蚊、ヒトスジシマカは、今世紀末には北海道まで分布が拡大する可能性も指摘されています。また最近、感染症が問題になっているマダニなどについてもそれを媒介する動物の活動圏の拡大がダニの生息域を広げ人への接触の機会を増やす可能性があります」

 平均気温の上昇、病気を媒介する虫や動物の分布域の拡大。海外へ行ったり来日する人々の増加。思い返せば、2014年には東京で70年ぶりとなるデング熱の感染者が発生した。このような感染症のリスクはこれからも増えるのだろうか? 医師で感染症が専門の岩田健太郎さんは、

「日本でデング熱は、一過性で流行するかもしれませんが、次の年には持ち越さないだろうといわれています。異説がありますが、デングウイルスは日本では越冬できずに死滅してしまうだろうと。

 ただ昨今、言われているように温暖化の影響で冬が暖かくなり、熱帯地方のように通年で蚊が存在するという環境になってきたらどうなるか、という懸念はありますが……」



 確かに'14年のデング熱は、翌年まで持ち越すことはなかった。このときの感染ルートについて岩田さんはこう推測する。

「外国からいらした方、または海外から戻った日本人がデング熱に感染していて、その人を刺した蚊が感染してほかの日本人に広がった可能性。もしくは、これは比較的レアなケースだと思いますが、ウイルス感染した蚊が飛行機の中に紛れ込んで国内に入ってきたことが考えられます」

■インバウンドの急増で高まる“リスク”



 ここ何年かで、海外からのインバウンド(訪日外国人旅行)は増え続け、昨年は約3120万人と過去最高となった。

「例えば、来年は東京でオリンピックがあります。2025年には大阪万博の開催も決まりました。また、日本人の人口が減り、労働力として外国から人を呼び寄せて仕事をしてもらうということも増え始めます。人の往来が活発になれば当然、外から持ち込まれる感染症が国内で増える可能性はありますね」(岩田さん・以下同)

 さらに蚊を媒体とする以外の感染症についても、岩田さんは警鐘を鳴らす。

「例えば、梅毒やHIVなどの性感染症。日本にもこれらの病原体はありますが、さらに外から持ち込まれて別の増え方をするというリスクも想定しなくてはいけなくなるでしょう。

 これから感染症が増える可能性については、温暖化の問題とインバウンドの問題が交錯している場合と、それぞれが独立している場合を考える必要があると思います」

 対策として初めに思いつくのが、空港などでの検疫。病気の感染者や、汚染が疑われる食品などを水際でブロックするため、国も力を入れているが……、

「一般論として、水際作戦というのはうまくいかないことが多いんです。体調は自己申告に頼っていますし、食料品についても、すべてにスクリーニングを行うことは現実的ではない。

 例えば、生ハムやチーズにはリステリアという菌がついてきますし、魚だとビブリオコレラ、鶏肉だとカンピロバクターや、卵だとサルモネラ。これらを全部、水際でチェックするのは不可能に近いです」

 それならばどうすればいいのか?

「大事なことは、入ってくるのをブロックするのではなく、むしろ入ってくることを前提に対策を立てることが重要になります。

 例えば寄生虫感染。今、韓国産のヒラメの輸入を規制強化するなど話題になっていますが、そのヒラメについているクドアという寄生虫は、冷凍してしまえば完全に死んでしまうんです。

 豚肉や鶏肉にしてもちゃんと火にかけて調理してから食べれば、ほとんどの微生物は死にますので、感染のリスクはほぼゼロになります。厚生労働省は、こういったことをしっかりアナウンスすることが必要だと思います」

 まずは“敵”を知り、その対策をすることが初めの一歩だ。



■刺されやすい血液型は?



 私たちの身近にいて、さまざまな感染症を媒介する蚊。その生態に詳しい、害虫防除技術研究所の代表・白井良和さんに話を聞いた。



 まずは、刺されやすい人について、

「蚊は温度、二酸化炭素、水分という3つの要素に誘引されます。なので体温が高く汗かきの人は要注意。また皮脂のにおいや足のにおいのもとになるイソ吉草酸が多い人が刺されやすいといえます」

 蚊が血を吸うのは産卵のため。ということは、血を吸うのはメスだけなのだ。蚊にとって美味しく、刺されやすい血液型はあるのだろうか?

「イギリスで研究されたウッドさんという研究者が実験をして、O型、B型、AB型、A型の順に刺されやすいという結果を発表しました。私も実験をしましたが、確かに同様の結果になりました。

 しかし、O型に含まれるH抗原とA型に含まれるA抗原を腕に塗り刺される実験をしても、刺されにくさに変化は見られなかったのです。なので、血液型による刺されにくさのデータはあるが、ほかの要因も絡んでくるとしか言えません」

 では、蚊に刺されないためにできることはどんなことだろう?

「当たり前のことになってしまいますが、いちばんは虫除け剤を使用すること。あとは蚊は黒や紺という暗い色を好んで寄ってきますので、明るい色の服で長袖、長ズボンを着用し、極力素肌を出さないことです。蚊の生態については、まだまだわからないことが多いんです。研究者としては奥深い世界ですね」


《PROFILE》

岩田健太郎さん ◎神戸大学大学院医学研究科教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。日本の感染症診療の第一人者およびオピニオンリーダーとして国外でも活躍

向井人史さん ◎気候変動適応センター長。地球温暖化、越境大気汚染、環境科学の専門家として、気候変動の研究を行いながら、情報分析・情報提供を行っている

白井良和さん ◎医学博士。害虫駆除会社にて、ネズミやゴキブリ、蚊、ハチなどの害虫駆除業務に携わり、'03年に蚊の駆除業務を柱に(有)モストップを設立

週刊女性PRIME

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