安東弘樹のクルマ向上委員会! 第22回 丁度いいラグジュアリークーペ? 安東弘樹、BMW「8シリーズ」を語る!

7月5日(金)11時30分 マイナビニュース

BMW「8シリーズ クーペ」に試乗した安東弘樹さんは、「このハイスペックなクルマを楽しめる場所が、果たして日本にあるのだろうか」という疑問を抱いたという。試乗後、BMW日本法人の御舘康成(おたち・やすなり)プロダクト・マネジャーとの懇談に臨んだ安東さんは、この問いから話を始めた。

※文と写真はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました

○高性能車を日本で駆ることについて

安東さん(以下、安):芦ノ湖スカイラインを「850」(ハチゴーマル、安東さんと御舘さんは試乗車をこう呼んでいた)で走ったんですけど、タイトなターンが多いにも関わらず十分に曲がるし、四輪駆動なのにアンダーステアが全く出ないし、楽しいクルマでした。

ただ、いいクルマですし、速いんですけど、このクルマを日本で楽しむには、どうすればいいんだろうというのが正直な感想なんです。速くて、絶対的な動力性能を持ったクルマで、ドイツであればアウトバーンを走らせたりするんでしょうけど、この性能を日本で発揮できるのかなというのが疑問で。ある輸入車インポーターは、高性能なクルマを走らせることができるプライベートサーキットを整備したんですが、「その手があったか!」と思ったんですよ。

8シリーズ クーペを販売されるにあたって、BMWさんが「ジェントルマンズ・レーサー」という打ち出し方をされるのは分かるんですけど、高性能車を日本でどうやって楽しむのかについても、何か提案があればと思うんですよね。日本の高速道路の場合、ほとんどの区間が時速100キロ、ごくわずかの区間でさえ時速120キロまでしか出せませんから。

まあ、そこは、特に日本市場でスポーツカーを売る場合の、永遠のテーマですよね。日本にはニュルブルクリンク(ドイツにあるサーキット)のように、チケットを買ってコースイン、という場所は皆無です。高性能なクルマになればなるほど、公道では試すことすらできない。どうすれば楽しめるかは、私自身にとっての永遠のテーマでもあるんですけどね(笑)

御舘さん(以下、御):まず、850のクルマとしての価値について申し上げますと、これだけの高いパフォーマンスを“汗ひとつかかずに”発揮してしまうところは、それだけで1つの価値だと思っています。サーキットに持っていかなければ楽しめないかというと、私は少し違う考えを持っていて、サーキットではなくても、例えば首都高のインターチェンジ1つでも、自分の思った通りにクルマを操れるというのは、素晴らしい価値だと考えます。

御:「スポーツカーはパッセンジャーカーの終わるところで始まり、レーシングカーの始まるところで終わる」とよくいうんですけど、レーシングカーというのは、コンマ1秒を争うがゆえに、ドライバーの意図通りにダイレクトに動かないと、クルマとしては成立しません。高い技術に裏打ちされたクルマは、公道で乗っても、日常の道が全く違う風景に見える。850もそうだと思います。

安:ただ、現実問題として、首都高を60キロ、箱根の山道を50キロで走っていても、絶対に楽しめない世界があるような気がするんですよ。そういう考え方に対する答えが、プライベートサーキットだったりするわけで。これは、BMWさんだけに限った話ではないんですけどね。

御:まず申し上げておきたいのは、当たり前なのですが、公道でクルマを楽しむとしても、スピード違反は絶対に勧められません。

安:もちろん、私もです。だからこそ、“ジェントルマンズ・レーサー”という言葉が虚しく聞こえるんです。

御:私たちは、モータースポーツといいますか、クルマをサーキットで楽しんでもらうようなことを他社ほど積極的にはやっていませんが、一部のコアなお客様には、そういった機会を定期的に提供しています。そういった取り組みを、さらに広げられるかどうかは内部の議論もあるので、すぐにはお答えできませんが、そういった機会を提供することは、ブランド構築の上でも大事だと考えています。

何といっても、8シリーズ クーペは「ジェントルマンズ・レーサー」なので、公道に納まりきらない部分があるのは理解しています。850をお買い上げ頂くお客様には、普段はパートナーを優雅にエスコートして頂き、一人の時にはスポーティーな走りをお楽しみ頂くというライフスタイルを提案したいですね。

編集部(以下、編):BMWの高性能なクルマに乗っている方って、「高性能なのに全てを発揮できていない」といったようなフラストレーションを感じていらっしゃるものなのでしょうか。それとも、「このクルマは、環境さえ許せば時速200キロ超でも安定して走らせることができる」という意識からくる、本物のクルマに乗っているという満足を感じている方が多いんでしょうか。

御:当然、両方いらっしゃると思います。850はジェントルマンズ・レーサーといっているくらいですから、やはり、お買い上げになる方の中には、サーキット走行の心得もあるような方がいらっしゃることは想定しています。そういうお客様に、性能を発揮できる機会をお届けしたいという気持ちはあります。

○日本にラグジュアリークーペ文化は根付くか

(担当編集より:ここで話題は8シリーズ クーペのブレーキディスクがドリルド=穴が開いているかどうかというテーマに移ったのですが、そちらはあまりにマニアックだったので割愛させて頂き、安東さんの愛車がポルシェ「911 カレラ 4S」だと知った御舘さんが発した一言から再開させて頂きます)

御:あ、そうですか、911に乗っていらっしゃるんですね。どうでしょう、ポルシェに乗っていらっしゃる方から見て、今回の850は。

安:まず、500キロ近く重さが違いますよね。850は、上り坂はすごく軽く感じるんですけど、下り坂は少し怖いですね。車両重量が2トンもあると、やはり、ある程度は重量を感じます。私の911 カレラ 4S(997後期型)は、同じ四輪駆動で1.5トンなんですよ。

850の方が圧倒的にトルクがあるので、上り坂は「ピューッ」というか、「軽い!」という感じなんですけど、下り坂は、やっぱり、ポルシェと同じ感覚では走れないなっていうのは多少、感じました。

御:私も「991の911」(7世代目の911という意味、試乗会の時点では911の最新モデル)に乗ったことがあるんですけど、やっぱり、ソリッドな乗り心地というのは、皆がリスペクトするところですよね。911は後ろに荷重をかけて、圧倒的な加速感とシャープなハンドリングを実現していますが、BMWは前後50:50の重量配分を目指します。そんな中、850では、最新のテクノロジーを用いて、あたかもホイールベース(前輪と後輪の間の幅)が短いクルマであるかのような乗り味をだそうとしているんです。それに加えて、居住空間を含め、無理といいますか、我慢をしなくても済むようなクルマに仕上げました。

ソリッドな乗り味が好きな方は911を選ばれるでしょう。ただ、911には憧れるけれど、アンコンフォータブルな部分を我慢せずに、スポーツカーとしてのパフォーマンスを手に入れたいと考える方にとっては、850が結構、いい選択肢になるのではないかと思っています。

安:「M8」(8シリーズのハイパフォーマンス版)も日本に入ってくるんですか。

御:はい。

安:価格でいうと、2,000万円を軽く超えてきそうですね。これも、四輪駆動ですか。

御:そうです。今日、乗って感じて頂けたと思いますけど、四輪駆動だからといって、フロントにトルクが不意に入って、ドライバーが不自然に感じるというようなことは、もうないですからね。

安:M8は当然、もう少しソリッドな乗り味になるんですよね。ラグジュアリーサイドのソリッドというか。

御:今日のクルマは「ジェントルマンズ・レーサー」でしたが、その上に、ピュアレーシングの「8」(M8のこと)というものも、やはり必要だと思っています。

安:850と911って、顧客層は重なりますか? あまり競合はしないんでしょうか。

御:私たちは、あまり競合という見方はしていません。コアなポルシェユーザーが他社に乗り換えるとも思えませんので。ただ、これからラグジュアリークーペに乗ろうと考える方が、「どんなクルマがあるのかな」という時には、もちろんポルシェも、レクサス「LC」も、メルセデス・ベンツ「Sクラス」のクーペも、色んなキャラクターのクルマを見られるかと思います。そんな中で、快適性、ラグジュアリーの品質感、そして走り、この3つの要素を最もバランスよく満たしているのは、手前味噌ですけど、うちじゃないかなとは思っています。

ラグジュアリークーペで、新しくクルマを探しているお客様に対しては、8シリーズを勧めていきたい。それにはブランディングも重要です。絶対的な存在として911がいますが、BMWとしては、最もBMWらしいクルマとして、といいますか、美しくて、ジェントルで、そして速いという、このクルマのポジションをしっかりと築いていきたいですね。

安:そういう意味では、8シリーズ クーペは派手すぎず、丁度いい選択肢になるのかもしれませんね。

御:欧州には伝統的にあるタイプのクーペですが、日本には、あまりなかったクルマではないかと思っています。

安:特に今は、あまりないですね。

御:色なんかも意図的に、クラシックヨーロピアンクーペといいますか、中間色を設定したり。こういったものが趣味に合う人には、「バシッ」とはまるはずです。

安:ただ、いいクルマだからこそ、思いっきり楽しめる場所が欲しいですけどね(笑)

御:それは、おっしゃるとおりです。サーキット走行というのが、例えば乗馬のように、趣味のスポーツとして確立すればと思いますけどね。

安:日本だと、そういった趣味はゴルフしかないような感じですが、ゴルフに行くように、サーキットにも行ければいいですよね。

編:これからの日本に、そういった、ジェントルマンの趣味を楽しむような人って、増えていくんでしょうか。

御:増えると思いますけどね。というのも、日本は平均寿命が長くて、リタイアメントした後については、会社などにおける社会的な地位ではなく、その人の人格、品格、趣味、そうしたもので、人生の長い後半をどう過ごすかということが、お客様のメンタリティの中にはあると思いますので。今、リタイアの時期を迎えている方たちは、本当にクルマが素晴らしかった頃に青春時代を過ごした方たちで、クルマに対する憧れも強いし、クルマのことをよくご存知です。

8シリーズ クーペはBMWのラグジュアリークラスの今後を占う重要なクルマなので、ジェントルマンズ・レーサーというライフスタイルを楽しんでいただけるような取り組みが重要だと思っています。新しい911も登場しますし、ハイパフォーマンスなラグジュアリークーペというものを、日本の自動車文化にしっかりと根付かせる上でも大事な時期です。

安:クルマ自体は本当に素晴らしかったです。ありがとうございました!

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