ついに到来した「コロナ複合災害」洪水・土砂崩れ

7月6日(月)6時0分 JBpress

新型コロナウイルス感染症と水害は原因が同じ。写真は昨年10月の台風19号で冠水した千葉県成田市の道路(写真:アフロ)

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 予想されたことではありましたが、ついに第1波がやって来てしまいました。

 7月4日未明から熊本県と鹿児島県で記録的な大雨となり、熊本県南部をはじめ各地で土砂崩れが相次ぎ、一級河川の球磨川が氾濫。

 本稿を準備している段階で2人死亡、15人心肺停止という17人の犠牲が報道されており、被害の拡大が懸念されています。

 気象庁は最高レベルに相当するレベル5の大雨特別警報を発令、球磨川はほぼ全域で氾濫し、雨脚が弱まった直後から行方不明者の捜索も手作業で進められています。

 しかし、捜索隊員はマスクをしているものの、直後に町で後片付けをしている人を撮影した動画では、マスクを着けている姿はほとんど確認できませんでした。

 翌日になると、今度はなぜか少年サッカーチームがマスク着用、わざわざユニフォームで勤労奉仕している報道などは目にしました。

 これはこれで如何なものか、まず自宅の復旧が先ではないかと首をひねらざるを得ませんでしたが・・・大人はマスクをしていない写真が目につきました。

 それはそうでしょう。大雨のさなかの深夜でも気温は23度、日中は26度と「夏日」で、崩れ落ちたがれきや土砂を取り除く作業、とてもではないですが、マスクなどつけてやってはいられません。

 熊本県、鹿児島県の新型コロナウイルス感染症パンデミックの蔓延状況はどうなっているのでしょうか?

 鹿児島県は確認済みの感染者数が51、死者はいまのところカウントされていません。

 熊本県は確認済みの感染者数が49、死者は3人。

 これを人口100万人あたりに直すと

 鹿児島県は感染者数32、熊本県は感染者数28で死者数2。

 この値は東京都の感染者数468、死者数23、全国平均の感染者数150、死者数8と比較すると有意に少ない値ですが、決してゼロではありません。

「ただでさえコロナで大変なのに、そのうえ風水害まで来て、大変なことになっている」という見方も可能ですが、実は両者の「複合災害」は、国際的には早くから予測されていたことです。

 もっと言えば、これらの根は「一つ」でもあるのです。


実はルーツが同じ、コロナと風水害

 新型コロナウイルス感染症の病源体、コロナウイルスの出どころについては、様々な議論があります。

 中国、武漢からだ、いや前年にすでに米国でも流行っていたなど、責任の擦り付け合いのような論争にも発展していますが、そうした争いと無関係に言えることは次の2点です。

1、従来 コウモリなどの哺乳動物の体内に生息していたウイルスと、その突然変異体である可能性が高いこと

2、このような病源体が人間に蔓延するケースはSARS、MERS、エボラ、ジカ、今回のコロナと、21世紀に入ってからコンスタントに、波状に来襲していること

 これらは間違いようがありません。

 そしてその最大の理由として挙げられるのが、地球環境異常、気候変動による生態系のシフトにほかなりません。

 先月も、東京都内の荒川河川敷にシカが現れ、捕獲されました。シカは決して町などに出て来たいわけではない。元来住んでいた山の環境が変化し、食べ物を求めるなど、仕方なく移動してきて都内までやって来てしまった。

 同様に、元来は人里離れた場所でひっそりと生活していた鳥類やコウモリなどの動物が、仕方なく人間の棲息域と重なる領域まで進出し、彼らの体内でひっそりと過ごしていた潜在的には人獣共通病源体となるウイルスが、人間世界にも蔓延するモティーフができてしまった。

 つまり、無節操な濫開発が齎した地球環境変動によって、人間が必然的な仕返しを被っている側面が、強く指摘されています。

 そして、いま熊本や鹿児島を襲っている大雨も、雨雲から降下したものですが、もとは南太平洋の海水が暖められて雲となり、低気圧となり、それらが北上して温帯の日本で降雨をもたらしているものです。

 大本は、すでにかなり深層まで温められてしまった「過熱海水」の蒸発が、本質的な原因となっている。

 つまり、コロナに限らず21世紀に襲いかかってくるパンデミックと風水害は、同じ「地球環境変動」という共通原因が生み出した「鬼子の兄弟」のようなものなのです。

 そして今後、複合被災による最大被害が発生するだろうと予測されているものにほかなりません。

予想される「ヒューストン壊滅」リスク
ハリケーン+コロナのダブル打撃

 私たち、グローバルAIコンソーシアムのタスクフォースが最も懸念している複合災害は、実は日本ではなく、米国にあります。

 上記と同様、深層海水まで十分温められてしまった海水が風水害をもたらしている最大規模の被害は、米国フロリダ湾の温かい海の水によってもたらされるテキサス州やルイジアナ州など米中西南部諸州を襲うハリケーンによるものです。

 例えば「ヒューストン大洪水」として知られる2017年の「ハリケーン・ハービー」は全米で死者107人、被害総額1250億ドル(約13.5兆円)という途轍もないダメージをもたらしました。

 そして、発足半年のドナルド・トランプ政権に最初の大きな挫きを与えました。

 さて、2020年7月4日時点でのテキサス州の新型コロナウイルス被害は

確認感染者:18.4万人、死者:2575人(人口2900万人)

ルイジアナ州

確認感染者:6.3万人、死者:3170人(人口460万人)

 日本全国の感染者数が2万弱、死者1000人程度とは桁が明らかに違い、そこにハリケーンが直撃する可能性が、ほぼ間違いなく懸念されます。

 このため、様々な対策のビッグデータ解析、シミュレーションが進められています。

 新型コロナと大雨洪水、土砂崩れなどの風水害は決して独立でなく、また「不幸にして両方やって来る」のでもありません。

 たとえて言えば、アブと蜂とがワンセット、組になってやって来るようなことがほぼ構造的に明らかなのです。

「複合災害」としてシステマティックに対応しないとどうしようもないことが、あらかじめ予想されているのです。

 下手をすると「ヒューストン」という都市は、今年壊滅的な打撃を受ける可能性もある。全く大げさな話でなはく、対策が検討されています。

 日本国政府に、こうした準備がどの程度あるか、定かに確認していませんが、各自治体には十分な準備はないことが懸念されます。

 東京大学のグループは、適切な対処を国際協力のもとで検討、準備しています。


台風の通り道とコロナ複合災害

 上記のテキサスやルイジアナとは規模は異なりますが、日本の「台風の通り道」についても、ポテンシャル・リスク評価の参考値を挙げておきます。

 九州北部での最大のコロナ被害は福岡県で発生しており、

 確定感染者数862、死者33、と、今回被災した熊本、鹿児島とコロナ被災は1桁違います。

 昨年、風水害に起因する停電や断水によって壊滅的打撃を被った千葉県は、確定感染者数983、死者45でした。

 福岡と同じオーダー、実際にはやや上回る数字が出ています。

 やはり昨年、荒川が氾濫した埼玉県は、確定感染者数1088、死者65、千曲川大氾濫のあった長野県は、確定感染者数77、死者0と、鹿児島と同様の状況と考えられます。

 今回の鹿児島ないし熊本の被災を詳細に検討し、先行被災例に学ぶ対策を講じる必要があるでしょう。

 もともと水都で低地が多い大阪府は木津川氾濫など記憶も新しいところですが、確定感染者数1862、死者86。

 大阪と隣接し、何かと議論もありますが、そもそも平成21年の台風9号で壊滅的な被害が発生した兵庫県は、確定感染者数709、死者45。

 東京だって決して例外ではありません。やや古い話になりますが、私の地元国立からほど近い武蔵野線「新小平」駅は半地下に設置されていますが、1991年10月台風21号による豪雨で「水没」、付近住民も避難する大水害を経験しています。

 東京都が発表している、確定感染者数6523、死者325は、検査数を増やせば相当多くの潜在的な感染者がいると考えられ、そこに風水害などの複合災害が重なることで、予想外の影響も発生すると考えられます。

 この季節、大雨は仕方がない、何とか過ぎ去ってもらって被害は少ない「だろう」という「だろう行政」では、対策になりません。

 これらの複合災害の根本原因が、グローバル気候変動という同一のものである可能性が高く、いずれも第2波、第3波と、繰り返し押し寄せることが、高い確率で予測されることから、統合的な対策は必須不可欠と考えられます。

 最悪の状況を仮定した「かもしれない対策」を、行政に強く求める必要があります。

 同時に、そこでは根拠に基づく政策(Evidence-based policy)の施行が絶対条件となります。

 素人の思い付きでマスクを配るような対策未満は、間違っても二度と繰り返さないことを、注文しておく必要があります。

筆者:伊東 乾

JBpress

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