日本酒縛りで神戸を楽しむ

7月6日(土)11時30分 マイナビニュース

神戸には六甲おろしが吹く。その強風が育んだのが、神戸が誇る名酒たちだ。関東では横浜市と同様に港で栄え、今や流行の最先端都市となった神戸だが、この地域には「灘五郷」を抱える日本酒の街でもある。日本酒好きなら常識であろうが、神戸には著名酒蔵が多く、日本酒縛りでも観光を楽しめる街なのだ。

神戸の酒を造る4つの秘訣

灘五郷とは、神戸市をはじめとした灘地方にある酒蔵の集まった地域のこと。西宮市の今津郷、西宮郷、神戸市東灘区の魚崎郷、御影郷、神戸市灘区の西郷の5カ所を指しており、3カ所が神戸市に集まっている。例えば沢の鶴、神戸酒心館(福寿)、白鶴、菊正宗、櫻正宗、浜福鶴と、有名どころが集まっているエリアだ。

神戸をはじめ灘地方が日本酒の産地となったのは理由がある、というのは、神戸で日本酒に携わる人々が声をそろえて話すことだ。曰く、六甲おろし、宮水、山田錦、そして神戸の海だという。

山田錦は酒造りに適した酒造好適米で、1936年に兵庫県で誕生した。味などもさることながら、米の一粒一粒が大きいことが特徴としてあげられる。日本酒造りでは米を磨くこと(精米)が必要で、その精米歩合は40%に達することもある。玄米に対して60%も磨くわけで、普通の食用米では小さくなりすぎて心白(中心部)が壊れてしまうこともある。山田錦は粒が大きいため、そこまで磨いても壊れないことが、日本酒造りにおいて重要なポイントのひとつだ。

この山田錦は、神戸市の北、六甲山系を越えた三木市や加東市が一大産地となっている。この山田錦の誕生は、神戸の日本酒の品質をより一層高める結果となった。

とはいえ、山田錦が誕生したのは1936年。昭和11年のことだ。灘の日本酒は江戸時代には江戸で「下り酒」と呼ばれて愛飲されており、すでに有名だった。この当時の酒造りを支えていたのが、六甲山系から流れ出る「宮水」。花崗岩を通して濾過された地下水は、神戸の海水と混じり合って中硬度となり、酒造りに適した水となって湧き出ているという。

この宮水の発見が江戸時代後期と言われているが、あくまで「酒造りに適した水が判明した」のがその時代で、それ以前から宮水自体は酒造りに使われており、その酒の品質が高かったのが発見に繋がったらしい。

そして六甲山系から吹き下ろす六甲おろしは、酒造りに大事な気温をコントロールする役割を果たした。そのため、灘の酒蔵は「重ね蔵」と呼ばれる構造になっており、北側に仕込み兼貯蔵庫、南側に前蔵を配置。これを密接させる構造によって、冬は北側からの六甲おろしで低温になり、夏は南からの直射日光を避けるような設計だという。

最後のポイントが神戸の港の存在だ。樽廻船問屋が江戸に向かって灘の酒を輸送する体制が整い、灘の酒が江戸で広まった。他にも水車や丹波杜氏の存在も忘れてはならないだろうが、こうしたさまざまな要素が絡み合って生まれたのが灘・神戸の日本酒なのだ。
ノーベル賞公式行事で供された日本酒が楽しめる「酒心館」

そんな灘五郷の日本酒だが、現地の大手蔵元は酒蔵に資料館を設けるなどして日本酒に親しみを持ってもらおうと努力をしている。今回、そうした蔵元のうち、神戸酒心館と菊正宗酒造を訪問した。

神戸酒心館は、日本酒の「福寿」を製造する酒蔵。福寿と言えば、ノーベル賞授賞式後の晩餐会において提供された日本酒としても話題となった。晩餐会のソムリエが、日本人受賞者のために選んだというのが「福寿 純米吟醸酒」で、2008年の小林誠、益川敏英下村脩、各氏が受賞した際に出された日本酒だ。

神戸酒心館は、敷地内にレストラン「蔵の料亭さかばやし」を併設している。まずはここで食事を取るのもいい。名物は「酒そば」(1,110円)。そばに福寿を振りかけて食べるという一品で、適量を振りかけてそばつゆにつけてすすると、そばの香りとともに弾けるように福寿の匂いが口の中に広がる。

アルコールはそのままなので子供や運転手では食べられないが、酒とそばの調和した味わいと香りは一度食べる価値がある。

他にも平日10食限定の「水明膳」(2,920円)は、自家製のすくい豆腐や旬の魚の焼き物など3つのお重に彩りもよい料理が詰まった一品。自家製豆腐を楽しみたいなら「みかげ」(2,690円)がオススメ。そばを楽しめる「そば膳」(1,950円)、「明石のまえもん」と呼ばれる明石浦産の魚介4種を盛り付けた「お造り膳」(2,160円)を含めた3種類が昼の料理として用意されている。

もちろん日本酒も充実。「壱の酒」「弐の酒」といったように、食前から食後までに飲むのに適した酒が用意されているのが嬉しい。「きき酒セット」(純米1,380円、生酒1,480円)もあるので、状況に応じて選びたい。

ノーベル賞の公式行事で振る舞われた福寿 純米吟醸(ボトル3,090円)も是非飲んで欲しい。グラス(小)であれば340円と手頃だ。

ゆっくりと食事と日本酒を楽しんだら、飲んだばかりの日本酒がどのようにできあがるかを見学するのも良さそう。逆に、先に見学をして、工程を知ってから飲めば、より味わいが深まること請け合い。

酒心館では、酒造りのビデオや発酵エリアなどを見学できる酒蔵見学サービスを実施している。ビデオは日本語を含めて4カ国語(日英中韓)、リーフレットは16言語を用意。見学コースは3種類あり、2日前までの予約が必要なBコースは40〜60分の所要時間と、たっぷり時間をかけて見学できる。最後にはきき酒も用意されているのが嬉しい。しかも、全て無料。

ちなみに、さらに盛りだくさんな有料の見学コースも準備しているそうで、今後提供していきたいそうだ。

■ 蔵の料亭さかばやし
営業時間:昼11時30分〜14時30分(14時ラストオーダー)、夜17時30分〜22時(21時ラストオーダー)
休業日:年末年始
住所:〒658-0044 兵庫県神戸市東灘区御影塚町1-8-17

伝統の酒造りを見学できる「菊正宗酒造記念館」

菊正宗酒造は、酒造りを行う醸造所とは別に、「菊正宗酒造記念館」がある。酒造りの過程や過去に使われていた酒造りの用具類など、菊正宗の伝統に触れられる資料館だ。

以前は1659年に神戸市内に建てられた酒蔵を移築した建物を使っていた記念館だが、阪神淡路大震災で倒壊してしまい、1999年に復興オープンしたのが、現在の記念館となっている。震災でも、収蔵していた用具類は無事に発掘できたため、歴史的な資料は今も以前のように見学することができる。

「ほぼ全てが国指定重要有形民俗文化財」という酒造展示室内の用具類は、江戸時代から続く、酒造りにこだわり続けた同社の歴史を伝えてくれる。酒造展示室だけでなく、映像や展示で詳しい歴史を知るコーナーも用意され、見学ツアーを利用すればさらに詳しい話を聞くことができる。

もちろん、きき酒コーナーも用意されている。加熱処理を行っている「生原酒」や季節の酒を試飲することができる。その場で購入も可能で、神戸限定、記念館限定の日本酒はお土産にも最適だ。

その隣に建つのが「樽酒マイスターファクトリー」。菊正宗の「樽酒瓶詰(樽びん)」の誕生50周年を記念して設立されたこの建物は、樽酒造りを紹介するだけでなく、実際の工房として樽酒に欠かせない樽作りなどを見学できる。

樽酒は、節ができないように育てた吉野杉を材料に樽を作り、そこに酒を詰めて香りも楽しめるようにしたもの。ファクトリーでは、樹齢100年の吉野杉の丸太を割り、丸みと厚みを一定にそろえた杉板(榑)を使って樽を作っていく。圧巻は、数メートルの長さの竹を割って削り出し、それを樽の外周に合わせて結っていく「箍巻き」と呼ばれる作業。数メートルの長さの竹を手作業で手際よく結っていく熟練の技は見とれるほど。

さらに、その箍に合わせて杉板の榑を並べて円筒状にして樽の形に仕上げるが、21〜22枚の榑が職人の感覚でピッタリと収まる様は思わず感心してしまう。職人たちが酒を詰める樽を実際に作り上げていく様子を見学できる樽酒マイスターファクトリーは、1日3回、予約をすれば誰でも無料で見学できる。

■ 菊正宗酒造記念館
営業時間:9時30分〜16時30分
休業日:年末年始
住所:〒658-0026 兵庫県神戸市東灘区魚崎西町1-9-1

オシャレにお酒を楽しむ「SAKE TARU LOUNGE」

酒造りの歴史と今を堪能したあとは、実際に日本酒を楽しみたい。そんな場合には神戸のランドマーク、神戸ポートタワーを訪れてみよう。高さ108mを誇る神戸のシンボルで、展望台からは360度のパノラマの光景を楽しめる。

神戸ポートタワーは展望台が5階層になっており、その展望3階にあるのが6月1日にオープンしたばかりの「SAKE TARU LOUNGE」だ。もともと喫茶スペースだった展望3階を改装してオープンしたこのラウンジは、何といっても「回転する」のが特徴だ。

もともとこの展望3階は、外周部分が20分に1回転という間隔で回転しており、神戸の町を座ったままで一望できるというのが特徴だった。ここをラウンジとして改装したため、窓に向かって設置されたテーブルの前に座ると、勝手に景色が回転してくれる仕組みになっている。

面白いのは、注文カウンターは回転しない中心部にあり、目の前で注文して席についても、気付くとカウンターが見えなくなってしまうのだ。これはちょっと面白い仕掛け。

とはいえ、大切なのはメニュー。灘五郷を体感できると銘打っており、それぞれの地区の日本酒をふんだんに取りそろえている。すでに紹介した福寿や菊正宗は元より、金盃酒造の金盃、安福又四郎商店の大黒正宗、そして清酒徳若の原酒といった珍しい蔵元の銘酒も取りそろえている。

基本的に日本酒だけを取りそろえ、ソフトドリンクも置きたくなかったということで、甘酒がある程度。基本的には日本酒を楽しみに行く大人のラウンジだ。日本酒だけでなく、日本酒を使ったオリジナルカクテルも楽しめる。

店舗にもこだわりがあり、店先には酒樽を作る時に使う箍を再利用したシャンデリア、2016年に解体された旧三菱銀行神戸支店で使用されていた扉を設置。入口を入ると、実際の酒樽を再利用した「SAKE TARUウォール」、カウンターは間伐材や環境整備によって伐採された街路樹などを活用したもの、イスも酒樽を再利用したそうだ。

昼間は神戸の酒を育んだ六甲山系や港を一望でき、夜には美しい神戸の夜景を楽しめる。現時点では来年3月までの期間限定なので、新しい観光スペースとして是非訪問して欲しい。

■ SAKE TARU LOUNGE
営業時間:10時〜21時(20時30分ラストオーダー)
住所:〒650-0042 兵庫県神戸市中央区波止場町5-5 神戸ポートタワー展望3階回転フロア
Web:saketaru-lounge.storeinfo.jp
電話番号:080-9026-9154

番外編:神戸でクラフトビールを楽しむ

最近、神戸で増えているのが神戸のクラフトビールを飲ませる店だ。その中で今回訪問したのは、三宮駅にほど近い二宮商店街にある「IN THA DOOR BREWING」。店舗奥で実際にクラフトビールを醸造しており、神戸にちなんだクラフトビールを取りそろえている。

「二宮FunkAle」などのビールはほのかな甘みと芳醇な香りのビールが揃う。この日は黒ビール、IPAを含めて5種類のクラフトビールが楽しめるほか、神戸市に本社を構えるUCC上島珈琲とコラボレーションして、共同で醸造したUCCコーヒースタウトも提供している。

地元の農家ともコラボレーションして神戸産の素材にこだわったビールも醸造しており、この日はイチゴビールなど斬新なオリジナリティあふれるビールも用意。地元に根ざした、神戸限定のビールを楽しめる店で、ビールと音楽を楽しみつつ、新たな神戸を体感できる。

■ IN THA DOOR BREWING
営業時間:平日17時〜23時、土日12時〜23時
休業日:水曜日
住所:〒651-0094 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町3-3-26 1F

マイナビニュース

「日本酒」をもっと詳しく

「日本酒」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ