経営者側は「60歳定年後も働く人」をどう考えている?

7月9日(火)18時30分 All About

国が定めた「65歳までの雇用」に対して8割の企業は「継続雇用制度の導入」で対応しています。

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企業の約8割が「継続雇用制度」を選択

国は、2013年「改正高年齢者雇用安定法」により「継続雇用制度の導入」「定年の引き上げ」「定年制の廃止」のいずれかで「原則、希望者全員を65歳まで雇用」するよう企業に義務づけました。

「高齢者雇用」に対する企業の取り組み——給与水準や退職金、評価、職場への影響、66歳以降の雇用など——をご紹介します。

厚生労働省「平成30年 高年齢者の雇用状況(6月1日現在)」によると、「継続雇用制度の導入」を行った企業は1%減少したものの約80%を占めています。詳しく見ると、71%の企業が「希望者全員を継続雇用」しており、「基準該当者65歳以上を継続雇用」する企業は29%に過ぎません。

高年齢者の雇用確保措置の実施状況

・継続雇用制度の導入……12万4135社/79.3%(前年比1.0%減)
・定年の引き上げ……2万8359社/18.1%(同1.0%増)
・定年制の廃止……4113社/2.6%(前年と同じ)

継続雇用制度の内訳

・希望者全員65歳以上の継続雇用制度(71%)
中小企業……8万512社/73.6%(前年比1.1%増)
大企業……8万8124社/51.9%(前年比1.1%増)

・基準該当者65歳以上の継続雇用制度(29%)
中小企業……2万8950社/26.4%(前年比1.1%減)
大企業……3万6011社/48.1%(前年比1.1%減)

では、雇用確保措置がどのような状況なのか、全体と事業規模別にもう少し詳しく見ていきましょう。

大企業も65歳定年が増加

まず「定年制」を見ていきましょう。全体では「廃止」する企業が2.6%(前年と同じ)、「65歳」は16.1%(前年比0.8%増)、「66〜69歳」は0.8%(同0.1%増)、「70歳以上」は1.2%(同0.1%増)。では、事業規模別に見ていきましょう。

・定年制を廃止(4113社/2.6%)
中小企業……4032社/2.9%(前年比0.1%増)
大企業……81社/0.5%(前年と同じ)

・65歳定年(2万5217社/16.1%)
中小企業……2万3685社/16.8%(前年比0.7%増)
大企業……1532社/9.4%(前年比0.9%増)

・66歳〜69歳定年(1232社/0.8%)
中小企業……1207社/0.9%(前年比0.2%増)
大企業……25社/0.2%(前年比0.1%増)

・70歳以上定年(1910社/1.2%)
中小企業……1863社/1.3%(前年比0.1%増)
大企業……47社/0.3%(前年比0.1%増)

大企業でも「65歳定年」が増加しています。

66歳以上が働ける制度のある企業が3割

次に「66歳以上働ける制度のある企業」と「70歳以上働ける制度のある企業」について見ていきましょう。

全体では、希望者全員が66歳以上働ける企業は6.0%で前年より0.7%増加し、70歳以上も0.6%増えて5.6%です。全体数には「定年制を廃止」「66歳以上・70歳以上定年」を含みます。

66歳以上働ける制度がある企業(4万3259社/27.6%) 

中小企業……3万9699社/28.2%
大企業社……3560社/21.8%

・希望者全員66歳以上の継続雇用制度(9406社/6.0%) 
中小企業……8979社/6.4%(前年比0.7%増)
大企業……427社/2.6%(前年比0.5%増)

・基準該当者66歳以上雇用(1万5330社/9.8%)
中小企業……1万3867社/9.9%(前年比0.6%)
大企業……1463社/8.9%(前年比1.2%増)

・その他の制度で66歳以上まで雇用(1万1269社/7.2%)
中小企業……9752社/6.9%
大企業……1517社/9.3%

70歳以上働ける制度がある企業(4万515社/25.8%)

中小企業……3万7232社/26.5%(前年比3.1%増)
大企業……3283社/20.1%(前年比4.7%増)

・希望者全員70歳以上雇用(8793社/5.6%) 
中小企業……8408社/6.0%(前年比0.6%増)
大企業……385社/2.4%(前年比0.6%増)

・基準該当者70歳以上雇用(1万4665社/9.3%) 
中小企業……1万3337社/9.5%(前年比0.6%増)
大企業……1328社/8.1%(前年比1.2%増)

・その他の制度で70歳以上雇用(1万1034社/7.0%)
中小企業……9592社/6.8%(前年比1.7%増)
大企業……1442社/8.8%(前年比2.9%増)

大企業も「基準該当者」「その他の制度」などの条件付きですが高齢者雇用に積極的になっています。

職場の影響に「社員の定着率向上やモチベーション向上」

2017年3月、政府は「働き方改革実行計画」をまとめました。この中には高齢者の就業促進が含まれており、これを受けて独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が「60歳以降の社員に関する人事管理」に関するアンケート調査を行いました。

この調査によると、60〜64歳の継続雇用者や正社員がいる会社の42%が66歳以降も彼らを活用したいと考えています。では「定年64歳以下、かつ継続雇用65歳以下(=以下「雇用確保措置企業」)」、「定年64歳以下、かつ継続雇用66歳以上(=以下「継続雇用66歳以上企業」)」の企業の60歳代前半社員に対する評価をご紹介します。 

活用の課題は?

<雇用確保措置企業>
・本人のモチベーションの維持・向上:67.5%
・本人の健康:64.1%
・世代交代の遅延・停滞:34.6%

<継続雇用66歳以上企業>
・本人の健康:69.4%
・本人のモチベーションの維持・向上:61.5%
・世代交代の遅延・停滞:36.4%

個別の評価は?

<雇用確保措置企業>
・高い専門能力を持っている:86.6%
・幅広い人脈を持っている:71.8%
・高い管理能力・指導能力を持っている:69.1%
・労働意欲が高い:65.2%

<継続雇用66歳以上企業>
・高い専門能力を持っている:87.5%
・高い管理能力・指導力を持っている:73.8%
・労働意欲が高い:70.7%
・幅広い人脈を持っている:69.6%

職場での影響は?

<雇用確保措置企業>
・職場の生産性の向上:75.5%
・職場の人間関係が良くなる:55.0%
・59歳以下の正社員の定着率の向上:50.0%
・59歳以下の正社員のモチベーション向上:48.1%

<継続雇用66歳以上企業>
・職場の生産性の向上:81.1%
・職場の人間関係が良くなる:59.8%
・59歳以下の正社員の定着率の向上:57.0%
・59歳以下の正社員のモチベーション向上:54.5%

継続雇用の社員は、専門能力や管理能力など評価が高く、59歳以下の正社員の定着率向上にも良い影響を与えています。課題は「モチベーション」と「健康」です。次に継続雇用後の仕事に関してご紹介します。

仕事内容が継続する人の割合

<雇用確保措置企業>
・ほぼ全員:44.9%
・8割程度:18.8%
・半数程度:12.1%

<継続雇用66歳以上企業>
・ほぼ全員:46.9%
・8割程度:20.1%
・半数程度:12.6%

担当する仕事の内容・範囲の変化

<雇用確保措置企業>
・増えている:42.4%
・やや増えている:43.2%
・変わらない:13.2%

<継続雇用66歳以上企業>
・増えている:55.2%
・やや増えている:35.1%
・変わらない:8.3%

職責の重さの変化

<雇用確保措置企業>
・増えている:25.9%
・やや増えている:41.2%
・変わらない:32.0%

<継続雇用66歳以上企業>
・増えている:40.2%
・やや増えている:36.4%
・変わらない:22.3%

継続雇用の社員の9割は、仕事の量や範囲が増え、職責も重くなっています。次に、継続雇用時の給与や退職金などについてご紹介します。

基本給の決め方は?

<雇用確保措置企業>
・60歳時点の基本給の一定比率の金額を支給:31.6%
・60歳時点の職能資格や職位などに対応して支給:25.8%
・職種や仕事内容に応じて支給:24.3%

<継続雇用66歳以上企業>
・60歳時点の基本給の一定比率の金額を支給:24.1%
・60歳時点の職能資格や職位などに対応して支給:24.6%
・職種や仕事内容に応じて支給:32.0%

60歳以降に最初に支給する「60歳代前半社員」の基本給の水準は?

<雇用確保措置企業>
・60〜70%未満:25.2%
・70〜80%未満:21.9%
・50〜60%未満:16.8%

<継続雇用66歳以上企業>
・70〜80%未満:20.6%
・60〜70%未満:20.1%

60歳時点で退職金・慰労金を精算する?

<雇用確保措置企業>
・精算している:89.2%
・精算していない:5.4%
・退職金・慰労金はない:0.7%

<継続雇用66歳以上企業>
・精算している:80.9%
・精算していない:11.4%
・退職金・慰労金はない:0.4%

60歳以降(第二退職金)に退職金・慰労金を支給する?

<雇用確保措置企業>
・全員を対象としている:8.8%
・一部を対象としている:4.1%
・全員を対象としていない:85.7%

<継続雇用66歳以上企業>
・全員を対象としている:8.8%
・一部を対象としている:5.6%
・全員を対象としていない:82.4%

60歳以降の給与は60歳時の7割前後、60歳定年時に退職金を精算、第二退職金については5%程度の企業が一部を対象に支給、としています。

政府は「65歳定年」や「65歳以降の継続雇用」を推進

2019年3月28日に公表された「働き方改革実行計画」には「高齢者の就業促進の取り組み」——「65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業への支援」と「多様な技術・経験を有するシニア層が、一つの企業に留まらず、幅広く社会に貢献できる仕組み」——が明記されています。これからの働き方は、テレワークや副業、兼業、転職など根本から変わりそうです。70歳まで現役の時代はすぐそこまで来ているようです。

時代や企業が求める能力は何かを見極めながら、スキルアップ・キャリアアップなどの自分磨きが今まで以上に必要です。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))

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