ヤマハのレッスンに潜入調査したJASRAC職員が証人尋問で話したこと「私は私の任務を全うしただけ」「正当な業務だと思っている」

2019年7月9日(火)20時13分 キャリコネニュース

音楽教室のレッスンで行われる生徒や講師の演奏が、著作権使用料を徴収できる「公衆に聞かせる目的の演奏」にあたるかどうか問われている裁判で、7月9日、東京地裁で証人尋問が行われた。裁判では、ヤマハ振興会などで作る「音楽教育を守る会」から4人、被告であるJASRACから2人が証人として法廷に立った。

このうちJASRAC側の1人は、7日の朝日新聞ウェブ版が「潜入調査」として報じた女性職員だった。職員は2017年5月から今年2月末までの約2年、ヤマハ銀座店で大人向けのバイオリンのグループレッスンを月数回受講していた。受講中は身分を「主婦」と称し、JASRAC職員であるとは明かしていなかった。

「私は実際に主婦。職員と明かしたら受講できないと思った」


ヤマハ側の証人には、同社の音楽教室で大人向けのバイオリンのグループレッスンを担当する講師、幼児や小中学生のピアノのグループレッスンを担当している講師など4人が出廷した。

証人らは、レッスンで扱う曲は9割もしくはそれ以上がクラシックの曲で、JASRACの管理する音楽を使うのは稀であること、講師が演奏会で弾く場合と教室で弾く場合では意味合いが異なることなどを述べた。

これに対して、JASRACの証人である女性職員は、自身がレッスンを受けた感想として、

「講師が伴奏に合わせて弾く様子は、まるでコンサートを聞いているかのように美しく聞こえた。自分が伴奏に合わせて弾く際も、とても気持ちよく楽しく弾けた」

と証言した。また、「レッスンの中で、一曲を通して弾くことが一切ない回は、ほとんどなかった」とも述べている。

職員は2017年、バイオリンのグループレッスンを見学に行った。見学したコースでは当時、「You raise me up」が課題曲になっていた。入会後は「美女と野獣」などを課題曲として使用したという。

職員の見本演奏をコンサートのように感じた理由は、「(ヤマハ側で用意している伴奏システム『伴奏くん』の)伴奏もすごいし、プロの演奏を間近で見るのはなかなかないので」と説明。原告の弁護人から、調査方法の倫理的な問題を問われると、「潜入調査という言葉は違うと思う。上司の指示に従って行った」と反論。自分以外に潜入調査していた職員がいるかどうかは把握しておらず、「私は私の任務を全うしただけ」とも答えた。

主婦と記入したのは「実際に私は主婦であるから。JASRACの職員と書くと受講を断られてしまうかもしれないと思った」ためだという。上司から指示はなく、自分の判断でそう記入したとも明かした。身分を偽ったという認識は「全くない。調査のための正当な業務だと思っている」と話した。

職員としてレッスンを受けた女性が受講生を代表する感想を述べたことに、原告側からは「生徒の前に一職員としての感想ではないか」という質問も飛んだが、「職員ではあるが、生徒としてレッスンを受けたので生徒としての感想」と反論していた。

JASRACは裁判終了後の記者会見で、潜入取材した職員の証言について「記憶の通り述べているのだと思う」とコメント。肩書きを「主婦」としたことについて、記者から「上司に潜入を指示されながら、肩書きだけ自己判断というのはおかしいのでは」と問われると、

「契約申込書の記載のいちいちを上司に聞いたか聞かなかったというのは、聞こうと聞くまいと法律的になんの変わりもないと思う。偽証しているってことではないと思う」

と答えていた。


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