「気候変動に人口削減」カマラ・ハリスが衝撃発言! 世界経済フォーラム主宰「40億人の穀潰しを削減」は事実か?
2023年7月18日(火)15時40分 tocana
「人口削減」がTwitterでトレンド入りした。各ツイートを見てみると、新型コロナウイルスワクチン、ディープステート、イルミナティ、食品添加物……と、陰謀ワードが目白押しだ。アメリカのカマラ・ハリス副大統領やビル・ゲイツが人口削減について言及した動画も拡散し、岸田政権を揶揄する内容のツイートも散見される。
トレンド入りの原因は、どうやら14日にボルチモアにあるコピン州立大学を訪問したハリス氏が、「クリーンエネルギーと電気自動車に投資し、人口を減らことで、より多くの子供たちがきれいな空気を吸い、きれいな水を飲むことができるようになる」と発言したことのようだ。
ホワイトハウスが発表した書き起こしでは人口(population)が汚染(pollution)に変更されていることもあり、バイデン大統領並みの大失言として報じられている。動画を観る限り、はっきりとpopulationと発音しており、pollutionの言い間違えとはとても考えられない。
世界経済フォーラム主宰者「40億人の穀潰しを削減」は本当か?
さらに衝撃的なのが、世界経済フォーラムを主宰するクラウス・シュワブ氏が、「役立たずで食べるだけの人間」を削減するという恐ろしい発言をしているというものだ。Twitterの投稿画像にはシュワブ氏の姿と彼の発言とされる文章が掲載されている。以下に引用する。
「少なくとも40億人の『役立たずで食べるだけの人間』は戦争、作られた即効性の不妊病の蔓延と飢餓によって2050年までに削減されなければならない。
非エリートのためのエネルギー、食糧、水は、必要最低限に保つ。これは西ヨーロッパと北アメリカの白人を対象に始め、他の人種に広める。
世界の人口が10億人の管理可能なレベルに達するまで、カナダ、西ヨーロッパ、アメリカの人口は、他の大陸よりも急速に減少させる。
そのうち5億人は、中国人と日本人で構成させる。中国人と日本人は何世紀にもわたって管理されており、疑いなく権威に従うことが慣れている人間だから。
三百人委員会の善意のおかげで存在できるということを大衆に思い出させるために、たまに人為的に考案された食力不足と水不足、そして医療を利用する。」
なかなか刺激的な内容だ。気になるのは10億人が維持可能な人口だとする点。これはゴールデンビリオン(黄金の10億人)に共通する数字だ。この数字はソヴィエト連邦の崩壊目前だった1990年に出版された『世界政府の陰謀:ロシアとゴールデンビリオン』で言及されている。
日本人と中国人は管理しやすいことを理由に10億人の50%にあたる5億人を生存させるというのはわれわれにとっては朗報なのだろうか。ただでさえ人口減少が進んでいる日本人はまるまる生存できそうである。
さて、問題はこの発言が本当にシュワブ氏のものかということだが、どうやら氏の発言ではないらしい。実はこれと同じ文言の英語版オリジナルは2021年頃にネット上に出現しており、「AP」などが引用元を突き止めている。
英語版オリジナルではシュワブ氏の著作である『COVID-19: The Great Reset(グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界)』からの引用だとされているが、同書にはそうした記述はなく、実際はイギリス出身でアメリカ在住の著述家ジョン・コールマンの『The Conspirators’ Hierarchy: The Committee of 300(陰謀家のヒエラルキー:三百人委員会)』(1992)からの引用だという。
また、穀潰しという日本語がぴったりの「役立たずで食べるだけの人間(useless eaters)」について、コールマンはH.G.ウェルズの『The Open Conspiracy』からの引用だとしているが、同書にそのような記述はなく、実際はナチスドイツがプロパガンダで使用したものだという。
人口は勝手に減っていく
さて、シュワブ氏の発言ではなく陰謀系著述家のものだと明らかになったわけだが、そもそも人口動態からして世界人口は永遠に増え続けるわけではない。ノルウェーの学者であるヨルゲン・ランダース教授の2012年(邦訳版は2013年)の著作『2052: 今後40年のグローバル予測(2052: A Global Forecast for the Next Forty Years)』(日経BP)では、2040年前後から世界人口が減少しはじめると予測されている上、先日「The Lancet」に掲載された人口統計学者の国際チームによる包括的な研究でも同じ予測がされている。この減少は主に低出生率によって引き起こされ、今後も衰えることなく続くと予想されており、社会、経済、地政学に広範な影響を及ぼすという。
意図的に有害物質をバラ撒いて人類を間引くまでもなく世界人口は先細りの運命なのだ。
先に上げた『世界政府の陰謀:ロシアとゴールデンビリオン』の著者アナトリー・K・チクノフは、西側諸国がロシアの天然資源と広大な土地を狙っているという被害者意識を持っていたが、現在ではそれがワクチン陰謀論などに結び付いたことで息を吹き返したようだ。
ところで、こうした陰謀の背後にイルミナティ、ディープステート、ユダヤ系財閥など破格の権力者がいるのだとしたら、人口削減に自分たちにとって損ではないだろうか。人口が多ければ消費が増える。第三国に外資系企業を置いて、現地の人間を安い賃金で雇い、大人口の大きなマーケットで商品を売れば、その国を発展させることなく自分たちだけが肥え太ることができる。資本主義は買い手がいなければ成り立たない。搾取される奴隷は多いほど都合が良さそうだが。
人口削減はトマス・ロバート・マルサスの『人口論』(1798)から、ナチスドイツの優性思想、現代のエコファシズムに至るまで実に長い歴史のある議論だ。人口過剰が人類存続を危うくし、環境に壊滅的な打撃を与えるという認識は古くからある。冒頭のハリス氏の発言もこうした文脈から出てきたのかもしれない。米保守系コメンテーターのジェシー・ワターズ氏も「リベラルはこういうことを長い間言ってきた。地球を癒すために人口を減らす必要があるってね」と指摘している。
一般論として世界人口が減れば環境破壊が緩和されるのは確かだ。しかし、人口を減らす方法が直接的である必要はない。人口削減といっても色々あり、避妊具の普及、女性教育の推進、都市化などにより、これから生まれてくる人間を少なくするという倫理的な方法がある。必ずしもワクチン、ケムトレイル、食品添加物といった毒物で生きている人間を抹殺する必要はないのだ。
先述した『世界政府の陰謀:ロシアとゴールデンビリオン』の出版は今から30年前。マルサスの『人口論』に至っては200年以上前の書物だ。もし世界規模で人々をひっそりと抹殺し、人口をコントロールできるような超権力者がいるならば、なぜ人類はここまで増えてしまったのか。実は彼らは無力なのではないだろうか。そもそも彼らは存在するのか。
ただ、2040年以降に人口を減らしていくというのが本来の彼らの計画だったのかもしれない。その原因が少子化ならばかなり穏健な方法だ。すでに生まれてしまったわれわれが心配すべきなのは老後の生活ぐらいではないだろうか。
参考:「Mashup」「AP」「Reuters」「Newsweek」ほか