深圳で電気街に行かずに見てきたもの 〜クルマ大革命の波〜(note)

7月20日(土)13時0分 ガジェット通信

深圳で電気街に行かずに見てきたもの ~クルマ大革命の波~(note)

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今回は川西発之 / 陳発暉さんの『note』からご寄稿いただきました。

深圳で電気街に行かずに見てきたもの 〜クルマ大革命の波〜(note)

今自動車業界ではCASE*1 という大革命が起きようとしている。CASEとは「Connected: コネクティッド化」「Autonomous: 自動運転化」「Shared: シェア化」「Electric: 電動化」の頭文字を取ったもので、より具体的にはUber、Tesla、Waymo(Googleカー)等の新興企業達の台頭がこの大革命の流れを表してる。

*1:「CASE」が自動車産業にもたらす脅威とビジネスチャンスとは」2018年8月1日『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』
https://www.dhbr.net/articles/-/5450

そこで2019年3月に中国・深圳に行き、深圳の醍醐味である電気街にはあえて行かずに深圳周辺でのクルマ事情を見てきた。今回は特に「Electric: 電動化」と「Autonomous: 自動運転化」の2つに絞って紹介しようと思う。

1. Electric: 電動化

まずテスラが普及してる。どれくらい普及しているかって言うと、DiDiでテスラを呼ぶことを指定できちゃうほど。DiDiの内の1カテゴリとして成立してしまうほど、安定的に供給できる証拠だろう。

徒歩20〜30分の距離をDiDiでテスラを呼ぶと大体1500円。日本の一般的なタクシーと同じくらいの値段かな(もちろん普通車を呼べばもっと安くたった数百円で行けちゃう)。テスラを呼べるDiDi Luxeという高級ラインの対応エリアは今の所、北京、上海、深圳、広州と比較的都会な都市のみ。

本当にテスラ(Model S)がやってきたw ドライバーさん曰く、深圳ではもうModel 3も既に届いた人がチラホラいるとかいないとか。実はこの後車内に忘れ物をしてしまったが、DiDiカスタマーセンターの迅速対応のお陰で、翌日ドライバーさんがまたテスラに乗ってわざわざ忘れ物を届けに来てくれた。優しすぎる…ちょっと前までは中国で落し物したら一生帰ってこないものだったのに…(T T) こういった些細な所にも中国の変化を感じる。

また、深圳では大型デパート*2 の中に普通にテスラストアが入っていた。店内にはお客さんが多く賑わっていて、深圳一般市民の関心のEVへの高さが伺える。

*2:「华润万象天地」『高德地图』
https://www.amap.com/place/B0FFF540NK

WorldsemiというLED企業の工場見学へ行った時も社長さんがテスラ(Model S)ユーザーで、工場の壁に充電器が取り付けられていた。後述するが、中国国内の電気自動車メーカーはテスラとは別の形をした国内統一規格の充電器を用いているので、テスラだけ専用の充電器が必要になる。まるでアップルのLightningケーブルのようだ。

テスラの次は中国国内の電気自動車メーカーのお話。滞在中、BYDという大手自動車メーカーの深圳オフィスを見学させて頂いた。ちなみに深圳のバスとタクシーのほとんどがBYD製で、ほぼ全て電動である。しかし乗用車ではBYDはいきなりテスラのような100%電気自動車を市場投入するのではなく、電気自動車にまだ懐疑的なユーザーの気持ちを汲み取って、今はPHVに注力しているよう。

BYDのこの真っ赤な「唐」という最新モデルのPHVは、”542”テクノロジーをキーワードとしている。「”5”秒で100km/hまで加速し、電動化された”4”WDで、”2”L以下のガソリンで100km走る」という意味らしい。

これが中国国内統一規格のGB/Tプラグと呼ばれる充電器の形。BYDももちろんこのGB/Tプラグを採用しているので、街中にある他の中国メーカーの充電器でもBYDの電気自動車を充電できて便利。

もちろんBYDはPHVだけでなく、100%電気自動車も作っている。前面からの写真は撮り忘れたが(汗)、背後から見るとちゃっかり排気口が無くなっている。

またBYDは元々電動バス等も作って来たため、電動化は乗用車だけでは留まらない。左(緑色)が電動小型トラックで、右(茶色)が電動清掃車である。写真からは見えないが、右(茶色)の車両の底には落ち葉等を掃くためのブラシが付いている。清掃車のように低速で走るのはガソリン車よりEVの方が得意なところ。しかし一方で長距離用の電動大型トラックは見受けられなかった。長距離走行はバッテリー容量等の技術的問題がまだ残っているのだろう。

BYDは自動車企業というより、もっと大きな枠組みで捉えるとエネルギー企業であって、蓄電器なども製造している。電動バスやEVに使用してヘタったバッテリーは回収して、こういった自社の蓄電器に再利用しているとのこと。頭良い。

次はちょっと深圳市から離れてお隣の広州市へ。中国のテスラと呼ばれている(うちの1つの)Xpeng Motorsに見学しに行ってきた。Xpeng Motorsは2014年に創業されたばかりなのに既に100%電気自動車SUVを市場投入している。まだ1モデルだけだが、非常に開発スピードが早い…(ちなみにTesla Motorsは2003年創業)。ちなみに外見はテスラのModel Xに似ているがドアは普通の4ドアで、ファルコンウィングではない(笑) さすがにそこまで真似する必要と時間はないと判断したのだろう。

左(赤色)が試作機で、右(白色)が最終版。創業して最初の2, 3年は試行錯誤の繰り返しだったそう。例えば充電口の位置も、

左(赤色)の試作機:車前方のエンブレムの所
 ↓
右(白色)の最終版:助手席ドアのちょっと前
※中国では左ハンドルなので右前が助手席

に変更されている。

後ろ姿はもっとわかりやすく違っている。ちなみに中国ではSUVタイプが一番需要高いため先にSUVから作っているが(他の2014年創業のEVベンチャーも同じくSUVから作っている)、この隣には現在開発中のセダンモデルが停まっていた(写真NG)。

運転席には最近のEVと同じくタブレットが設置されていて、音楽、カラオケ、ゲームといったエンタメ機能が豊富に用意されていた。完全な自動運転が実用化された時の、車内での暇な時間をどう使うかといった点にもちゃんと着目している表れだと感じた。

そしてXpeng Motorsと言えば車上部に取り付けられたこの360°見渡せるカメラ。運転席のタッチパネルからぐるぐる操作できて、運転席にいながら外部の状況をほぼ360°見渡せると言う機能(正確には1周は回らず、-170°〜+170°くらいの間でしか回らない)。実際に触って使ってみたが、タッチパネル上での操作への追従にはタイムラグがあり、残念ながら僕にはこれといった使い道が見当たらなかった…。幸いこのカメラはオプションなので、僕だったらこのカメラは外すだろう(汗) もしかしたらこれも完全自動運転になった時を見据えての機能であって、ドライバーが暇してる時に外の景色を見るためなのかもしれない(?)

自社敷地内にはちょっとしたテストコースも設けていた。白線や道路標識とかは、自動運転モードでの認識機能のテストに用いているのだろう。また、自動バレー駐車機能をテストするためのテスト駐車場には洗車機も併設されており、駐車だけでなく洗車機に並ぶという所も自動化しようとしていた。つまり自動バレー駐車だけではなく、自動バレー洗車&駐車。ふむ…自動バレー洗車はどちらかと言うと一般消費者より、車両管理が大変になるWaymoみたいな自動運転タクシー会社の方が喜びそうな気がする。

見学を終えて広州の街中を歩いていると、早速Xpeng Motorsの充電ステーションに遭遇。体感的には日本で言うと、コンビニとまでは言わないがスタバくらいの間隔でEVの充電ステーションが設置されている。もっと多くなるに越したことはないが、「ちょっとスタバでプラペチーノ飲も」くらいの感覚で充電できるのであれば、EVを購入する際の抵抗にはならないだろう。特にアーリーアダプターにとっては十分である。

Xpeng Motors も中国国内統一規格のGB/Tプラグを用いているので、他のメーカーのEVも堂々と充電していた。

2. Autonomous: 自動運転化

実は深圳には有名な自動運転スタートアップはRoadstar.aiという1社しかなく、今回は見学のアポが取れなかった。中国の有名な自動運転スタートアップは大体北京か、もしくはお隣の広州が本拠地である。しかし深圳には、自動運転の重要センサーであるLIDARの有名メーカーがある。それが今回見学にお邪魔したRobosense(2014年創業)である。

中国の大体の自動運転スタートアップや自動運転プロジェクトではこのRobosense社のLIDARが使用されていて、中国国内では圧倒的なシェアを誇る。ちょっと前までは自動運転のLIDARと言えばVelodyne社一色だったが、そのあまりの値段の高さ(1個で1千万円超え!)に対処するべく今は世界中で色々なLIDARベンチャーが 立ち上がっている。例えば中国のRobosenseの他にはアメリカのLuminarやイスラエルのInnovizなどがあり、これらのLIDARベンチャーに共通している目標は「LIDARのコストを安くして大量生産すること」である。それを可能にする技術ブレイクスルーの一つがSolid-State LIDARと呼ばれる、クルクル回転しない固定式LIDARの台頭である。

従来のLIDARはクルクル回って360°全部見渡ために構造が複雑で、故に耐久性が低く、かつ大量生産が困難で値段が高かった。そこで固定式LIDARはカメラのように前方しか見れないが、構造が単純になり大量生産が容易になると期待されている。Robosenseも最初は従来の回転式LIDARから始まったが、つい最近最新の固定式LIDARを発表していたので(これまた開発スピードが異常に早い…)、見せて頂いた。

ショーケースに入れらた最新製品のRS-LiDAR-M1。CES2019で発表されたばかりのもの。更にRobosenseの優しいエンジニアさんが実際に屋外で使ってみてくれた。

十分細かく取れている。人間も運転するとき大体前しか見てないので、僕自身はこの固定式LIDARに物凄く可能性を感じている。きっと次のLIDARのスタンダードになるだろう。左右と後方のそれぞれにも追加で固定式LIDARを設置したとしても、360°見渡せるデカい回転式LIDARを1個設置するよりは安く済むだろう。

最後に広州の有名な自動運転スタートアップのWeRide.ai(2017年創業)を紹介する。創業してたったの1年半で広州での自動運転タクシーサービスをローンチしたほど開発スピードの早い企業である。

見学しに行った時はもう既に時間が遅かったのでWeRide.aiの自動運転車を見せて頂くことはできなかったが、一番印象的だったのは、話をしてくれたエンジニアの方が非常に活気よく自社のビジョンと将来性を語っていたことである。そのエンジニアは創業メンバーではなく途中からジョインしたメンバーの1人だったが、そんな彼がこうも目を輝かせて語っているということは、しっかり全社員が同じゴールを共有し社内の隅々までビジョンが浸透している証拠だと感じた。彼曰く、エンジニアの面接でコーディングテストの前に志望動機などを聞く電話面接があり、彼の時はその電話面接が2時間半にも及んだそうだ。単なるスキルだけでなく、カルチャーフィットも非常に重要視しているということだ。

ちなみにWeRide.aiは広州の孤島の、高級コンドミニアムの一角に備わっていた。そしてなんと社員はその高級コンドミニアムの一部屋を住居として提供して貰えるとのこと…! WeRide.aiの公式HPでBAT以上の福利厚生と謳っていたが、それはあながち間違ってなかった…

 
執筆: この記事は川西発之 / 陳発暉 さんの『note』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年7月18日時点のものです。

—— 面白い未来、探求メディア 『ガジェット通信(GetNews)』

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