7日目まで休場だった尊富士が大銀杏で登場し十両で圧勝!中日を終え、照ノ富士が迫力の横綱相撲で単独8連勝。2敗は琴櫻、正代、美ノ海
2024年7月22日(月)14時0分 婦人公論.jp
7月14日、猛暑と荒天のなか、大相撲名古屋場所が、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で始まった。中日を終え、この後はどんな展開になるのか?『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
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前回「大相撲名古屋場所、北の富士さん久々登場も、大関の全滅は悲しい…。期待の新関脇・大の里が元大関の御嶽海に敗北。照ノ富士は苦戦の勝利」はこちら
横綱・照ノ富士が8連勝
大相撲名古屋場所は中日8日目を終え、横綱・照ノ富士が豪快な強さと対戦相手を考えた聡明な取り口を見せて8連勝で独走している。2場所連続途中休場、稽古不足のせいか初日に落ちていた胸の筋肉への心配も何処へやら。仕切り中の真っ赤な仁王顔も復活しての連日の横綱相撲だ。8日目は、照ノ富士よりも体重が14キロ重く、身長が2cm高い前頭5枚目・湘南乃海を押し出した。照ノ富士が目標とする10回目の優勝と名古屋場所での初優勝を実現してほしい。
まだ8日目なので他の力士の奮闘も期待したい。
2敗で追うのは、大関・琴櫻、前頭10枚目・正代、前頭12枚目・美ノ海の3人。先場所、史上最速の初土俵から7場所で優勝した関脇・大の里は、初日から2連敗してどうなることかと思ったが5勝3敗で、前進力が戻ってきた。
8日目は大関の琴櫻、豊昇龍、貴景勝ともに勝ったが、豊昇龍は5勝3敗。カド番の貴景勝は懸命に相撲を取っているが白星につながらず3勝5敗で心配だ。もう一人心配なのが、関脇に陥落した霧島で、10勝すれば大関に戻れるのだが4勝4敗だ。霧島は初日から3連勝して強さが復活したと思ったら失速し、8日目は貴景勝に押し出された。
貴景勝と霧島は「頸椎を痛めている」と実況のアナウンサーがたびたび話している。私も子どもの頃から頸椎が悪いので、以前かかっていた整形外科の医師に、「力士と頸椎」について聞き、よくぞ相撲が取れるものだと思い、二人を応援している。
前頭7枚目・佐田の海が、かなり前のインタビューで「いつも相撲のことばかり考えているので」と話していた。私も頭の中にいつも大相撲があるので、私の診察と関係ないのに大相撲のことを聞いてしまうのだ。
土俵上での怪我
8日目の感動は、春場所に110年ぶりの新入幕優勝を果たしたが、7日目まで休場していた尊富士が登場したことだ。出世が早くて髪が伸びるのが間に合わず、ちょん髷で優勝杯を手にしていたが、8日目は大銀杏だった。
尊富士は、春場所14日目の相撲で右足首の靭帯を伸ばしてしまい救急車で運ばれたが、同部屋の照ノ富士に励まされて千秋楽は強行出場。勝って歴史的な優勝を果たした。しかし、次の夏場所は全休し十両2枚目に陥落した。名古屋場所は7日目まで休んでいた。尊富士は痛めた右足首にテーピングがあるが、6勝2敗で好調の十両筆頭・阿武剋に完勝した。
怪我といえば、元大関で大人気の前頭12枚目・朝乃山が、4日目に前頭11枚目・一山本に押し倒され、土俵から立ち上がれず車椅子で花道を引き揚げた。左膝前十字靭帯断裂などの大怪我で2ヵ月の休務加療を要し、復帰までに半年かかるといわれている。4月下旬の春巡業で右膝関節内側側副靭帯を痛めて夏場所は全休し、小結から前頭12枚目に落ちた。名古屋場所は3連勝していたので、この土俵上での大怪我は残念すぎる。以前あった土俵上での怪我に対する公傷制度があったらよいのにと思った。
一山本は若隆景の大ファンで若隆景グッズを集めまくり、仲良しの朝乃山に手伝ってもらい、そのグッズを紹介するYouTubeは何度見ても面白い。勝負の世界とはいえ、一山本も朝乃山が気がかりだろうと心配だったが、7月19日の『スポーツ報知』の大相撲欄に一山本の談話があり、「17日の午後8時頃にLINEで連絡。朝乃山からは「あとは頑張れ」と返信があったという」とあり、私は少し安心した。
弥生美術館と竹久夢二美術館
ところで、私は大相撲とは無縁のところに行き、大相撲と出会ってしまった。
名古屋場所が始まる前の7月9日に、東京都文京区弥生2‐4‐3にある弥生美術館と竹久夢二美術館へ鑑賞に行った。弥生美術館では「開館40周年 生誕祭!大正ロマン・昭和モダンのカリスマ絵師 高畠華宵(たかばたけ・かしょう)が伝えてくれたこと」、竹久夢二美術館では「生誕140年記念 竹久夢二の軌跡」を開催している。
都会の小さな美術館と言える建物に入ると、外の猛暑を忘れ、都会の喧騒も忘れ、己の煩悩も忘れて、高畠華宵の描く美しい人々の世界に引き込まれた。弥生美術館は、少年の頃に華宵の絵に感銘を受けてファンとなった鹿野琢見(両美術館の初代理事長)が、私財を投じて自宅敷地内に建てたことを初めて知った。
隣接する竹久夢二美術館では、竹久夢二は画家であり詩人でもあり、「夢二式美人」を描き、理想の美を追求していたことをじっくりと学んだ。
疑問があり、学芸員さんに質問する中で、私が大相撲の原稿を書いていることを話した。すると学芸員さんが、鰭崎英朋(ひれざき・えいほう)という明治から昭和にかけて活躍した画家が、美人画だけでなく相撲絵も得意としていたことを教えてくれた。
弥生美術館には相撲絵ではない鰭崎英朋の作品が少しあったので見ていると、学芸員さんが『妖艶粋美—甦る天才絵師・鰭崎英朋の世界』(国書刊行会、松本品子著)という画集を持って来て見せてくれた。そこには、現在の人気力士である遠藤のような美しい力士の絵があった。
この美術館ではその画集は販売していないので、インターネットで検索したら鰭崎英朋の『相撲四十八手』という本も出てきた。大正ロマンと美人画を堪能できる美術館で、私は大相撲に出会えたことに深く感動し、学芸員さんに感謝した。
※「しろぼしマーサ」誕生のきっかけとなった読者体験手記「初代若乃花に魅せられ相撲ファン歴60年。来世こそ男に生まれ変わって大横綱になりたい」はこちら
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