親が大地主なら将来安心?相続税55%の可能性も…不動産鑑定士が教える、土地を受け継ぐときの注意点

2024年7月22日(月)17時0分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

プロと一般人では持っている情報量の差が圧倒的な不動産情報。国家資格である不動産鑑定士の資格を持つ泰道征憲さんと、同じく資格保有者でYouTuberとしても活躍する中瀬桃太郎さんが書いた、不動産リテラシーが分かる『悪魔の不動産鑑定』。身近な不動産問題がいかに「怪しく」、一方でいかに「魅力的」なのか…。今回は本書より、「俺の親父が大地主」についてご紹介します。

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俺の親父が大地主


皆さんは「地主」と聞けば、どのような印象をお持ちでしょうか。資産家、お金持ちといったイメージでしょうか。

地主とは、土地の所有者のことを指しますが、一般的には所有する土地を貸し出して地代収入を得ている人のことを言います。

歴史を紐解けば、奈良時代の「墾田永年私財法」(農民が開拓した土地に、永久に所有を許可するという法令)に始まり、明治時代の地租改正をきっかけに「寄生地主」(地主が所有地を小作農民に貸し付け,小作料を徴収する農業経営形態)が進展しました。

このような歴史の中で現代においては、地主=資産家、お金持ちといったイメージが定着しています。ただし、土地にはやはり格(=価値)の差が存在するので、実際はピンキリと言ってもよいでしょう。

土地の相続税は高額になるケースも


よく、3代で資産がなくなるなんてことを耳にします。初代が築いた財を苦労知らずの2代目3代目が使い果たすといった一種の教えですが、現代の地主においてもそれは当てはまります。

主な要因は相続税です。相続税の税率は一定ではなく、遺産の金額に応じて高くなる、いわゆる「累進課税制度」であり、その最高税率はなんと55%!(遺産金額6億円超)控除額はありますが、6億円を超える規模の相続を繰り返すと、単純に半分ずつ資産が減っていきます。

とくに大地主の場合、持っている土地も高額となるため、億単位の相続税を支払うこともあります。その際、潤沢な現金資産がないと相続税を支払うことができないので、泣く泣く土地を売り払い、売ったお金で相続税を支払うといったケースも少なくありません。

ですので、大地主は相続税対策をするわけです。所有している土地にアパートを建てたり、生前贈与をしたり、養子縁組をしたりなどなど。

また、地主は不動産業界で働いていないと、なかなかお目にかかれません。そんな謎めいた地主について、ここで小耳に挟んだ地主のとんでもない事例をご紹介します。

地主だからできること


地主は名士として、その地域で知れ渡っていることもあり、業界団体の役職に名を連ねていたりすることもあります。例えば、とある駅前の大半の土地を所有している地主は、自分の土地に地下鉄の出口を設けるため議員等のコネクションを使ったりなど、そんな噂も耳にします(もちろん、極々一部の地主の話です)。

ここで終わると地主がドラマに出てくるような悪者にしか見えないので、良い話も。弊社(一般社団法人桃太郎オフィス)は不動産相続を専門分野としているため、地主とかかわる機会が多いのですが、地主ならではのお悩みが多く、感心させられることがあります。具体的にどのような相談があるのか、かいつまんでお話ししましょう。

「金持ち喧嘩せず」を体現したような事例


遺産分割の際に実家の不動産を評価すると5億円程度でした。その実家は長男が丸々引き継ぐという話になっていたそうです。相続は3兄弟で分割することになっていたので、長男が実家を弟と姉から土地の持ち分を買い取る話をしたところ、弟と姉は「兄ちゃんが引き継ぐ土地なんだから、お金なんてもらえないよ」と言われたそうです。1.7億円(5億円÷3人兄弟)をいらないよ。なんて私は絶対言えません……。

支え合いの資産家


とある会社が倒産した際に、その社長が軽井沢の別荘(4,000万円程度)の売り先に悩んでいたそうです。そんな時、社長の娘の旦那様(上場企業の役員)が「今までお世話になりっぱなしだったので私に買わせてください」といって、現金で別荘を買っていきました。我々は不動産を購入する時に値上がりするかどうかを気にしながら選んでいるので、何も気にせずポンと買える器の大きさが資産家になる秘訣なんだと遠い目で見ておりました。

大地主だからこそ、対策しなければ…


ここがつらいよ地主


地主の中には資産が多くあるけど、定期的な収入があまりないことがしばしばあります。

例えば都心の土地を複数持っているが、実家が建っていたり、駐車場として貸しているというケースです。この場合、土地の資産(価値)としては数億円に及びますが、収入は微々たるものとなるため、通常はアパート建築する等して収入を増やすことが多いです。こういった土地の運用方法に関するご相談は弊社の得意分野なので、賃貸需要などを分析のうえ、問題なければ「経済的観点からはアパート建築した方がいいですよ」とアドバイスするのですが、「アパート建築するのに借金をしたくない」だったり、「変化したくない」人も一定数いらっしゃり、結局そのままにしている地主様も……。

※これらはお客様から許可を得ており、弊社お客様の話を勝手に他に漏らすことはありませんので、ご安心ください。

こういった方を見ていると、まだまだ私は未熟だなと感じさせられます。子どもの頃は海賊王に憧れていましたが、今は大地主に憧れながら仕事をしています。

結論:大地主の家系でも、何もしなければ土地は売る羽目になる。

要点(1)
相続税は累進課税制度。

要点(2)
大地主はアパートを建築したりして相続税対策している。

要点(3)
特権を濫用する地主もいれば、心に余裕を持った地主もいる。


『悪魔の不動産鑑定』

※本稿は、『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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