あなたはあなたが思うよりずっと大きい【ジェーン・スー コラム】

7月23日(火)16時0分 NEWSポストセブン

『女に生まれてモヤってる!』が話題のジェーン・スーさん

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「読んでラクになった!」「モヤモヤが共有できて、猛烈に感動した」など話題を集めているコラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さんの対談集『女に生まれてモヤってる!』。同書の中からジェーン・スーさんのコラムを紹介します。


 * * *

 アメリカを代表するアーティストのビヨンセは、2018年のコーチェラ・フェスティバル(アメリカで行われる大規模野外音楽祭のひとつ)でアフリカ系米国女性として初めてヘッドライナー(大トリ)を務めました。2時間に渡るライブでは自分たちの文化の力強さと美しさを余すところなく伝え、女性に誇りと力を与える素晴らしいパフォーマンスを行いました。Netflix でリハーサルも含めたライブ映画『HOMECOMING』が観られるので、ぜひ観てください。勇気づけられること間違いなしです。


 ライブのモノローグパートで、「以前は、黒人女性として私が小さな箱の中にとどまっていることを世界から望まれているように思っていた」とビヨンセは語りました。私はアジア人ですが、小さな箱の中に収まっていることを望まれる感覚はわかります。出しゃばり過ぎないとか、目立ち過ぎないとか、言いたいことを言い過ぎないとか、そういうことです。


 子どもの頃から、感じた通りに動くと、それはいつも「過ぎる」状態として捉えられていました。フル出力でやりたいだけやったら、誰かを傷つけたり嫌な思いをさせたりしそうな不安が常にあったのです。実際、人の心を傷つけたこともたくさんあります。力も強かったので、意図せず友人に怪我をさせるようなこともありました。ごめんなさい。


 言葉が乱暴だったり言い方がきつかったり力の加減がわからなかったりと、コミュニケーションの方法に難があったことは認めます。しかし、私が男だったら同じように感じたかはわかりません。本当の私はもっと大胆だし、もっと大きな声が出るし、足を踏み鳴らして動きたい。体だってぐるんぐるん動かしたい。もっともっと、私が感じたことを表現したい。でも、そうしたらギョッとした顔をするんでしょう? おかしな子だって笑うんでしょう? あまりにもみんなと違うからって。


 


 あなたはどうですか? もっと大きな声で笑ったり、好きなときに歌を歌ったり、踊ったり、思うことがあるときは意見を言ったりできるのではないですか? あなたらしさを、誰かにたしなめられて引っ込めたことはありませんか? 野望や野心とまではいかなくても、自力で叶えたい夢や希望はないですか? 私はそういうタイプではないと、勝手に思い込んではいませんか? もう若くはないと、限界を自分で決めていませんか? 他者の機嫌を損ねないこと、周囲とうまく馴染むこと、気を回してリーダーのよきサポーターとなること。これらは本来、誰かの庇護のもとでなければ生きていけない人が採る手段です。あなたはどうでしょう。誰かの支配下になければ本当に生きられませんか?


 ジャストフィットな生き方を探そうとすると、無意識に自分を小さくまとめようとする人がいます。それはちょっと危険です。自ら小さな箱に入っていくようなことは、しなくていいのだから。思い込みを取っ払って、大胆に自分のサイズを把握してから、余分な部分をそぎ落としてもいいんです。小さくてきれいな箱に収まって、誰かに選ばれるのを待たなくていいんです。私には価値があると、誰かに証明し続けなくていいんです。意味のない我慢を、自分に強いなくてもいいんです。


 自分の欲望をなめるな。普段はひた隠しにしても、その炎が消えることはありません。隠せば隠すほど胸の奥でくすぶり、自由闊達に生きる人を恨めしく思い続ける燃料になってしまう。それはあまりにも悲しい。


 まったくもって無責任なことを言いますが、欲望を口に出してみてはいかがでしょう。紙に書き出してみるのもいいかもしれません。すべてから自由になれたら、何がしたい? 来年から二年間だけ違う場所で生活するとしたら、どこに住みたい? 年齢や容姿に囚われなければ、どんな服が着てみたい? 


 そんなことをしたって虚しくなるだけ? 本当にそうでしょうか。小さな箱に自分を押し込めているのは、自分自身だってこともある。もっとふてぶてしくなってください。欲望を口にして、いつも尽くしている相手を困らせてみてください。一蹴されてもめげずに、だからどうしたと開き直ってみてください。大事なことなのでもう一度言いますが、誰かに「私にふさわしい相手」として選ばれなくてもいいんです。


 夢を口にしたって叶うとは限りません。でも黙っていなくてもいい。


 若い頃、私は誰かにそう言ってほしかった。でも誰も言ってくれなかったから、今自分で言いました。

NEWSポストセブン

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