トヨタの変化を感じられる? 東京2020大会に向け車両とロボット開発

7月24日(水)8時0分 マイナビニュース

東京2020オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーであるトヨタ自動車は、大会をサポートするモビリティおよびロボットの発表を行った。自動車メーカーという枠を超えた意欲的な内容で、トヨタがモビリティカンパニーへの転身を本気で目指していることが伝わってきた。

○モビリティは1台、ロボットが4台?

トヨタは2015年、国際オリンピック委員会(IOC)および国際パラリンピック委員会(IPC)との間で、2024年までのワールドワイドオリンピック・パラリンピックパートナー契約を締結した。車両、モビリティサービス、モビリティサポートロボットなどのモビリティ分野でサポートしていくという内容で、もちろん2020年の東京大会も対象に含まれる。

では、トヨタはどのような形で大会に関与するのか。7月18日に発表された内容を見ると、自動車メーカーのトヨタであるにもかかわらず「車両」は1台のみで、それ以外は「ロボット」で占められていた。

トヨタの豊田章男社長は2018年、「自動車業界は100年に一度の変革期にある」と述べ、トヨタを「カーメーカーからモビリティカンパニーへ転換していく」と宣言。無人運転シャトルの「e-Palette」(イーパレット)を発表した。その流れが今回の発表にも息づいていた。

さらに、トヨタは自身が思い描く未来のモビリティの姿として、「Mobility for All」(すべての人に移動の自由を)というフレーズを使っている。オリンピックやパラリンピックをサポートするのも、この気持ちからだという。この概念に沿って、今回はリアルな移動だけでなく、バーチャルな移動、そして人の気持ちの移動という領域にまで踏み込んだとのことだ。

ロボットについては「T-HR3」「マスコットロボット」「T-TR1」「FSR」を紹介した。このうち「T-HR3」は2017年11月に発表済みであり、トランペット演奏、バイオリン演奏に次ぐ、第3世代のヒューマノイドロボットとしている。

T-HR3は両手に10本の指と32個の関節を持つロボット本体と、人間が装着するマスター操縦システムからなる。T-HR3は片足立ちなどのさまざまな動作ができるロボットであり、マスター操縦システムの操縦者とシンクロした動作も可能となっている。

例えば、球技で使うボールをT-HR3が持つと、まず操縦者は、その手触りを感じられる。手を動かせば、T-HR3が持つボールを回したりもできる。T-HR3を通じてアスリートと握手をし、その感触を味わうことも可能だ。

今回はこのT-HR3に加え、東京2020大会のマスコットである「ミライトワ」と「ソメイティ」のロボットを開発した。このロボットは手足を動かせるほか、鼻の部分に内蔵したカメラで目の前の人間を認識し、目の表情でさまざまな感情を伝えることができる。

さらに、離れた場所にいるマスコットロボット同士で腕の動作や力の感覚を共有することも可能であり、マスコットロボットをコントローラーとしてT-HR3を操作することもできる。これらのロボットを媒介させれば、映像や音声だけでなく、握手や会話などでもアスリートたちと触れ合うことができるだろう。

マスコットロボットは「最もイノベーティブな大会を目指す」という東京2020組織委員会の声に応えたもの。小柄な上にフォルムを変えないことが決まっていたので、開発は大変だったそうだ。

「T-TR1」はトヨタが米国に開設した人工知能や自動運転の研究開発拠点「TRI」(Toyota Research Institute)と共同開発した遠隔地コミュニケーションロボットだ。

縦長のディスプレイには、遠隔地にいる人の全身を映し出し、双方向のコミュニケーションを可能とする。T-TR1自体の移動は、ガイドの追従あるいは遠隔操作による自動走行の双方で検討中だという。遠隔地にいる人はT-TR1を通じて現場を見て、動き回って、現地の人とコミュニケーションをとることで、現場にいるような臨場感を味わえる。最高速度は電動車いすと同じ時速6キロとしてあり、デモンストレーションでは旋回や点字ブロック通過もスムーズにこなしていた。

これら3種類のロボットは、離れた場所にいる人たちが、このロボットを通じて現地と何かを共有したり、現地にいるような臨場感を体験できるというコンセプトを共有している。さまざまな理由で移動できない人たちの、移動したいという気持ちに応えることを目指したものだ。確かに、「気持ちの移動」という領域にまで踏み込んだ技術であり、オリンピック・パラリンピック以外でも活用が期待できそうだ。

もうひとつのロボットである「FSR」は、陸上のフィールド競技をサポートするもの。投てき競技のハンマーや槍などの回収を行う。従来はラジコンを使う例が多かったが、FSRは係員に追従して回収場所まで向かい、格納が終わると自動運転で戻ってくる。

自動運転に必要な地図はあらかじめ読み込んでおく予定。車両にはカメラ、LIDAR(レーザーセンサー)、人工知能、GPSを搭載。人との衝突も回避できる。こちらは競技場だけでなく、工場での使用も想定しているとのことだった。

このFSRにもタイヤが付いているので、無人運転トラックと捉えることもできるが、今回の発表の中で唯一、人の移動のために開発されたのは「APM」という車両だ。
○ラストワンマイルを埋めるための意欲作

「アクセシブル・ピープル・ムーバー」(Accessible People Mover)の頭文字を取ったこのAPMは、最近は「ラストワンマイル」と呼ばれることが多い近距離移動のための乗り物だ。オリンピックやパラリンピックでは、高齢者や身障者、子供連れ、妊娠している人たちに対し、セキュリティゲートから観客席までなど、近距離の移動手段を提供することを想定しているようだ。

前回のリオデジャネイロ大会を視察し、車いす移動支援などの乗り物が必要と考えたトヨタは、IOCやIPCとの協議の中でアイデアを出し、APMの企画をまとめ、1年半ほど前に開発を始めていたという。その過程では車いす利用者に試作車に乗ってもらい、意見を聞いたりもした。

画像で紹介する基本用のほかに、ストレッチャーを格納できる救護用のAPMも用意する。今後はさらなる改良を施した上、基本用を150台、救護用を50台程度生産し、2020年に送り出すとのことだ。

開発を担当したトヨタの谷中壯弘氏は、2013年に発表したパーソナルモビリティ「i-ROAD」を手掛けた人でもあり、2020年に発表予定の2人乗り超小型電気自動車(EV)などにも関わっている。APMには超小型電気自動車のパワートレインを活用している。

APMを観察してみると、運転席は乗客の確認や乗降サポートなどをしやすいよう中央に置かれており、車いす用スロープは床下に格納するなど、独創的な設計が随所に盛り込まれていて使いやすそうだ。乗客スペースは3+2人掛けで、3人掛けは車いす利用者乗車時は折り畳む。デモンストレーションでは、スムーズな乗り降りが可能であることを確認できた。

このAPM、当面はオリンピック・パラリンピックのための車両となるが、大会後は過疎地や観光地への転用が期待できる。オリンピック・パラリンピックについてはレガシー、つまり社会的遺産を残せるかどうかが重視されているが、トヨタの発表内容には将来を見据えたものが多く、2020年以降の活躍にも期待が持てるものだった。

マイナビニュース

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