【熱狂パリ五輪】パリで唯一採用された「ブレイキン」でメダルに輝くのは?世代も足取りも様々な4人が五輪に挑む
2024年7月26日(金)8時0分 JBpress
文=松原孝臣
「一歩踏み出す勇気」
パリオリンピックで唯一採用された新競技の「ブレイキン」。都会的なダンスとして、1970年代にアメリカで生まれ、流行したのが始まりだという。
やがて国際大会が開かれるようになり、競技としての広がりも見せていった。
オリンピックでは男女各1種目を実施。それぞれ16名のダンサーが出場する。
選手は1対1で対戦(バトルと呼ばれる)、5人のジャッジが採点して勝敗を決める。
バトルでは一方が最大1分間のパフォーマンスを行い、続いてもう一方がやはり1分間のパフォーマンスで続く。これが3回繰り返される。ジャッジがみるのは「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の5つ。この基準に基づいて判定する。
ブレイキンで特徴的なのは、音楽とともにパフォーマンスを披露するのだが、その音楽はDJがその場で選曲して流す点にある。つまり、即興で合わせてパフォーマンスしなければならないということが他の音楽を用いる競技との違いとしてある。
また、いかにその選手ならではのスタイルを持っているかを示せるかどうかも重要とされる。
大会は、まず4名ごとに分かれたグループで1対1のバトルが総当たりで行われ、各グループの上位2名がトーナメントに進出。準々決勝〜決勝と進行する。
日本は数々の国際大会で好成績をあげてきたことが示すように、ブレイキンの盛んな国の1つにあげられる。
パリオリンピックでも、男女ともに表彰台に上がる力を持った選手がそろう。
男子は「Shigekix」こと半井重幸と「Hiro10」こと大能寛飛が日本代表として出場する。
日本のエースである半井は7歳のときにブレイキンを始め、十代から数々の大会で活躍してきた。2018年、16歳で出場したユースオリンピックで銅メダルを獲得。2020年、国際大会「Red Bull BC One World Final」で優勝し、世界選手権では2022年に銀、2023年に銅メダルに輝いた。
スピード感のあふれる技や音楽とマッチしたダンス、難易度の高い技と、高いレベルのパフォーマンスを見せる。
半井は、パリオリンピック日本選手団の旗手を、フェンシングの江村美咲とともに務める。
「ブレイキンでは、『一歩を踏み出す勇気』が勝敗を分けることが多々あります。これまで多くの挑戦と失敗を繰り返し、そのたびに『一歩を踏み出す勇気』を持ち続けることで成長してきました。応援を一歩踏みだす勇気に変え、感謝の気持ちを込めて競技に挑みます」
と抱負を語っている。
大能は19歳と今回の男女4名の代表の中で最年少。迫力ある回転技やスムースに進行する動きを特徴として持つ。
今年になって成長を続け、全日本選手権で2位、パリオリンピック予選シリーズの第1戦で3位、第2戦で6位に入り、オリンピックの切符をつかんだ。
「自分ならではのダンスを」
女子は「AMI」こと湯浅亜実、「AYUMI」こと福島あゆみが出場。
湯浅は流れるように途切れることのないダンスが特徴で、即興で流される音楽を捉えて曲に合わせて表現し、さまざまな技をこなせる。2018年、「Red Bull BC One World Final」の初代王者となり、2019、2022年の世界選手権で優勝。昨年は「Red Bull BC One World Final」で2度目の優勝を飾っている。
福島はさまざまなオリジナル技を生み出し、独創性が光る。
技もさることながら、福島が紹介されるときに語られるのは年齢だ。
「スポーツとしての大会に出るダンサーの中では、年齢はいちばん上です」
という福島本人の言葉の通り、10代をはじめ若い世代の活躍が目立つ中、福島は41歳。しかも21歳から始めたという点でも異色だ。それでも「自分ならではのダンスを」と打ち込み、今日がある。
福島も国際大会で数々の実績を持ち、2021年の世界選手権で優勝し、昨年の世界選手権でも銀メダルを獲得している。
つまりは世界のトップを狙える2人が日本にはそろっている。
世代もこれまでの足取りもさまざまだが、共通するのはブレイキンへの愛着と情熱だ。初めてオリンピックで採用されたパリでブレイキンの魅力を伝えたい、そんな使命感とともに大舞台に挑む。
筆者:松原 孝臣