25年ぶり公式戦で大激闘、杉村太蔵が目指す「世界一のテニスプレイヤー」とは

2023年7月27日(木)6時0分 JBpress

 コメンテーターとして活躍する元衆院議員の杉村太蔵さんが、100年以上の歴史を誇るテニストーナメント「毎日テニス選手権(通称:毎トー)」(毎日新聞社主催)に挑戦した。高校時代は国体で優勝するなど輝かしい実績を誇る杉村さんだが、その後は競技から遠ざかり、25年ぶりの公式戦出場となった。

 ベテランの部(40歳以上男子シングルス)にエントリーした杉村さんは、7月3日に行われた第1回戦で安田智昭選手(NTTドコモ)と対戦。第1セットを0-6で落としたが第2セットを6-3で取り返し、最終セットの10ポイントマッチタイブレークに突入する。0-5から巻き返しを見せたものの、あと一歩及ばず7-10でタイブレークを落とし惜敗した。

 今回の毎トー挑戦は杉村さんにとってどんな意味があったのか。今後目標とする理想的なテニスライフとは? 杉村さんに話を聞いた。(鶴岡 弘之/JBpressシニアエディター)


25年間の社会人経験が試合に活きた

──安田選手との試合は第2セットから見事な巻き返しでした。試合前に「勝負は第2セット」と言っていましたが、その通りの展開でしたね。

杉村太蔵氏(以下、敬称略) 1セット目というのは相手のボールになかなか慣れないし、僕もずっと試合に出ていませんでしたから体もあまり動かないだろうなと。だから第2セットからが勝負だと思っていました。

──実際に2セット目から見違えるようなプレーになりました。

杉村 25年間、試合には出ていませんでしたけど、その間の社会人経験というのも活きたと思うんですよ。

 10代、20代のときなら、ファーストセットを0-6で落としたら、もう厳しいかなとあきらめてしまっていたでしょうね。それを、どこかで勝機を見つけよう、挽回しよう、という気になれたのは、社会人の経験があったからこそだと思います。25年の間にいろいろなことがありましたけど、けっして無駄にはならなかったなと感じています。

──テニスの試合も、山あり谷ありなんですね。第2セットに入ってから、自分のプレーを何か変えたのですか?

杉村 いいえ、変えていません。ただ僕のプレーの精度が良くなってきたというのはありますね。サーブも良くなりましたし。

──最終セットのタイブレークの途中で、安田選手の足がつってしまいました。あのときはどう思いましたか。これで勝てるとは思いませんでしたか。

杉村 相手の足がつるというのは、自分にとってあまり関係ないですね。テニスでああいう場面はいっぱいありますから。安田選手の足に意識がいくということは、特にありませんでした。ただ自分のプレーを続けようと思っただけです。僕のテニスは完全にサーブアンドボレーなので、それを貫こうということだけ考えていました。


「世界一のテニスプレイヤー」は誰か?

──試合前のインタビューで、これまでの人生のなかで今一番体調がいいとおっしゃっていました。毎トーに出るという目標ができてから、体にどんな変化がありましたか。

杉村 試合に向けて約1年トレーニングを続けたことで、体重がかなり減りました。日常生活においても、大会があると思えば食事もお酒も節制しますし、毎日ストレッチをやったり、いいこと尽くしでしたね。

 加えて今回とてもよかったなと思うのは、いろいろな人にコーチについてもらったことです。テニスの技術面はもちろん、フィジカルの面でもコーチしてもらいました。すごく勉強になったのは、「大きなケガ」をしないのが大切だということ。小さいケガはつきものなので仕方がありません。では、どうすれば大きなケガを避けられるかというと、柔軟性がすごく大事なんですね。

 とくに年齢を重ねると、強い筋肉ではなく柔らかい筋肉を維持することが重要になります。その意味で、ベテランプレイヤーは筋トレよりもストレッチのほうがはるかに大切だということです。

 僕は、世界一のテニスプレイヤーはフェデラーでもジョコビッチでもなく、80歳、90歳でもプレーを楽しんでる人だと思っているんです。そこを目指してこれからずっとテニスを続けていくためにも、今回の挑戦は大きな転機になったし、いろいろな面で勉強になりました。


「社会人になったらやめてしまった」はもったいない

──今回の杉村さんの挑戦は多くの人の心を動かしました。安田選手との試合をネットで見て「テニスからしばらく遠ざかっていたけどまたやってみたい」「久しぶりに試合に出てみたい」という気持ちになった人が大勢いるようです。

杉村 多くの人に「自分ももう1回やってみよう」と思ってもらえたのはよかったなと思います。そもそも今回の挑戦は生涯スポーツの普及という狙いもあったんです。

 今回、毎トーに挑戦することになった直接的なきっかけは、昨年(2022年)春に伊達公子さんと対談したことです。昨年夏に第100回大会が開かれるにあたって、過去に毎トーに出場している僕に毎日新聞から「伊達さんと記念対談をしてぼしい」との依頼があり、対談をさせていただきました(編集部注:杉村さんは高校1年の時に毎トーの一般男子部門の北海道予選で最年少優勝している)。

 伊達さんといろいろな話をしているうちに、いつかまた公式戦に出たいんですよ、毎トーに出るのが夢なんですよね、と言ったら、毎日新聞の方が「ぜひ出てください」とおっしゃってくれたんです。僕のリップサービスを真に受けてしまったわけですが、生涯スポーツの普及のためにもぜひ、と言うんですね。

 日本ではどんなスポーツでも、「学生のときはやってたけど、社会人になったらやらなくなってしまった」という人がけっこう多いですよね。それはもったいなと思うんです。毎トーへの挑戦は、僕自身、もちろん試合に出て勝ちたいという気持ちもあったんですが、生涯スポーツの普及という観点から大きな意味があるなと思って挑戦させていただきました。


老若男女問わずできるテニスの素晴らしさ

──生涯スポーツとしてのテニスの魅力は、どんなところにあるでしょうか。

杉村 やはり、誰でも短時間で手軽にできることでしょうね。年をとってもできますし、おまけに野球やサッカー、バレーなどと違って少人数でできます。とくに男女が一緒にできるのは、大きなポイントですよね。老若男女問わずできるというのはテニスの大きな魅力だと思います。

 テニスを生涯続けるための環境も良くなっています。毎トーの試合会場で気づいたことがあります。肘のサポーターをしている人が昔より減っているんですよ。ラケットの性能が良くなっていることが影響しているのではないかと思います。

 今回、ヨネックスさんがラケットを提供してくれて使わせてもらったんですが、実際に昔のラケットより軽くなっているし、ボールもよく弾きます。ラケットが進化して体の負担が相当減っているなと感じました。

──毎トーにはまた参戦しますか。

杉村 はい、来年も必ず挑戦します。毎トーに限らず、こういった生涯スポーツの大会に、今後いろいろなところで関わっていけたらいいなと思います。

 地方で開催するテニス大会は、一種の地方創生にもなりますよね。テニスコートというのはどこにでもありますし、ある程度の大会だと参加者が何百人と集まりますから、経済の活性化にもつながります。そうした大会に協力していきたいし、自分自身もできる限り参加して盛り上げられたらいいなと思います。いろいろな形で生涯スポーツの魅力を伝えていきたいですね。

筆者:鶴岡 弘之

JBpress

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