【熱狂パリ五輪】史上最強といわれるフェンシング日本代表、女子サーブル・江村美咲ほか注目選手とルールをおさらい

2024年7月28日(日)8時0分 JBpress

文=松原孝臣 


フルーレ、エペ、サーブルの違い

 北京オリンピックで日本選手の活躍が期待される競技にフェンシングがある。

 フェンシングは中世の騎士の剣術がルーツとされ、フランスで生まれた。ヨーロッパで人気を誇り、また世界中に広がった競技だ。

 その構造はシンプルだ。向かい合って立った2人の選手が剣で相手の体を突いて勝敗を決める。1回突けば1点、個人戦は15点を先にとるか3分間×3ラウンドを終えて得点の多い選手が勝利となる。1チーム3人(+リザーブ1人)の団体戦は、それぞれが3ラウンドを戦い計9ラウンド。45点を先取したチームないしは終了時点で点数の高いチームの勝利となる。

 フルーレ、エペ、サーブルの3種目がある。それぞれ剣のタイプが異なりルールも違う。

 フルーレは突きのみが有効。得点になる範囲を「有効面」と言うが、フルーレの有効面は顔面と腕を除く胴体のみとなっている。2008年北京オリンピックで太田雄貴が日本フェンシング初のメダルとなる銀メダルを獲得したことで、フェンシングの中で日本でいちばん知られるようになった種目である。

 エペも突きのみが有効で、顔面から足先まで全身のどこを突いても得点となる。どこでも突いていいため、リーチの長い選手が有利だとも言われる。

 サーブルは、突きだけでなく「斬り」も認められる。そのため、ダイナミックな攻防がみられる。有効面としては上半身のみとなっている。

 もう1つ知っておきたいのは、フルーレとサーブルには「優先権」があるということ。先に攻撃を仕掛けた側が優先権を得る。攻撃された側は防御に成功すると優先権を奪える。

 優先権がどのようなときにいきるかというと、フェンシングは電気審判機により、有効面にあたればランプがつく(白ランプは無効面へのものであるため得点にならない)が、例えばフルーレで両者が突きあい、両方が相手の有効面を突いて双方にランプがついたとき、優先権を持つ方の得点になる。

 種目ごとにルールの違いなどがあるとはいうものの、最初に記したように、ゲーム自体はシンプルなもの。選手同士の駆け引き、相手をかいくぐる技術などを楽しむことができる。


「史上最強」のメンバーたち

 そしてパリオリンピックに出場する日本代表は、「史上最強」とも言われる充実したメンバーがそろっている。

 まず注目したいのが女子サーブルの江村美咲。東京オリンピックでも上位進出が期待されたが3回戦で敗退。相手はメダリストになる選手だったとはいえ、ショックは大きかった。だがそこから立ち直ると、2022、2023年世界選手権を連覇。現在も世界ランキング1位に立つ。

 日本選手団の旗手にも任命された江村は抱負をこう語る。

「東京では開会式に出なかったのでわくわくしています。正々堂々戦い抜けば結果はついてくると信じたいです」

 東京オリンピック団体で日本フェンシング初の金メダルを獲得した男子エペ。東京の金メダルメンバーである加納虹輝、見延和靖、山田優に加え、古俣聖がリザーブとして選ばれた。団体では世界ランキング3位、個人でも加納が3位につける。

「団体戦も個人戦も金メダルを狙いたいです」

 と加納は語っている。団体、個人ともにそれだけの地力を備える。

 男子フルーレも負けていない。昨年の世界選手権団体で初優勝を果たし、現在も世界ランキングは1位。世界選手権個人戦で銅メダルを獲得し世界ランキング5位にいる松山恭助、東京オリンピックでは準決勝まで勝ち進んだ敷根崇裕が健在。さらに慶応大学に在学し文武両道を体現する飯村一輝らが加わった。

 また女子フルーレも昨年の世界選手権団体で銅メダルを獲得し、現在、世界ランキング4位につける。東京に出場した東晟良と上野優佳に、キャリアも豊富な宮脇花綸、そしてリザーブの菊池小巻と、世界選手権銅メダルと同じメンバーで出場する。

 フェンシングは世界の強豪に追いつき、追い越すべく、2007年には男女フルーレの選手を集め、選手の関係先にも了承をとりつけ、実に1年半にわたる長期合宿を実施。それが太田の北京での銀メダル獲得に結び付いた。

 その後も長期的な期間を各種目で設けて強化を図り、また各種目で海外のフェンシングが盛んな国から指導者を招へいして指導をあおいできた。

 こうした長期間の取り組みがあって、各種目で開花してきた近年。その成果をよりはっきりと示し、日本フェンシングの歴史を変えるべく、パリに挑む。

筆者:松原 孝臣

JBpress

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