パンと打って、ポンと弾むから「パンポン」 茨城・日立で1世紀前から伝わるスポーツ
2017年7月28日(金)11時0分 Jタウンネット
突然だが、「パンポン」というスポーツをご存じか。
「卓球とテニスをミックスしたような競技」
どうも、こんな風に説明されるのが定番らしい。「パン」とボールを打つと、「ポン」と弾むから、「パンポン」——。一体、どんな競技なのだろうか。
Jタウンネット編集部が調べてみると、これは茨城県日立市に伝わるローカルスポーツだった。「ローカル」だからといって、あなどってはならない。「パンポン」の起源は大正10年頃で、今から約100年前。私たちが生まれるよりもずっと前から、存在していたのだから......。
昼休みの時間内に決着がつくようなルールに
日立市体育協会の記録によると、パンポンは1922年頃、日立製作所の日立工場(旧・山手工場)で生まれた。やり方は簡単、板切れで軟式用のテニスボールを打ち合うのみ。4点を先取して1ゲームを奪う3ゲームマッチだ。3対3の場合、2点先取で勝ちとなる(4対4の場合、1本勝負となる)。付いたあだ名は、「卓球とテニスをミックスしたような競技」。
日立工場長の高尾直三郎さんが1929年、「パンポン」と名付けた。名前の由来は、「パンと打って、ポンと弾む」こと。それまで囲碁や将棋ばかりだった従業員の昼休みに、パンポンは革命をもたらした。昼休みの時間内に決着するよう配慮され、先述のような正式ルールになったという。
日立市体育協会の公式サイトには、パンポンの競技者に「パンポンの面白さ・良いところは何ですか?」と聞いた際の回答が書かれている。
「昼休みに着替えず、手ぶらですぐに出来るから」
「上司も先輩も後輩もみんな、仕事を忘れてできるから」
「4点先取だから、すぐに交代して順廻りが早いから」
「思い切りボールを打てるから」
「テニスみたいにボレーもスマッシュも出来るから」
「老人や子供も一緒に楽しめるスポーツだから」
日立市パンポン大会は今年で、38回目
Jタウンネット編集部は2017年7月20日、日立市体育協会の担当者に話を聞いてみた。
「日立市発祥のパンポンは、遊んだ経験のない方もいるでしょうが、ほとんどの日立市民に知られていると思います」
日立市だけに浸透しているのかといえば、そうではないようだ。担当者は
「他の都道府県にも、日立製作所の工場があれば、パンポンで遊んでいる人はいます」
と話した。
では日立市内の盛り上がりは、どうなのだろうか。同担当者によると、折笠スポーツ広場(日立市)で週に数度、高齢者を中心に遊んでいる光景をみかけるという。「日立関連の会社を引退された方が多いですね」(担当者)。
市内の公立小中学校では25校中、12校で体育や課外授業として取り入れられており(地域情報サイト「いばナビ」の記事による)、市民参加型の日立市パンポン大会も2017年6月で38回目を迎えている。
パンポンはさらに、2019年に茨城県で開催される「第74回国民体育大会(国体)」の「デモンストレーションスポーツ」に決定している。デモンストレーションスポーツとは、何なのか。茨城国体「実行委員会」事務局に聞いてみると、
「パンポンで具体的に何が行われるかは現在、検討中です。デモンストレーションスポーツに選ばれて、パンポンの魅力が日立市民だけでなく茨城県民に広く波及していけばいいと願っています」
と話していた。
ここまで読んでいただいた読者の皆さん。少しはパンポンの魅力が伝わっただろうか。素人の筆者が何を書くよりも、専門家によるPR動画をご覧いただくと分かりやすいだろう。日立製作所のYouTubeアカウントで公開されており、これがかなりカッコいい。