「動物キス」 写真週刊誌の隠し撮りテクで撮られている

7月28日(日)7時0分 NEWSポストセブン

心が洗われる1枚(プレーリードッグの親子)

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 北米に生息するリス科の野生動物、プレーリードッグの親子がキスしている写真。彼らは一夫多妻制で、コテリーと呼ばれる集団を形成し子育てします。同じコテリーに属する仲間と出会うと、お約束のように抱き合ってキス。体長30〜40センチの小さな生きものなので、敵を確認するために親のほうが立ちポーズになり、子どもはそれに合わせ背伸びして鼻をこすりつけようとするのです。


 じつはこの行為、野生動物にとって互いが仲間であることを確かめる確認作業なのですが、どうみてもキスしているようにしか見えません。それに、互いの気持ちを確認しあうという意味では、キスと同じ。もう、掛け値なしに可愛くていやされる!


◆スクープ連発の果てに・・・・・すべてを失う


 こんな動物たちのキスの瞬間ばかりを集めた写真集『Kiss!』を撮影したカメラマン、小原玲さん。かつて『アザラシの赤ちゃん』ブームを起こし、最近は北海道にすむ野生の小鳥シマエナガの写真集をヒットさせ、カワイイ野生動物を撮らせたら日本一、という声も。ところが意外なことに、彼のカメラマンとしてのスタートは、創刊間もない写真週刊誌『FRIDAY』でした。


 とにかくプロになりたい、と小原さんは大学卒業後すぐに専属カメラマンへ。そこで田中角栄の入院、石原真理子×玉置浩二の熱愛、日航機墜落事故、ロス疑惑三浦和義の逮捕など、1980年代の読者であれば「ああアレ・・・・」とピンとくる数々のスクープをとばします。そして『FRIDAY』卒業後は日本を飛びだし世界の通信社と契約。中国、天安門事件の写真はアメリカ『LIFE』誌に載るなど、「憧れの人キャパに、すこしは近づけたと思いました。もうイケイケでした」(小原さん)。


 ところが──小原さんは30代半ばを前にして、シャッターを押せなくなります。


 ソマリアの難民キャンプでは「やせた子どもはいないか?」と血眼になって探し回る。でもどこのメディアも写真を買ってくれない。バブルに浮かれる日本では、飢餓の母子よりラーメン特集のほうが売れるからです。加えて戦地における壮絶な体験で精神の均衡を崩し、酒に溺れ、妻に捨てられ、健康も失い、自暴自棄に。阪神淡路大震災では現場入りを断念。もう、写真は無理か──。


 しかし、ふたたびカメラを手に取るきっかけをつくってくれたのが、戦争やスクープとは畑違いの動物たちでした。





◆どちらにも必要なのは隠し撮りのテクニック!?


 ある日、小原さんはカナダへ向かいます。かつて海外の空港でたまたま手にしたポストカードで見たアザラシの赤ちゃんの本物をひと目見たい、という思いだけで。商売になるかどうかは度外視、ただただ、いやしだけを求めた旅でした。そして、人間を母親と間違えて、「アゥー、アゥー」と泣きながらおっぱいをねだる姿に、一瞬で心を奪われます。気づいたら、一心不乱にシャッターを切り続けていました。


 それから定期的に北米への撮影旅行へ。ならば「ついでに」大草原に生息する動物も撮ってみようか、と思ったのがプレーリードッグとの出会い。さらに人魚のモデルともいわれるマナティ、シロクマとどんどん動物撮影にハマっていったのです。


 スクープを追うカメラマンから動物写真家へ。その転身は、「前進したり後戻りしたりのくり返しでスムーズとは言い難いけど」まわりが驚くほど意外なことではないとご本人は言います。「機材をほとんど変える必要がなかったんです。どちらにも必要なのは“隠し撮り”のテクニック。とくにシマエナガの撮影では、芸能人を張り込み隠し撮りしたときのノウハウが役立っています。こんなの、他の動物写真家センセイはふつうやりませんね(笑)」と、まさに“現場100回”の経験が生きたわけです。


「もともと報道志望で、動物カメラマンをめざしていたわけではありません。それでも、ぼくの写真を通じて、可愛らしい被写体の魅力が伝わることが、とにかく嬉しい。動物を撮影するときはそれぞれの生態について入念に調べますが、見る人に伝えたいのは、学術書に書かれている情報ではなく、出会った喜び。誰かに〈伝える〉という強い気持ちは被写体こそ変われど、写真週刊誌時代と何ら変わりはないように思っています」(小原さん)

NEWSポストセブン

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