お寺の掲示板に「ぴえん」の解説文が登場 いったいなぜ?住職に事情を聞くと...

2020年7月29日(水)6時0分 Jタウンネット


福岡県北九州市にある永明寺の掲示板が、ツイッターで注目を集めている。

「ぴえんもご縁 超えて ご恩」

若者たちの間で流行している「ぴえんこえてぱおん」を彷彿とさせるユニークな法語だ。2020年7月26日、永明寺の松崎智海住職が自身のツイッター(@matsuzakichikai)で

「複数の方から意味の説明を求められ、ついに解説がついた法語がこちらです ぴえん」

と紹介したことで、話題となっている。

解説とはいったい...? 

注目してほしいのは、掲示板の左上部分。「法語の解説」と書かれた貼り紙には、次のような文章がある。

「『ぴえん』は若者の間で流行している泣き声を表す擬態語で、嬉しいことや悲しいことなど泣きたいほどの感情を伝える言葉です。より度合いが強い派生語としての『ぱおん』という表現も生まれ『ぴえん』と組み合わせた『ぴえん超えてぱおん』は『JC・JK流行語大賞2020上半期』コトバ部門で5位にランクインしています」

そう、ぴえんという言葉を丁寧に解説しているのだ。

「鼻炎?花粉症?」との反応も

先ほどの貼り紙に書かれているのは、もちろん「ぴえん」の説明だけではない。

「この法語が分かりにくい時は、『ぴえん』を『悲しみ』と読み替えてみてください。辛いことが続くこの人生ですが、『悲しみ』もまた『ご縁』として受け止め、いつか『ご恩』として感じることができる日が来ることを願っております」

ただ単純に流行りの言葉を取り入れているだけなのかと思いきや、中身を読んでみるとなるほど......と納得させられる、とても丁寧な説明だった。もちろん、「ぴえん」の説明も簡潔で分かりやすい。

しっかりとした解説を読んでいたら、この法語が掲示された経緯が知りたくなってきた。

Jタウンネットは27日、永明寺を取材し、松崎住職に詳しい話を聞いた。まずは、このユニークな法語が誕生した経緯を尋ねてみた。

「私はツイッターをやっているので、ぴえんという言葉は元々知っていました。
最近はうちの子もよく使っていて、流行っているんだろうな、とは思っていたんです。そんな中で7月の頭に、ワイドショーでJC・JK流行語に(ぴえんが)選ばれたというのを見て、妻が『これで法語作ってみたら?』と提案してくれて、この法語を作りました」

それから実際に掲示してみたところ、「ぴえん」の意味を尋ねる人がとても多かったという。こうした状況を松崎さんは、

「ぴえんに馴染みがない世代の方からは、どういうこと? とか、鼻炎? 花粉症? みたいなこと聞かれたりしました。もっと若い世代の方からは、『ぴえん』っていう仏教用語があるんですか? って聞かれたりとか。仏教のおしえを知っている層と、ぴえんを知っている層がなかなか上手く噛みあわなかったのかもしれませんね......」

と苦笑を交えて説明する。

解説を追加する決定的なきっかけとなったのは、松崎さんの父である前住職が、近所に住む70代のクリスチャンにこの法語の意味を聞かれたことだった。

「この法語は私が独自でやっていることなので、父は『分かりません』と答えたところ、『毎日通っているけど、何回見ても意味が分からない』と言われたそうで。父はそのまま解説を貼る約束をしてきちゃったんです。とはいえ、確かによく意味を聞かれるし、せっかくだから......と思ってこの解説を掲示しました」

改めて法語の意味を聞くと...

改めて、この法語に込めた思いを松崎さんに聞くと、

「仏教のおしえに、縁というのがあります。人と人は、関係しながら成立していく、という仏教における基本的な考え方なのですが、この縁によしあしはなく、どう捉えるかはその人の心次第といわれています。
たとえば『ぴえん』なこと、悲しいことでも、時が経ってから、恨むか、恩義に思うかはその人次第ということです。
もちろん、だからといって『どんなこともよく考えなさい』ということではありません。
『よりよくなっていくことを願っています』という思いを込めています」

としている。

また、松崎さんはこの法語を出すタイミングについても、悩んだそう。

「これを掲示した4日は、熊本をはじめ九州での豪雨水害が出たすぐ後だったんです。
近くに被害に遭われた方もいらっしゃったし、きれいごとを言うな、とお叱りを受けるかもしれないと、悩みながらも出しました。結果として、皆さんに受け入れていただけてとても嬉しく思います」

以前から、流行りの言葉や、印象的な言葉を使った法語がしばしば話題となる永明寺。

「心のひっかかりを作る」ことを意識してユニークな法語を作っているとのこと。

「お寺の掲示板のスペースで、仏教のおしえを語りきることは出来ません。だからこそ、まずは目に留まり、注目してもらえればと思っています」


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