京阪宇治駅が「美しい」理由、設計者に聞くと... 「宇治の『色気』を表現した」

2017年7月31日(月)11時0分 Jタウンネット

「京阪宇治駅が建築好きを唸らせる建物だということは、もっと多くの人に知られるべき。コンクリートと曲線という思わず食べてしまいたくなるようなあまりにも美しい食べ合わせである」。

ツイッターで2017年7月24日、京阪電鉄・宇治駅の内部を撮影した写真がこんな文章とともに投稿されて、反響を呼んでいる。


京阪宇治駅が建築好きを唸らせる建物だということは、もっと多くの人に知られるべき。コンクリートと曲線という思わず食べてしまいたくなるようなあまりにも美しい食べ合わせである。 pic.twitter.com/wBHtl5p9q8
- 鹿男 (@SHIKAOTOKOw) 2017年7月24日

京阪宇治駅は、その優れたデザインが評価され、1996年に「グッドデザイン賞」(主催:日本デザイン振興会)を受賞した。私鉄の駅としては、初だったという。


Jタウンネット記者は2017年7月28日、京阪宇治駅のデザインや設計を手がけた建築家、若林広幸氏に話を聞いてみた。


近代的な工業地帯と、風光明媚な風景が混在している


京阪宇治駅の駅舎は1995年、駅前の再開発にともなう移設工事で現在の場所に新築、移転された。コンクリート構造で、円形を基調として造られている。


地図をご覧いただきたい。京阪宇治線は、写真上から下に伸びており、右上から左下にかけてJR奈良線が通っている。宇治線と奈良線の交差点、つまり奈良線の北側に宇治駅の駅舎、南側に京阪の駅ビルがある(JR奈良線の宇治駅は、ここから数百メートル離れた場所にある)。先述の移設工事をきっかけに、京阪宇治駅は北寄りに移動。駅舎と駅ビルは、JR奈良線の南北にまたがる形になった。


Jタウンネット記者は7月28日、京阪宇治駅のデザインと設計を担当した建築家の若林広幸氏に話を聞いた。着眼点はずばり、宇治駅周辺の「二面性」だったという。JR奈良線の北側では、繊維メーカー「ユニチカ」(兵庫県尼崎市)の宇治工場が広がるが、南側には、平等院鳳凰堂や宇治橋など観光名所がある。


「現代的、近代的な工業地帯と、風光明媚な風景が混在しているので、2つのものが融合している様を表現した建築にできないだろうか、と考えました」

若林氏はこの着想を元に、「民家サイズの5つに分節した瓦屋根を並べたもの」(地図上の青線で囲まれた部分)と、「円形の筒を並べたもの」(地図上の赤線で囲まれた部分)を設計した。京阪宇治駅からJRの線路を越え駅ビルにかけて、「く」の字形の連なりが完成。こうして、宇治に共存する「二面性」を表現した。


宇治の「茶畑」にも着目


若林氏がこのように考えた背景には、元々二面性に強い関心を示していたことがあった。


「2つの相反するものが共存すると、色っぽいし、人を引きつける。私はそうした状態を『色気』と呼んでいます。宝塚歌劇だってそうでしょ。女性が男役を演じるから、色気がある」

さらに、「駅は本来、土地柄を表すもの」とも考えていた。若林氏は言う。


「土地柄のにじみ出ている駅が、随分と少なくなりました。新幹線の与えた影響は大きいと思います。新幹線の駅って画一的でしょ。大量に同じものを作ることによってローコストに抑えるという、近代主義の功罪ではないでしょうか」

ちなみに、この円形を基調としたデザインについては、宇治の茶畑に着想を得ているという。


「茶畑って、2段、3段......と連なっていますよね。この『連続するダイナミズム』を筒の形で表現しました」

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