ゼロ年代以降の筆頭格the GazettEが貫く、ヴィジュアル系バンドとしての誇り

2023年8月2日(水)6時0分 JBpress

(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回は連載開始以来初めてのゼロ年代以降のヴィジュアル系バンドから、筆頭格であり、“ヴィジュアルロックの最高峰”と呼ぶに相応しいバンド、the GazettEを取り上げる。(JBpress)


ゼロ年代以降のヴィジュアル系バンドの筆頭格

 90年代中期にはテレビ番組から“ヴィジュアル系四天王”が生まれるなど一時代を築いたヴィジュアル系。だが、2000年にLUNA SEAが終幕を迎えたゼロ年代初頭は、後年“ヴィジュアル系氷河期”とも呼ばれるほど、ヴィジュアル系は過去のものとされていた不遇の時代でもあった。

 しかしながら2003年頃になると“ネオ・ヴィジュアル系”と呼ばれる、新世代のヴィジュアル系バンドが登場する。こうした新しいムーヴメントを経てヴィジュアル系はさらに進化していき、のちにアニメなどのジャパンカルチャーと共に、“Visual kei”として世界に認知されるようになっていった。そうしたゼロ年代以降のヴィジュアル系バンドの筆頭格であり、“ヴィジュアルロックの最高峰”と呼ぶに相応しいバンド、それがthe GazettEだ。

“ヴィジュアルロックの最高峰”とは、2017年8月に富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われた<LIVE IN SUMMER 17「BURST INTO A BLAZE 3」>にて、開演前にアナウンスされた言葉である。自らそう言ってのける自信ほど頼もしいものはないだろう。


“大日本異端芸者”から“ヴィジュアルロックの最高峰”へ

 the GazettEは蠱惑的なバンドである。猟奇的な攻撃性を見せながらも、妖しく艶めかしさをも持ち合わせている。そのソリッドでヘヴィなサウンドと妖艶な佇まいは、観る者聴く者を惑わし、狂わせていく。ロックが本来持っている不良性と危うさ、そしてヴィジュアル系の大きな武器でもあるナルシシズムともいうべき美学を徹底的に追求している。

 ヴィジュアル系の音楽の一角にヘヴィミュージックが鎮座しているのは、海外のインダストリアルやニューメタルを噛み砕いて表現したhideの影響が大きい。そしてその延長線上にあり、ダウンチューニングを用いたヘヴィなリフ&サウンドとダークなメロディを掛け合わせ、獣のように咆哮するグロウルと滑らかな歌声がせめぎ合う、ゼロ年代以降のヴィジュアル系特有のヘヴィロック、すなわちヴィジュアルロック(V-ROCK)というべきもの確立させたのは、the GazettEと言ってもいいだろう。

 the GazettEはヘヴィなサウンドを基調としながらも、さまざまな音楽を追い求めてきた。デジロックをはじめ、ダンスミュージックといったロック以外のサウンドを積極的に取り入れたプロダクトは彼らの十八番である。

 もちろん、そうしたさまざまな音楽を取り入れてきたのはthe GazettEだけではないが、彼らはいい意味で時流のトレンドに身を投じていた節もある。他のバンドが洋楽傾向を強めながらマニアライクな音楽性を突き詰めながら、時にメイクを落としたり薄くしたりと脱ヴィジュアル系的な動きを見せる中で、彼らは貪欲にサウンドを追求しつつも流行を取り入れて歌モノのロックとして昇華し、ヴィジュアル系バンドであり続けた。活動を重ねるごとにサウンドは激しくなるもメロディアスさとキャッチーを常に求め、メイクはますます濃くなっていったのだ。

 そんな彼らの時流を見つめた変遷は、2022年に結成20周年を記念してリリースされた『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』に収められている。シングル曲を集めた「SINGLES」、メロディアスな曲を集めた「ABBYS」、エッジィなロックチューンを集めた「LUCY」という3枚組のコンセプトベストアルバムである。

 大日本異端芸者ガゼット——。初期はそんなキャッチコピーをつけたカタカナ表記のバンド名で活動していた。彼らが活動を開始した2002年頃は、昭和のエログロナンセンスやサブカルテイストを全面に出し、音楽も古き良き歌謡曲をベースとした奇抜で尖ったヴィジュアル系バンドが多かった。彼らも然りで、ソリッドでエッジを効かせたサウンドと不条理的な世界を持っていた。

『鬼畜教師(32歳独身)の悩殺講座』(2002年8月リリース)、『大日本異端芸者的脳味噌中吊り絶頂絶景音源集。』(2004年7月リリース)といったインパクトあるタイトルも多くあり、「大日本異端芸者の皆様」という編曲クレジットもお決まりだった。

 2006年2月リリースの2ndアルバム『NIL』より、バンド名表記とロゴが現在の“the GazettE”に変更となり、以降はビジュアルは洗練され、サウンドもダークさとヘヴィさを増していく。当時は“大日本異端芸者”からの脱却を目指していたというが、2017年には“大日本異端芸者”を掲げた<十五周年記念公演「暴動区 愚鈍の桜」>を開催するなどた、後年になってからは初期コンセプトとして好意的に捉えているようだ。

『鬼畜教師(32歳独身)の悩殺講座』収録の「関東土下座組合」はオーディエンス全員がその場で土下座をして激しいヘドバンが巻き起こるという、熱狂的なthe GazettEライブを表すものであり、長く演奏されてきた楽曲のひとつでもある。


世界が羨む“Visual kei”バンド

 ひしめき合うヴィジュアル系シーンの中で、the GazettEの人気は頭ひとつ飛び抜けている。東京ドーム公演(2010年)を行った数少ないヴィジュアル系バンドであることがそれを証明しているし、海外でも高い人気を誇っている。

 ヴィジュアル系バンドが海外での知名度を広げた要因として大きいのは、アニメ主題歌に起用されたことだ。the GazettEは2010年7月のリリース「SHIVER」がアニメ『黒執事II』のオープニングテーマ曲に起用されている。

 しかしながら、アニメが呼び水になった他バンドやジャパンカルチャーブームを考えれば、少々遅い時期であったようにも思う。その前年2009年にヴィジュアル系の海外人気を受けて開催された『V-ROCK FESTIVAL』のトリを務めており、このときすでに国内外での人気は高かった。本格的な海外ツアーを行ったのも2013年が初であり、他バンドより海外展開も遅い。つまり火がついたきっかけはアニメ主題歌でも海外展開でもなく、“Visual kei”の知名度とともに、着実に人気を伸ばしていたのである。

 なぜこれほどまでに人気を得たのか? そこにあるのはダークでゴージャスというべき、徹底した世界観構築、コンセプトであるだろう。

 先述のように2006年に英語表記に変更してから、洗練された魅せ方へ変化し、現在に続くダークなスタイルへと深化していった。メロディアスとヘヴィネス、きらびやかさとダークさがせめぎ合う楽曲とサウンド。そして、徹底的に作り込まれたビジュアル、アートワーク、MV、ライブ演出の数々……。CDや映像作品の初回限定版に見られるブックレットやボックスといった仕様は採算度外視と思うほどに豪華なものだ。こうしたセルフプロデュースによるこだわりにこだわり抜いた世界観は、どこを取ってみてもヴィジュアル系イメージのすべてを凝縮している。

 このような徹底的な世界観と2次元的でもあるアイコンの存在が、あたかも非現実的世界を映し出すようなインターネットを通じ、“Mysterious”、“Cool”と称される、世界が羨むほどの“Visual kei”、“V-ROCK”の代表格バンドになったのである。

 世界的に評価される反面でメインストリームから見れば閉塞的でもあり、何かと偏見も多いのがヴィジュアル系だ。しかし、the GazettEはそうした世間からの偏見を一手に請け負ってきたかのようにも思えるし、同時にシーンの外にまでその存在を届かせた数少ないヴィジュアル系バンドだ。

 そのことを象徴しているのが非ヴィジュアル系アーティストが集まる音楽イベントやフェスへの参加である。


ヴィジュアル系バンドとしての誇り

 2014年に開催された『LOUD PARK』への出演は大きな物議を醸した。メタルファンからは賛否というよも、圧倒的に“否”の声が多かった。そんな歓迎されているとは言い難い状況であるから、「ジャンルの壁をぶち壊す」というノリで来るのだろうと大方の人は思っていたはず。

 しかし、蓋を開けてれば、ボーカル・RUKIの言葉「“なぜヴィジュアル系が?”とお思いの方もたくさんいらっしゃることでしょう。僕らもなぜここにいるのかわからない(笑)。でも僕たちはみなさんと同じようにメタルが大好きなので……」という拍子抜けするような姿勢だった。とにかく音とライブで判断してくれと言わんばかりの潔いステージは、ひやかしで観ていたであろうメタルファンをも巻き込んで盛況に終わったのである。

 同様に、スリップノットが主催する『KNOTFEST』や『SUMER SONIC』、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に『COUNTDOWN JAPAN』、『氣志團万博』、そして『イナズマロックフェス』、『a-nation』に至るまで。これほど多様性に富んだフェスに出ているヴィジュアル系バンドはいない。

 真夏の野外は似合わない、他ジャンルとの親和性は低い、と避けられてきた部分もあったと思われるヴィジュアル系の偏見に臆することなく、the GazettEは濃いメイクとヘヴィな轟音を武器にその存在を知らしめてきた。そこには、時に揶揄されることがあっても、貫き通す「ヴィジュアル系ロックバンドとしての誇り」がうかがえる。

 そんな彼らであるから、自分たちを応援してくれるファンの対しても大きな誇りを持っている。ファンとの信頼関係はどのアーティストにでもあることだと思うのだが、彼らはそれをライブにおいて形で、言葉で惜しげもなく表現している。そのステージを見れば、ファンが彼らの音楽を本気で求め、彼らががファンを求めているかがわかるはずだ。

 the GazettEの魅力、その最たるものは「オレたちがいちばんカッコいい」と思って活動していることだろう。謙遜することなく、自分たちの作る音楽、やっていることがいちばんだという自信。それこそが見る者、聴く者への大きな説得力になっている。

 何かと他人の評価や、協調性を気にすることの多い昨今。しかし、ロックとは、バンドとは、ヴィジュアル系とは、本来そういった自信が大前提にあるものなのではないだろうか。the GazettEは気持ちいいまでにそうした自己愛に満ち、孤高の美学を貫いてるバンドなのだ。そして、ヴィジュアル系と呼ばれること、括られることを由としないバンドもいる中で、自分たちがヴィジュアル系であることを気持ちいいくらいに誇っている。

 そう、the GazettEは自他ともに“ヴィジュアルロックの最高峰”と讃えるに相応しいヴィジュアル系ロックバンドなのだ。

筆者:冬将軍

JBpress

「ヴィジュアル系」をもっと詳しく

「ヴィジュアル系」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ