暑い夏はやっぱコレでしょ! ビールみたいに「セミ」を一気飲みするカエルが激写される
2021年8月3日(火)9時0分 Jタウンネット
「暑い夜は、ヒグラシでも一気飲みすっか」
こんなコメントとともに投稿されたとある写真が、ツイッター上で話題になっている。
ヒグラシ、というのは何だろうか。「一気飲み」というからには、お酒か何かの名前なのか......いやいや、文字通りの「ヒグラシ」だ。
![](https://news.biglobe.ne.jp/trend/0803/0640842171/jtn_0640842171_1_thum800.jpg)
そう、「一気飲み」をしているのは人ではなくカエル。木の枝に掴まって飲み込もうとしているのは、セミのヒグラシだ。
大きく開けた口の角度といい、片手でセミを持っているところといい、なんとなく人間がビールでも飲んでいる姿を彷彿とさせる。
厳しい弱肉強食の世界を捉えた一枚なのだが、なんだかおもしろい絵面だ。
こちらの写真に対し、ツイッター上では、
「見事な瞬間ですね!良い表情してます」
「片手でジョッキ掴んでるみたいw」
「良い飲みっぷりですね!」
と言った声が寄せられている。
話題になっているのは、東京都在住のツイッターユーザーの神岡大介(@ZYNTQVWFY07UKf3さん)が2021年7月30日に投稿した写真。Jタウンネット記者は8月3日、本人に話を聞いた。
「セミの断末魔のような鳴き声が聞こえた」
神岡さんは、普段から6歳と4歳の子ども二人と一緒に虫捕りなどをしながら、捕まえた生き物の写真を投稿している。話題の写真も自身で撮影したものだ。
「この写真は10年以上前に岐阜県のとある山奥で、ひぐらしのなく頃に撮影しました。当時は野外で生物調査をしており、その時に起きた出来事です。
セミの断末魔のような鳴き声が背後で聞こえたので、音のした方を探してみると、セミの体を半分以上咥えたカエルがいました」(神岡さん)
神岡さんによると、写真のカエルは「モリアオガエル」という種類。主に森の中の木の上などで活動するカエルだという。
「産卵が特徴的なのですが、水の上に張り出した木の枝などで、1匹のメスに複数のオスが抱きつき、『卵塊』といわれるメレンゲのような泡の中に卵を産みつけるという変わった習性を持っています。
意外と大きいのですが、とっても可愛いカエルです」
![](https://news.biglobe.ne.jp/trend/0803/0640842171/jtn_0640842171_2_thum800.jpg)
モリアオガエルの捕食シーンは珍しく、ヒグラシを飲むように食べているのを見たのは、その時だけだという。見つけた時は、急いで写真を撮ったそうだ。
「繁殖期には池に集まってくるので観察しやすいのですが、一方で繁殖期にはあまり餌を食べないと言われています。また、繁殖を終えると森の中に散ってしまうので見つけることが難しく、何を食べているかなどは十分にわかっていません。
一部の研究によれば、ハエやクモやバッタの仲間を比較的多く食べているようです。
また、ニイニイゼミといった小型のセミも少なからず食べている例があるので、今回のヒグラシのように比較的小さいセミであれば食べることがあるんだと思います」(神岡さん)
セミを捕食することはあるようだが、その瞬間を目の当たりにすることは稀らしい。そう考えると、かなり貴重な写真なのかもしれない。
「残念ながら駆除対象となっている地域もある」
改めて、実際に目撃したときの感想を聞くと、神岡さんは、
「やっぱり、表情とこの手が良いですよね。ヒグラシには申し訳ないですが、ビール飲んでるみたいで好きです」
と述べた。なお、カエルはこの後無事にヒグラシを全部飲み込んでいたという。
「カエルって、一飲みできないような餌を咥えた時は、手でクシクシしながら、たぶん向きを整えながら、飲み込むんですよね。そういった場面が何度かあったのですが、最後は飲み込んでました。
その後は、カエルには申し訳なかったのですが、調査のため一度捕獲して、その場で体長などを計測して、すぐに逃しました」(神岡さん)
![](https://news.biglobe.ne.jp/trend/0803/0640842171/jtn_0640842171_3_thum800.jpg)
神岡さんはツイッターでの反響について、
「多くの人にモリアオガエルの魅力を知ってもらえたことは素直に嬉しいです。
カエル嫌いの方もいる中で、多くの方に評価していただけたのは、自然の中で生きている野性味あふれる姿を切り取ることが出来たからだと思います」
と振り返った。
一方で、モリアオガエルはその愛らしさからか、もともと生息していない地域に人為的に移動された「国内移入種」として、残念ながら駆除対象となっている地域もあることを知ってほしい、と神岡さん。
国立環境研究所が公開している「侵入生物データベース」のモリアオガエルの項目では、国内移入分布地域として伊豆大島(伊豆諸島)が挙げられており、「1970年頃から生息しているらしい」とされている。
また、自然分布は「茨城県を除く本州全域、佐渡島」と記載されている一方、「神奈川県・千葉県は人為分布の疑いがある」となっている。
「野生生物の魅力だけではなく、こうした課題も知って、考えてもらえると嬉しいです」(神岡さん)