マルサの男 東京国税局査察官が職権濫用で離婚協議中の妻のプライベート情報を入手し公開裁判へ

8月4日(日)9時0分 TABLO

「虚偽有印公文書作成・同行使」、「公務員職権濫用」の2つの罪で起訴されていた近藤哲史(裁判当時35歳)は犯行当時、東京国税局査察官、いわゆるマルサとして勤務していました。

犯行内容は、職務上与えられている強制調査権限を不当に行使して当時離婚協議中だった妻のクレジットカードの利用情報を入手した、というものです。

この犯行が明るみになり彼は国税局から懲戒免職されていますが、それに加えて刑事事件としても立件されて公開裁判の法廷にも立つことになってしまったのです。

犯行が発覚した経緯は単純なものでした。

先述の通り彼はクレジットカード会社に対して「所得調査のため」という名目で国税局長名義の照会文書を送付していました。しかし、たまたま彼が不在の時にクレジットカード会社からの回答が返ってきてしまいこれを同僚が発見し報告したことから犯行が発覚したのです。彼は2つのクレジットカード会社に照会文書を送付していましたが、どちらのクレジットカード会社の回答も彼が不在の時に返ってきていました。

通常このような公文書を作成して送るには上司のチェックと決裁が必要なのですが、彼は上司が出張中でいない時を見計らって照会文書を作成し、決裁されたかのように装って公文書を送付しました。

「装って」とは言っても単純にボールペンで少し書き加えただけで、そう複雑な作業でもありませんし準備が必要なものでもありません。

現物を見ていませんのでこの公文書がどのような物なのかはわかりませんが、国税局の人間がその気になれば簡単にこの類の職権濫用は出来ることなのかもしれません。

それにしても、なぜ、彼はこんなことをしてしまったのでしょうか。

彼が結婚をしたのは平成28年9月のことでした。翌年の10月には長女が誕生しています。しかし平成30年12月14日、妻が突然家出をしました。その後、妻の代理弁護人から連絡が来て離婚したい旨を言い渡されました。

「突然家出をした」と書きましたが、これは証人として出廷していた彼の父親の言い分です。裁判では詳しいところまでは触れられませんでしたが、妻が家出をした理由は彼の不貞行為でした。妻にとってはこの家出は「突然」でもなんでもなく、すでに家庭が壊れる予兆は以前から彼自身の手で作ってあったのです。

離婚の原因が彼の不貞行為にある以上、彼に不利な条件での離婚協議が進んでいくことは明らかです。しかし彼は妻に対して1つの疑惑を抱いていました。

「夫婦間のお金は全て妻に任せていました。自分に黙って勝手にお金を使ってたんじゃないかと思ってました」

もしこの疑惑が真実ならいくらかは離婚協議が有利に進むのではないか、そう彼は考えてしまいました。

「少しでも自分が有利になるような情報がほしい。妻の資産情報が知りたい」

妻の家出後、すぐに彼は一連の犯行を決意しました。国税局査察官に与えられている強制調査権限を私的に行使することが許されないのは十分に理解していたそうです。

「やろうと思った時に、発覚した時のことは考えなかったんですか?」
そう裁判官に聞かれた時には、
「自己中心的な思いばかりでそこまで考えませんでした。もちろん葛藤はありました。それでもなお情報が欲しいと思ってしまいました。離婚への不満もありましたし、それに娘に会えない焦燥感もあって…。誰にも相談せずに判断してしまいました」
と答えています。

事件当時、娘はまだ1歳になったばかりです。言葉にしてしまえば「娘に会えない焦燥感」という短いものになりますが、彼にとっては正常な判断を出来なくさせるのに十分な出来事だったのかもしれません。

とはいえ、この事件は公務員全体への信用を毀損しかねない悪質な犯罪です。検察は懲役1年6ヶ月を求刑しました。

彼は国税局を辞めてからは父親が開いている税理士事務所で働いています。元国税局というキャリアからすれば妥当な再就職先かもしれませんが、起こした事件の内容を考えると少し不安になってしまいます。(取材・文◎鈴木孔明)

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