出産退職20万人、経済損失は1.2兆円…第一生命経済研究所

2018年8月10日(金)12時15分 リセマム

出産退職による所得減と経済損失

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第一生命経済研究所は2018年8月1日、「出産退職の経済損失1.2兆円」とする試算を発表した。出生数94.6万人のうち、出産に伴って退職した人は20万人、育休制度を活用して就業継続した人は23.7万人。育休制度の拡充によって、経済損失をもっと少なくできると提言している。

 厚生労働省の発表によると、2017年の出生数は94.6万人。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向調査」(2015年)を使って、出産に伴って退職する人を計算すると、2017年は20万人と推定された。これは、出産した母親の21%に相当するという。

 出産退職者20万人の雇用形態は、正社員7.9万人、パートなど非正規労働者11.6万人、自営業など0.5万人と推定。20万人の女性が就業継続しないことに伴う損失は、賃金ベースで年間6,360億円。さらにこれを企業活動の付加価値の減少分(経済損失)で計算すると、名目GDPベースで1兆1,741億円にのぼる。

 第一生命経済研究所は、「出産退職する女性が20万人もいることで、日本経済全体が低下させる潜在能力はもっと大きなものがある」と指摘。正社員がいったん出産退職し、その後、子どもが大きくなって働こうとしても正社員での復帰は難しく、やむを得ずパートなどで働かざるを得ない人が多くいることが潜在的コストになると考えられるという。

 そこで、正社員の出産退職者の潜在的コストを試算すると、正社員の女性が30歳で出産退職し、40歳から非正規で再び働き始めた場合、そのまま正社員として就業を続けたときの年収と比較して、通算年収で8,307万円の差が生じる。これを企業活動全体の停滞としてとらえると、経済損失は名目GDPベースで12.1兆円にのぼる。

 一方、育休制度を活用している人は年々増えており、育休を活用して就業継続した人数を推定すると、2002年14.9万人、2007年18.6万人、2017年23.7万人と増えている。

 育児休業制度や短時間勤務制度は、ここ数年間で拡充されてきている。2017年3月交付の育児・介護休業法の改正で、保育所などに預けられないなど休業が特に必要な場合、最長2歳まで育児休業を延長できるようになった。ただ、育児休業は原則として子どもが1歳までで、多くの女性は1年以内に復職する。

 第一生命経済研究所では、「子どもが小さい間は自分で子育てしたいなど、女性によって子育ての価値観に違いがある中、育児休業制度以外でも多様な工夫をする余地がある一方で、育児休業制度の趣旨に立ち返り、その役割について見直すことも必要な時期にきていると思われる」と提言している。

 また、女性が出産後も就業継続しやすくなるために求められているのは、「制度をいかに利用しやすい職場にするか」であるとし、女性のみでなく、男性にとっても利用しやすい職場環境づくりを求めている。

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