いま食べたい、東京「夏うどん」ベスト3 うどん大好きライターが厳選!

8月13日(月)11時0分 文春オンライン

 うどんは白米に並んで汎用性が高い食べ物ではないだろうか。「ごはんのお供」という言葉があるが、うどんだって大抵のものを受け入れる度量がある。それを「つるとんたん」が証明してきたのはご存知のとおり。イタリアン風も中華風もなんのその。そういう懐の深さから生醤油一本で勝負できる気っ風の良さまで、うどんの身ごなしの高さは麺界最強だと思う。


 この夏もそうした柔軟なうどんたちに出合った。装いも味わいも実に爽やかな、猛暑を吹き飛ばす夏うどん3杯を紹介しよう。


◆◆◆


ズッキーニ、パプリカ、トマト……夏野菜の「ひやしカレーうどん」


 下馬一丁目の交差点、ぎょろっと大きな目玉のふくろう像が目印の小さなお店だ。勝手口をのぞくと、網戸の奥で厨房を動き回る店主・三木さんの姿が見える。のっけから申し訳ないが、決してアクセスがいいお店ではない。祐天寺・池尻大橋・三軒茶屋に囲まれた場所にあり、一番近い祐天寺駅からでも歩いて12〜13分かかる。それでも時分時はおひとり様から家族連れまで、三木さんのうどんを求めるお客の出入りで暖簾が忙しなく揺れる。



お店の守り神に挨拶して入店


 定番のかけうどんの美味さはもちろん、ここでは気ままな季節モノも楽しみの一つ。この時季のお薦め「ひやしカレーうどん」は、ズッキーニにパプリカ、トマト、オクラと旬の野菜の彩色が目にも楽しい一杯だ。



クミンやカルダモンの爽快な香り


 各地でうどんを食べているつもりだが、それでも初めて食べさせてもらったとき、それはそれは衝撃だった。カレーうどんといえばカレーをつゆで割った粘状のものが定石だが、三木さんの作り方はどこかスパイスカレーのよう。


 だしは使わず、マスタードシードや青唐辛子から引き出した鋭角的なうまみにさまざまなスパイスを重ね、ココナッツミルクと豆乳でまろやかに仕上げる……と、うどん店としては個性的なアプローチなのだが、これがなかなかどうして。スープを一口すする。ハチミツの甘みを感知した2秒後、クミンやカルダモンの爽快な香りが勢いよく鼻腔を抜け、思わず深呼吸。最近またバージョンアップさせた手打ち麺は舌の上を滑るようにすべすべで、瑞々しく、上品なしなり。



 極めつけに「三木さん、ありがとう!」と心の中で叫ばずにいられなかったのが、野菜の魅せ方。炒めた方が美味しいものはじっくり、食感を残した方が美味しいものはサッと仕上げる配慮がなされ、一つ一つに向き合う楽しみに溢れている(※「ひやしカレーうどん」は9月末まで提供。日替わりなので事前確認をお薦めする)。



INFORMATION


「手打ちうどん ニューさがみや」

東京都世田谷区下馬1-18-9

080-7025-4914

11:30〜15:00(木〜土11:30〜15:00、18:00〜21:00)

※8月14日〜22日まで夏季休暇

火水定休




自家製ラー油と花椒が“ちょうどいい”「冷やし坦々肉うどん」


 2017年にオープンした、東京で福岡・久留米のうどんが食べられる唯一のお店だ。今だから白状すると、“変化球”を出すタイプだと思っていなかったので、SNSで「冷やし坦々肉うどん」なる新作が提供されると知ったときは少々驚いた。



 というのも、こちらでは柔らかい麺と煮干しだしからなるクラシカルなうどんが常で、つまりその素朴さからすれば「冷やし坦々肉うどん」の文字は私には意外なほどポップに映ったのだ。が! これが結論から言えば、まさに夏にうってつけ。



炒めた玉ネギと寝かせたネギ油の仕事ぶり


 坦々うどんというメニュー自体は珍しいものではない。事実、山椒による痺れの「麻(マー)」と唐辛子や辣油による辛みの「辣(ラー)」は今や中華の世界を飛び越え、このところうどん界でも注目されつつある。この時季のうどんの選択肢が広がる喜びの一方、ブームの加速とともに力任せな過激派ばかりもてはやされがちなようにも感じていたが、これはなんと優しい麻辣体験なのだろう。


 少しくらいの攻撃なら甘んじて、などという覚悟はそもそも不要。自家製ラー油と花椒のアクセントはあくまでじんわり、はーはー、うっすら汗ばむ程度のいい塩梅。なによりスープ自体がたまらなくうまい。決して強い調味料を使っているわけではない。むしろ動物性だしは不使用ゆえすっきりと軽い飲み口だが、じっくり炒めた飴色玉ネギと寝かせることで深みを増したネギ油のネギ兄弟の穏やかな仕事ぶりを物語る味わい……そして、これらすべての要素が同店の代名詞でもある麺のソフト感をかき消すことなく、最適なバランスを保った一杯なのである。



INFORMATION


「久留米うどん」

東京都渋谷区東1-3-5 モアエクセレンス 1F

090-3901-0963

11:00〜15:30

土日祝定休




クレソン、ミョウガ、大葉で涼感たっぷり「サラダうどん」


 水風呂に入った後のような、あの得も言われぬ爽快感を食後に味わえるうどんがある。中目黒で20年ほど続く「豊前房」の、この時季人気の「香味野菜のサラダうどん」だ。



 通年提供されるメニューではあるが、個人的にはこの暑い時季にこそお薦めしたい一杯だ。凛とした器といい、クレソン・ミョウガ・大葉などの香味野菜といい、涼感たっぷり、夏らしさ全開! なのである。



スープの酸味で身体がみるみるリフレッシュ


 鰹節や昆布のだしをベースにした冷製かけつゆは、ごくごく飲めるように考慮されたであろうすっきりとした味わいながら、白醤油や九州の赤酒を使ったユニークなかえしだろうか、どこかモダンな印象も。隠し味にと加えた米酢とゴマ油の黒子感もいい。飲むほどに嫌みのない酸味に胃袋が目覚め、汗ばんだ身体がみるみるうちにリフレッシュされていくのを感じる。そして、麺。岡山の製麺所から取り寄せる手延べ麺というのも東京ではなかなか珍しい。



 手延べとは、秋田の稲庭うどんや長崎の五島うどんに見られる製法だが、包丁切りした麺とは形状も舌触りもまったく異なり、その醍醐味はシルクのようになめらかな麺肌と喉ごしの良さにある。かけつゆとともに舌や喉に吸い付くようにして食道を通る、甘美な質感がたまらない。フシ(伸ばすときに木の棒に当たる部分)のもっちり感も手延べならではのお楽しみだったりして。最後の一本を啜り終わるころには、身体の中を涼風が吹き抜けるような気分に包まれるはずだ。こんな暑い日はまたこのうどんを思い出してしまう(※「香味野菜のサラダうどん」は食材の入荷事情により数量限定の日も)。



INFORMATION


「豊前房」


東京都目黒区東山1-11-15 中目黒 ARK-II 1F

11:45〜14:30LO(火〜土のみ、祝休)、18:00〜22:00LO

月・第4日定休(夏季は毎週日休)



写真=井上こん




(井上 こん)

文春オンライン

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