“レフティ”稲垣吾郎も驚いた 左利きグッズの奥深い世界

8月13日(月)11時0分 文春オンライン

 国内随一の“左利き専門店”として知られ、日本だけでなく海外からも注目される文具店がある。その名は菊屋浦上商事(神奈川県・相模原市)。文具店ながら、文房具だけでなく、急須や包丁、鎌など、100種類以上の左利きグッズを店頭に並べている。メーカー数社と左利き商品の充実を目的とした「レフティ21プロジェクト」の呼びかけ人も務める、代表の浦上裕生さん(42)にお話を伺った。


◆ ◆ ◆



相模原にある“左利き専門店”「菊屋」


左利きの人が普通のカッターを使うと危険な理由


ーー左利きは人口の1割いると言われていますが、左利き専門店は珍しいですね。


浦上 もともとは、左利き用の商品は扱っておらず、ごく普通の文具店でした。母が店主をしていたころ、市役所からポツポツと左利き用商品の注文を受けており、需要があることは知っていましたが、当時は問い合わせがあったら対応する程度でした。


 93年頃でしょうか、当時中学生だった左利きの弟が、カッターを使って大怪我をしたんです。ごく普通のカッターでしたが、左利きの人が使うと、刃の切れる側が自分の方に向くので危険なんですよ。母は「お店では左利き用のカッターを扱っているのに、わが子には使わせていなかった」とショックを受けていました。そこで、「きっと他にも困っている人がいるはずだ。そういう人のために左利き専用コーナーを作ろう」と、本格的に左利き専用商品を集めるようになったんです。



「左利き用の鍵盤ハーモニカはありませんか?」


——どんな反響がありましたか。


浦上 予想以上に売れました。山梨や群馬、地方からも問い合わせが来るようになり、海外から買いに来てくれる人もいました。


 反響が大きかったので、急須や包丁、鎌など文房具以外の商品も仕入れるようになりました。今では、さまざまな商品について左利き用がないか、問い合わせがあります。最近よくあるのが、小学生が音楽の授業で使う鍵盤ハーモニカ。残念ながらそういう商品はないのですが、問い合わせてもらうことで、左利きの人が困っていることが何か、気づかされることがあります。




稲垣吾郎さんが驚いたドイツ製の定規


——(商品を見て)私も左利きですが、左利き用のグッズがこんなにあるなんて知りませんでした。


浦上 左利きの人は、右利き中心の社会に慣れすぎてしまっていて、意外と気づいていないんですよね。実際に使うことで、その使いやすさを分かってもらえるんです。


 先日、稲垣吾郎さんとラジオで対談したんですが、左利きの稲垣さんも、右利きのものにすっかり慣れているから、普段の生活で特に困らないと話していました。でも実際に使ってみると使いごこちが全然違うんですよ。


 これは、稲垣さんに使ってもらったドイツ製の定規で、数字が右から左に書いてあるんですね。「線を引く」って言いますけど、左利きの人は定規を使うとき「線を押す」ようにして使っているんです。稲垣さんも「あれ!? こんなにやりやすいんだ!」って驚いていました。番組がちょうどSMAPの解散直後だったので、放送後はものすごい反響がありました。稲垣さんが使った定規はドイツから300本仕入れていたんですが、もうこれが最後です。稲垣さんはワインもお好きだと聞いていたので、左利き用のコルクの栓抜きなども見てもらいました。スクリューの部分が逆向きになっているんですよ。



「左手専用マウス」を開発中


——そういえば、私も左利きで普通の定規が使いにくく、透明な定規をさかさまにして使っていました。ボールペンのペン先が緩んだりしてしまうのも、左利きだからと気づいたのは大人になってからです。


浦上 ボールペンのぺン先は、時計回りに回すと解体されるように作られていますからね。最近では、左利きの方の要望を受けて、ボディを回さないと解体できないようになっているボールペンも増えてきたんですよ。


——なるほど、メーカーも改良しているんですね。



浦上 ところで、この店頭の中で、あったらいいのに、ないなと思うものはありませんか?


——うーん。なんでしょうか。


浦上 マウスです。いま、仲間の会社に試作品を作ってもらえるか打診しているところです。


 これまでは、左利き用の商品を作って欲しいとメーカーに話してもなかなか興味を持ってもらえませんでした。作ってもらっても廃番になってしまう。店頭で並べて売るだけでなく、左利きの商品があることを知ってもらい、クラウドファンディングやSNSで盛り上げることで、メーカー側から作りたいと思ってもらえるような提案をしていきたいと思っています。例えば、左手でファスナーの開け閉めがしやすいジーンズの商品化も考えていますよ。



身近な人との「違い」を知ってもらえたら


——いま、浦上さんは文具メーカーのゼブラや、調理器具メーカーの「ののじ」など数社と一緒に左利きグッズを開発する「レフティ21プロジェクト」を呼びかけています。


浦上 2020年の東京五輪に向けて、日本の左利きグッズの豊かさを世界に知って欲しいですね。海外では、左利き用の万年筆があるくらいで、左利き用の商品は少ないんです。右利きの人も左利き用の商品を使って、左利きの人が普段どんな思いをしているのか気づいてもらえたら。「左利き」という切り口は、身近な人と人との違いを知るきっかけの一つになると思います。



写真=山元茂樹/文藝春秋



(「文春オンライン」編集部)

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