どういうことだってばよ?史上初、量子トリット(キュートリット)のテレポーテーションが可能であるということが実証される

8月13日(火)20時30分 カラパイア

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 またもや量子物理学の世界で”史上初”の文字が躍った。

 新たなる研究によると、「量子トリット(キュートリット)」のテレポートが可能であることが実証されたらしいのだ。これは、量子コンピューターや量子通信の新しい可能性を開く成果だそうだ。

 そもそも量子トリット(キュートリット)って何?というところから説明していこう。
・量子トリットとは?

 なんだかすごそうな話だが、いまいちよくわからないという人もいるだろう。耳慣れぬ言葉だが、そもそも量子トリットとは何なのか? しかも、それをテレポートさせるとは、いかなることか?
 
 今あるコンピューターはデータを「ビット」という最小単位で扱っている。それは2つの状態——すなわち 0 と 1 を基本としたものだ。

 これまで実現されてきた量子テレポーテーションは、あくまで「量子ビット(キュービット)」によるものだった。量子ビットもまた、2つの量子状態を基本としたもので、古典的なビットに対応したものだ。

 ところが量子トリット(キュートリット)の場合は、0 と1 に加えて、その両方の状態(「重ね合わせ」)も存在する。こちらは、0 と 1 と 2 でなる古典的なトリットに対応した単位だ。

 これを利用することで、コンピューターの処理能力や扱える情報量が飛躍的に向上するのだが、その制御はいっそう難しいものとなる。

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・不気味な遠隔作用「量子テレポーテーション」

 さて量子トリットについてなんとなくご理解いただけたと思うが、では量子テレポーテーションとは何なのか?

 それは「量子もつれ」という現象を利用して、ある場所から別の場所に量子情報を移動させることだ。

 量子もつれとは、もつれた2つの量子粒子の片方の状態を知れば、両者にどれほどの距離があろうとも、もう片方の状態も直ちに明らかになる現象のことをいう。

 たとえば、電子は「上向き」と「下向き」のスピンを持っているのだが、量子の世界の不思議な性質として、このスピンは同時に上向きと下向きの状態で重なり合っていることもできる。

 もしスピンの向きをどちらかに確定させたいのならば、観測すればいい。すると「状態の収縮」が起き、重ね合わせ状態はどちらかの状態にはっきりと決まる。

 今、電子Aと電子Bがあり、これらは量子もつれの状態にあるとする。ここでAのスピンを観測して、状態が確定したとする。すると、どいういうわけか、ただちにBのスピンの状態も確定してしまう。

 AとBが何光年離れていたとしても一瞬だ。光速ですら不可能なことをやってのける、まさにテレポーテーションのような現象だ。

 なんだかよくわからないって? それはそうだ。なにしろ、かのアインシュタインが「不気味な遠隔作用」と評した不可思議な現象なのだから。

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・ハッキング不可能なインターネット構築に利用できると期待

 これは人が瞬時に別の場所へ移動してしまうような、SF映画で見られるテレポーテーションとは違う。だが、この現象を利用すれば、ある場所での計測に基づいて、そこから遠く離れた場所で瞬時にしてデータを得ることができる。

 この量子情報は、光のフォトンによって送信することが可能で、将来的にはハッキング不可能なインターネット構築に利用できると期待されている。

 何者かがそこに干渉しようとすれば、もつれの原理によってハッキングを受けたことが瞬時に暴かれる。これは物理の基本法則に基づくもので、最強のプロテクトとなる。

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・もつれた量子トリットの作成に成功

 今回、中国科学技術大学の潘建偉氏らが行ったのは、レーザーとビーム分割器とホウ酸バリウム結晶を入念に調整することで、フォトンの経路をそれぞれ非常に近接した3つに分割し、量子トリットをもつれた状態にすることだ。

 12の状態(もつれ)を計測すると、0.75という忠実度を得ることができたという。

 これを行うには時間がかかり、あまり効率がいいとは言えないが、それでも量子トリットのテレポーテーションが可能であるということが実証された、と研究チームは述べている。

 この研究は『Physical Review Letters』の審査を通っており、現時点では『arXiv.org』で読むことができる。

 だが、この成果はダニエル・ガリスト氏の業績となる可能性もある。ガリスト氏は10状態のテレポーテーションを記録し、それを『Scientific American』に投稿。今は査読の結果を待っているところだ。

 ふむ、この研究は今のところ重ね合わせの状態にあるということだろうか? 勝者となった研究者が明らかになれば、敗者となった研究者も瞬時にして明らかになるというわけだ。じつに興味深い。

References:scientificamerican/ written by hiroching / edited by parumo

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