アナウンサー独立の裏にある局への“愛”と“憎悪”、男性がフリーを選ぶタイミング

8月16日(金)19時0分 週刊女性PRIME

(左から)福澤朗、羽鳥慎一、笠井信輔、徳光和夫、久米宏

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 世の中を騒がせた事件やスキャンダル、はたまたちょっと気になることまで、各分野のエキスパート“セキララアナリスト”たちが分析(アナリティクス)! ニュースの裏側にある『心理』と『真理』を、解き明かしてご覧にいれます。

笠井信輔が56歳で独立

男性アナが独立する理由とは?



 フジテレビの笠井信輔アナウンサーが2019年9月に独立することを発表した。「自分の知識や体験を生かした仕事にさらに携わっていきたいという思いから、退社を決断いたしました」とコメント。造詣(ぞうけい)の深い映画や演劇に関する発信を行っていきたいという理由だった。

 56歳でのフリー転身。いささか“遅めの独立”に見えるが、そもそも男性アナウンサーが会社を辞めるのはどういった理由や経緯が考えられるのだろうか。メディア研究家の衣輪晋一さんに話を聞いた。

「過去の例を見ると、久米宏さん(元・TBS)が36歳、羽鳥慎一さん(元・日本テレビ)が40歳、福澤朗さん(元・日本テレビ)が42歳、登坂淳一さん(元・NHK)が47歳、徳光和夫さん(元・日本テレビ)が48歳で独立しており、男性は30代後半から40代にかけてフリーになる方が多い傾向にあります。これは、年齢的に管理職になるタイミングで、デスクよりも現場で働きたいことが独立という道を選ぶのではないかと思われます。

 その意味では54歳でフリーになった堀尾正明さん(元・NHK)も、年齢的には遅めですが、このパターンに該当するでしょう。羽鳥さんは新人時代から携わっていた『ズームイン!!』終了への不満が独立に深く関わっており、“柔軟に働ける今のうちに”と幅広く活躍できる道を選ぶパターンも少なくない。30歳という若さで独立した古舘伊知郎さん(元・テレビ朝日)は『ワールドプロレスリング』で“お〜〜〜っと!”などの流行語を生み出し、人気・実力ともにピークで勢いがあるうちにフリーになりました。これは向上心や野心の強い方が独立の道を選ぶ代表例です」

 男性アナウンサーの独立に際しては「現場で働きたい」「会社への不満」「上昇志向」の3パターンが多いというのが衣輪さんの分析。そしてどの場合も、フリーとなった後の身の振り方(大手事務所のバックアップなど)が決まってからの独立がほとんどだとか。

「『フリーを考えている』というウワサや情報は芸能事務所を駆け巡り、引き抜きにもつながります。各テレビ局に忖度(そんたく)しつつ、芸能関係の記者からさまざまな情報を引き出しつつ、水面下で激しく繰り広げられる争奪戦の光景は業界ではよく見られます」



■女性アナの独立背景には、

悲しい“女性差別”があった?



 女性アナウンサーの場合、男性アナウンサーよりも独立のタイミングが圧倒的に早いのはなぜだろうか。そこには、日本社会の“女性の価値を若さに見いだす”悲しい事情があるそう。

「“アナウンス技術より見た目の美しさや魅力が優先される”という女性差別があるように思います。同時に、女性は現実的なので、彼女たちもこの状況を受け入れ、“若さと美しさ”を武器にしている場合も多々あり、問題をさらに根深くしているのが現状。人気に加えて実力も備えた有働由美子さん(元・NHK)などの例があるので、一概には言えませんが、若ければ若いほど、“タレント的価値”があるとされて、男性に比べて独立が早くなりがちです」

 その証拠に、女性アナウンサーから「アナウンス技術を見てもらえるとうれしい」というコメントをよく耳にする。“自身の価値があるうちに、技術を認めてもらえている場所で働きたい”と考える女性アナは少なくないようだ。

「ほかにも、結婚・妊娠・育児のこともあります。家庭を持つと時間の確保が難しくなるため、仕事量のコントロールのためにフリーになる人も少なくありません。日本社会では、いまだ育児は女性の役割という見方が強く、『産休制度の遅れ』や『男性の育児参加不足』なども、あながち無関係とはいえないでしょう。

 もちろん“自分で授乳し、育児や家事をしたい”という考えは尊重されるべきですが、同時に“働きたい”という思いも尊重されるべき。さまざまな生き方が肯定される社会に向けての過渡期だということも、こんな傾向から透けて見えます」

 時流という点では、“働き方改革”や、さらには“視聴者のテレビ離れ”という事態も、アナウンサーの独立とは無関係ではないという。

「昨今の『働き方改革』の流れで、会社の仕事を大量にこなさなければならないことに不満を持つアナウンサーや、人気アナばかりに仕事が集中していることに不満を持つアナウンサーは相当数います。アナウンサーは基本的に愛社精神の強い方が多いのですが、視聴率や営業不振で局の勢いが衰え、それでも給料は上がらないまま体力の限界を迎えたとき、やりたい仕事がまるで回ってこないといった事態に際し、その“愛”が紙一重である“憎悪”に変わることもあるでしょう。局を離れて活躍するアナウンサーの成功から、最近はフリー転身の傾向が加速しているように見えます。今後も勢いのない局からフリーアナウンサーが次々と出てくることは大いに考えられます」

 安定と高収入を両立させ誰もがうらやむ職業であると思いきや、勤め人としての悩み、さらに人気商売ゆえの過酷な競争にさらされているなど、大きなストレスがかかっていることがおわかりいただけたのではないだろうか。


<今回のセキララアナリスト>

衣輪晋一さん

メディア研究家・コラムニスト・コピーライター。サブカルライターを経てインドネシアでボランティア。帰国後は文芸批評と民俗学の「フィールドワーク」をメディア研究に取り入れエンタメ記事を作成。『TVガイド』などの雑誌、新聞、Web、ドラマ公式HPなどで執筆。

Twitter(https://twitter.com/shinichikinuwa)

<文/雛菊あんじ>

週刊女性PRIME

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