「LOVST TOKYO」がつくる、アップルレザーと巡りのいい暮らし

2023年8月16日(水)11時45分 ソトコト

TOP写真:身近な果物のひとつであるリンゴ。レザーの原料になるというから驚きだ。ブランド名には、「愛(LOVE)をもって、ヴィーガン/多様性(VEAGAN/VARIWTY)な考え方を一番(1st)に尊重できる文化を東京(TOKYO)から発信していく」というメッセージが込められている。


「ヴィーガンレザー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。一般的に、肉や卵、乳製品を含む動物性食品を一切摂取しない食の選択を「ヴィーガン」と呼ぶが、ヴィーガンレザーは、動物の皮を使わない合成皮革や人工皮革を指す。そのなかでも、アップルレザーを中心とした植物由来のものを使って、バッグなどのアイテムを展開するライフスタイルブランドが「LOVST TOKYO」だ。


「リンゴからレザーができるの?」と驚く人もいるかもしれない。アップルレザーは、本来であれば捨てられてしまうはずだったリンゴジュースの搾りかすを乾燥させ、粉状にしたあと、樹脂と混ぜて本革に近い質感にしたもの。軽くて水に強い合成皮革の特長はそのままに、従来のものより石油由来原料の使用を抑えることができる。「LOVST TOKYO」では、このアップルレザーのほかにワインをつくる際に出るぶどうの搾りかすが原料に使用されているグレープレザーの商品なども販売している。


ンプルな白のリュックは、日常の必需品。





ちょっとした外出にも、お気に入りを連れていきたい。





秘密のナンバーを刻印した、世界にひとつのキーホルダー。





小さなリンゴを発見!使う楽しみを与えてくれる。





ビジネスにもプライベートにも。





雨に濡れても大丈夫。そんな頼もしさも好きなところ。





使いやすい最小限のデザイン。でもインパクトは最大に。





保守的だったマインドが、アメリカの暮らしで一変。


こうしたヴィーガンレザーのアイテムを通じて、動物と環境に優しいライフスタイルや、多様性のある社会の豊かさを伝えていく。それが「LOVST TOKYO」が目指すブランドのあり方だ。この理念は、CEOの唐沢海斗さんが過ごしたアメリカでの経験がベースになっている。「アメリカの大学に通っていたときに『ヴィーガン』という言葉を初めて知ったのですが、実はその頃の僕は否定的にとらえていたんです。でも、大学卒業後に就職した会社があったカルフォルニア州で暮らすうちに印象が変わりました」と、唐沢さんは振り返る。





レストランにはヴィーガン・メニューがあり、食品店にはヴィーガン・フードが並ぶ。生き方のひとつとしてヴィーガンが当たり前に受け入れられている環境がそこにあった。「僕が保守的な人間だったからこそ、柔軟な思考を持つ現地の人たちに刺激を受けました。もっとヴィーガンへの理解を深めたくて調べると、動物愛護の観点だけでなく、畜産業界に由来する森林伐採や温室効果ガスの排出といった環境問題にアプローチできるライフスタイルのひとつであることがわかり、これまでの考えを反省したんです。そして、ヴィーガンの考え方やさまざまな価値観を知ることで生まれるワクワクした気持ちを伝えていきたい、そのための事業を起こしたいと思いました」。


帰国した唐沢さんは、2018年に動物に由来しない海外のヴィーガンファッションを販売するブティック事業を始める。「よりカジュアルでポップにヴィーガンの考え方を伝えていきたい」という理由から、飲食や食品業界ではなくアパレルを選んだ。しかし売り上げがなかなか思うように伸びず、1年半で畳むことに。唐沢さんはこの失敗を糧に変えて一から十まで責任を負うことができる自分のブランドを立ち上げることを決意。2021年に「LOVST TOKYO」としてブランドのスタートを切った。


「ものを売るだけ」ではなく、「巡りのいい暮らし」をつくりたい。


「LOVST TOKYO」が昨年から新たに掲げているのが、「サーキュラーリビング」という独自の言葉だ。「僕らのメッセージを伝えるだけでなく、プロダクトを届ける方たちの声にもっと寄り添いたいと思いました。そこでユーザーの皆様に買い物をする際に気になる点についてヒアリングを行い、出てきた声を『ポジティブな罪悪感5か条』として発信することにしたんです」と、唐沢さん。


それはこのようなものだ。「1.オシャレのために動物や環境を犠牲にしたくない」、「2.商品をつくる際の環境負荷がわからないと不安」、「3.単純にものを増やすことに罪悪感を感じる」、「4.環境負荷につながる大量生産・大量消費には加担したくない」、「5.余計なゴミを出したくない」。この5つについて、すべてでなくてもどれかに共感できる人は多いのでは? 「罪悪感というと悪い感情のイメージがありますが、動物や地球環境のことを思っているからこそ生まれる『良い感情』なんです。まずその気持ちに寄り添うプロダクトをつくり、お客様に満足してもらうのが僕らの役割。それが喜びというお客様の成功体験になれば、周りにいる人にも伝えたいと思ってもらえるはずです。そしてまた新たにヴィーガンやアップルレザーをきっかけに地球環境の問題について興味をもつ人たちが増えて、地球環境もよくなっていく──この流れを『サーキュラーリビング』と呼んでいます。僕らはこうした心と体、社会にとって『巡りのよい暮らし』を提案していきたいのです」。





ブランドの立ち上げから3年目に入った「LOVIST TOKYO」。従業員も増え、順調に売り上げも伸びてきている。そうしたなか新しい試みとして今年の春から始まったのが、共同開発を進めていた国産のアップルレザー「aplena」を使った商品展開だ。「創業当時は国産のアップルレザーがなく、種類が豊富なイタリア製のものを直接輸入していましたが、日本に届くまでのCO2排出量を考えると、いつかは国産にしたいと思っていました。そんなときに青森県庁の方に県内で廃棄されるリンゴの活用について相談を受けました。そこから『JAアオレン』(青森県農村工業農業協同組合連合会)と合成皮革メーカーの『共和ライフテクノ』さんと約1年かけて開発しました」と、唐沢さん。





現在、「aplena」を使用しているのは数アイテムだが、これから徐々に切り替えていく予定だ。さらに現在は、合成皮革よりも耐久性があり、より本皮の質感に近い人工皮革の国産アップルレザーの開発も進行中。「メンズラインのブランド展開も考えていますし、来年あたりにはショールームもつくりたいと思っています。僕たちは『ただものを売るだけ』の存在にはなりたくありません。これからも使命感をもって人と地球にとって『巡りのよい暮らし』を提案し、伝えていきたいと思っています」と、唐沢さんは目を輝かせる。


買い物は「もの」を手に入れるだけの行為ではない。新たな気づきを得たり、人生をより豊かにするきっかけになったりすることもある。「LOVST TOKYO」は、その機会を多くの人へ届けるために今日も走り続ける。








「LOVST TOKYO」・唐沢海斗さんの、 買い物にまつわるコンテンツ。


Website:ブイクックスーパー
https://vcooksuper.jp
豊富なヴィーガンフードを取り扱っているネットスーパーです。僕が肉は食べないけれど魚は食べる「ペスカタリアン」ということもあり、月に1度は利用しています。代表の工藤柊くんは、同時期に起業をした友人でもあります。


Website:taliki.org
https://taliki.org
物づくりをはじめ、社会課題を解決するために起業した方たちのインタビュー記事などが読めます。つくり手の思いを知ることで、応援したくなったり、納得感のある買い物ができるようになったりすると思います。


Radio:CEREAL TALK
Apple Podcast、Spotify
アメリカの最新トレンドや新しいブランド、小売りの情報などがメインに発信されているので、情報収集のためによく聴いています。サスティナブル・ブランドに関する話の回もあります。すごくおもしろいのでおすすめです。


photographs by Kei Fujiwara text by Ikumi Tsubone


記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

ソトコト

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