「失念」の意味は? 正しい使い方や「放念」との違い【ビジネス用語】

8月19日(月)12時13分 マイナビニュース

ビジネスメールなどで、「失念しておりました」という一文を目にすることがありますが、みなさんは「失念」という言葉を正しく使えているでしょうか。そこで今回は、「失念」の正しい使い方・誤った使い方について解説します。

○失念の意味と語源

失念は、「心を散乱させる煩悩の一つ」を指す仏教用語で、一般的には、「うっかり物事を忘れること」「物忘れ」「ど忘れ」という意味で使われています。

また、【念】には、「物事をしっかりと記憶すること」「思い」「考え」といった意味があることから、失念は、約束事や予定、相手の名前や指示された内容など、「物事」への記憶や思いを失った際に用いる言葉になります。財布やスマホといった物を置き忘れるなど、いわゆる「忘れ物」をした際に用いるものではありませんので、その点に注意しましょう。
○失念の使い方と例文

失念は、物事をうっかり忘れてしまった際に、自ら失態を申し出る際に用いる言葉です。ビジネスシーンでは、上司から与えられた業務や先方への連絡をうっかり忘れたり、大事なファイルの保管場所や相手の名前を度忘れしたりした際に、「失念しておりました」「失念いたしました」などと表現します。

たとえば、自分が取引先からの連絡を待つ側だとして、いつまで経っても連絡が来ず気をもんでいたところに、「忘れていました」「ついうっかりしてしまって」などと連絡が来たらどうでしょうか。

忘れていたことを軽視しているように感じますし、少々ぞんざいな扱いを受けているように思う人もいるのではないでしょうか。

そこで登場するのが「失念」という言葉です。実は、失念は「忘れる」の謙譲語なのです。謙譲語は、自分の言動をへりくだって言うことで相手を立てる敬語表現であり、取引先や目上の人に対して用いる言葉で、「失念しておりました」という形で使用するのが一般的です。では、実際にどのように使用するのか、例文でみていきましょう。

返信するのを失念しておりました。

会食の予約を失念しておりました。

会場までの地図の添付を失念しておりました。

いかがでしょうか。「忘れておりました」「失念していました」よりも、「失念しておりました」と言われた方が聞こえが良く、より丁寧で誠実な印象を受けますし、「申し訳ない」という気持ちも伝わってくるように思います。

また、自分の失態を申し出ているのですから、「申し訳ございません」などの謝罪の一文を添えるようにしましょう。

遅れて申し訳ありません。会議の開始時刻が変更になったことを失念しておりました。

お約束の日時を失念いたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。

大変失礼致しました。会場までの地図の添付を失念しておりました。

○失念を使用する際の注意点

先にも述べたとおり、失念は謙譲語です。そのため、あくまでも自分のミスを申し出る場合に使用するものであって、他者のミスに対して使用するものではありません。
○失念の誤った使い方

課長が会議の時刻を失念されていた。

お客様が契約書を失念されたそうです。

○失念の正しい使い方

私がパスワードを失念したために、ご迷惑をお掛け致しました。

追加の発注を失念してしまい、取引先からお叱りを受けた。

また、失念は、物事への記憶や思いを失った際に用いる言葉であって、物を置き忘れる「忘れ物」の場面で使用するのは誤りです。
○失念の誤った使い方

カウンターに携帯を失念した。

大事な書類をデスクに失念してしまいました。

お店に傘を失念しました。

○失念の正しい使い方

ファイルの保管場所を失念いたしました。

支払日を失念してしまい、申し訳ありません。

クライアントのお名前を失念してしまいました。

ファイルの保管場所を忘れるということは、「物」を置き忘れていることと同じように思うかもしれませんが、この場合、保管場所という「記憶」を失っていることになりますので、失念を用いるのが適切です。支払日や人の名前も同じことが言えます。

失念を使用する場合には、「他者の行為」と「忘れ物」に対しては使用しないよう注意しましょう。
○失念と「放念」の違い

ビジネスシーンなどで、「どうぞ御放念ください」と言われることがありますが、これは、「どうぞ気にしないでください」「どうぞ忘れてください」という意味です。取引先や目上の人に対し、敬意をもって「忘れていただいて構いません」という気持ちを表現する際に「放念」という言葉を用います。

失念と似ていることから、使用する場面や意味を混同してしまうことのないよう気を付けましょう。

忘れてしまったものは仕方がありませんが、大事なのは、その後の対応ではないでしょうか。まずは、相手に失礼のないようきちんと謝罪すること、そして、同じミスを繰り返さないことです。

ビジネスは信用が第一。うっかりミスで評価を下げてしまわぬよう、気を付けたいものですね。

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