村元哉中&高橋大輔、プロとして初の新プログラムで魅せた躍動と可能性

2023年8月28日(月)12時0分 JBpress

文=松原孝臣 


競技用のプログラムではないからこその試みも

 オープニングからフィナーレまで、2人は躍動した。

 8月25日から27日にかけて、KOSE新横浜スケートセンターで開催されたアイスショー「フレンズオンアイス」。それに先駆けて24日夜、公開リハーサルが行われた。

 2006年から17年目の今回も、荒川静香をはじめ、国内外からスケーターが参加。その中に村元哉中高橋大輔もいた。

 今年5月、競技から退くことを明らかにしてから、いくつかのアイスショー出演を経て、この日を迎えていた。

 その姿は、2人が結成以来培ってきた力と、未来を示す時間でもあった。

 この日、2人はプロとして初めての、新しいプログラムを披露した。

『Birds, Makeba』。

 振り付けは高橋のシングル時代のプログラム『マンボメドレー』や『道化師』を手がけたシェイリーン・ボーン。

「かっこいいダンサブルな、スタイリッシュなものを滑りたいなというところで、これはシェイリーンさんにやってもらいたいなと」(高橋)

 2人が姿を現すと、場内に歓声が響く。やがて2人が始動する。

「彼女も久しぶりにアイドルダンスの振り付けをしたということでかなり力を入れてくれて、振り付けも4時間くらいぶっ通しでやったり。前半がすごくジャジーな感じでスタイリッシュな感じで、後半はアフリカンな曲で盛り上がるというか、勝手に体が動き出すような」(高橋)

「(振り付けのとき)シェリーンがとにかくいろんな動きをして、ほんとうに自由にいろんな動きをして」(村元)

 複雑で途切れることがないかのような動きが躍動感とエネルギーを放つ。

 衣装もまたそれを引き立たせていた。村元が語る。

「アフリカでも使われている柄とかを衣装さんに10個くらいデザインをばーっと探していただいて、その中から合う合わないを考えて5パターンを使ったのかな、5パターンのデザインを使ってマッチするように作られた衣装です」

 カラフルな柄は、高橋、村元それぞれに左右非対称。角度に応じてさまざまな見栄えがするとともに2人が並ぶ、向かい合う、ポジションによっても千差万別に見える。エネルギッシュでもありスタイリッシュな演技を引き立たせていた。

 何よりも新プログラムが示したのは、2人が結成してからの時間で培ってきた土台だ。演技の中で見せる距離感、呼吸、一体感はこの2人ならではだ。あらためて2人で築いてきた世界を伝えていた。

 競技用のプログラムではないからこその試みもあった。高橋がジャンプを跳べば、村元はスピンを見せる。ソロとしての見せ場をも取り込んでいた。それはプロとなってこその新たな試みであった。


いちばん最初に思いついたグループナンバー

 この新プログラムにとどまらず、ショーの中で2人はさまざまな可能性を示した。

 前半の最後に配されたのはグループナンバーの『ポエタ』。2007年世界選手権での演技をはじめ、ステファン・ランビエールの代表作とも言われる作品を演じたのは、ランビエール、アンドリュー・ポジェ、高橋と村元だ。荒川が実現に至った経緯を説明する。

「いちばん最初に思いついたグループナンバーです。哉中ちゃんが(クリス・リードと)現役時代に滑ったのもすごく大好きでしたし、ステファンの代表作でありました。大ちゃんにはフラメンコとかタンゴとかそういった系統のものを滑っているのが見たいという希望がスケートファンにたくさんあって、私もその1人で。そこでこれは絶対にやってほしいな、と」

 4人それぞれに持ち味を、魅力を発揮したナンバーにあって、村元は指先まで行き届いた表現を見せる。

 そして高橋はステファンとの「ほんとうにステップ対決みたいな」(荒川)という、対角線上に陣取ってのステップを披露する。両者の存在感もさることながら、高橋の、一歩も引かぬかのような気迫と力強さは圧巻だった。ショーにおける屈指の場面を創り上げた。

 この2つにとどまらず、2人が氷上で滑る時間があった。新プログラムで見せた2人ならではの表現とこれから、さらにはそれぞれが各パートで示した表現の豊かさは、2人としての、そして高橋、村元それぞれのさらなる可能性を示していた。

 そういえば荒川のナンバーの振り付けは村元が担ったという。

「振り付けしていただいたのは実は3作目なんですけれども、シングルスケーターとしてのキャリアもあるので、シングルの動き、ダンサーとして培ってきた幅の広いジャンルを乗りこなす、哉中ちゃんの身のこなしが大好きで、哉中ちゃんにお願いしたいなと思いました」(荒川)

 競技生活に区切りをつけて出発した中で過ごした公演での新プログラム、それぞれの演技は、まるで解き放たれたかのようであり、2人の新たな始まりのようでもあった。

筆者:松原 孝臣

JBpress

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