青森県平川市ではお盆の時期に「墓踊り」をするらしい 一体どんな踊りなの?市役所に聞いてみた

2023年8月29日(火)20時14分 Jタウンネット

青森県津軽地方に、平川市という自然豊かな街がある。

その平川市役所の政策推進課広報広聴係が2023年8月15日、X(ツイッター)上で紹介した写真に、Jタウンネット記者の目は奪われた。

Xアカウント「青森県平川市シティプロモーション」(@Promo_Hirakawa)が投稿したのは、地域の掲示板を写したものだ。シンプルな張り紙に書かれているのは、こんな内容。

「墓踊り
いつ 令和5年8月20日
午前8時から
外川家より
廣船獅子踊保存会」

......「墓踊り」? なんだそれは? 生まれも育ちも埼玉県のJタウンネット記者にとって、初めて見る単語だった。

墓で踊るのか? 墓をモチーフにした踊りなのか? 墓と踊りって全然結びつかないが......。記者は22日、同市広報広聴係に話を聞いた。

地元出身の職員も「知らなかった」

取材に応じてくれたのは、「墓踊り」の張り紙を撮影しXにポストした三上咲希子さん。平川市出身だが、墓踊りのことは「今まで知らなかった」と話す。

「今回は広船という地区の墓踊りの張り紙を撮影しました。地域の人であれば知っているようです」(三上さん)

三上さんは張り紙を見て興味を持ち、20日に広船地区で行われた墓踊りに足を運んだ。その時に撮影した墓踊りの様子がこちらだ。

なにやら獅子舞のようなものを頭に被っている。腰には太鼓らしきものを下げ、足は小さく浮いている。ステップを踏んでいるように見える。

三上さんによると、広船地区では老人のような被り物をした先導役1人と獅子役3人で「墓踊り」を行う。墓地内に設けられた祭壇の前で先導役と獅子役が焼香をし、踊るのだ。

その後、お墓を1軒ずつ回る。今度は線香をあげて拝むのだという。一般的なお墓参りと同様だ。

広船地区の墓踊りは朝8時にスタートして、午前中いっぱい実施。張り紙にあった「外川家より」というのは、外川家のお墓が集合している区画から墓踊りを行うという意味だ。

それにしても、なぜこんな文化があるのだろうか。記者は22日、平川市教育委員会にも取材した。

お盆時期に行う「獅子踊」

同市教育委員会の職員によると、墓踊りは津軽地方の民俗芸能「獅子踊(ししおどり)」の1種。江戸時代にお盆の時期の祖霊崇拝を目的に始まったとされる。

平川市広船地区の獅子踊は、「オカシ」と呼ばれる翁の面をした先導役と、3頭の獅子役、笛・太鼓・手平鉦を持つ数人のはやし方で行われる。

春の「獅子おこし」から冬の直前の「獅子おさめ」まで地区の節目の時に行われていて、お盆の時期に行われるものを「墓踊り」と呼ぶそうだ。

獅子踊と聞いて、埼玉県民の記者は獅子舞を連想したのだが、「獅子踊は、獅子舞とは異なるものです」と教育委員会の職員。

「『獅子舞』は、権現様と称する獅子頭を被り、1人ないし2人一組で口を開閉する動作を取り入れた踊りであり、1人立、2人立獅子ともいわれ、青森県では県南地方(旧南部領)に多くみられます。一方、広船地区をはじめ津軽地方で多くみられる『獅子踊』は、これと異なり口の開閉はなく、先導役に合わせて3匹の獅子が統一された動作で踊るものであり、1人立2匹獅子とも呼ばれています」

「また、この獅子踊は、獅子頭の形態、衣装幕の文様、お囃子が各地区で異なっており、それぞれの特徴となっています。踊りにはいくつかの種類がありますが、祖霊崇拝、五穀豊穣、天下泰平、家内安全、疫病退散などを祈願するものとなっています」

鳥取にも墓踊りが!

東北特有の文化なのか......と思われた「墓踊り」だが、調べてみると、別の場所にも「墓踊り」があった。

鳥取県の最東端に位置する岩美町。この町の陸上(くがみ)という地域に「墓踊り」の風習があるのだ。しかし、同じ「墓踊り」でも、平川市の「墓踊り」とはずいぶん様子が違う。

陸上の墓踊りは、以下の写真のようなものらしいのだ。

8月22日、記者が同町の教育委員会事務局社会教育係の田中聡嗣さんに聞いたところ、陸上の墓踊りでは毎年8月14日、その年に初盆を迎える人の墓を取り囲み、音頭と太鼓の音に合わせて踊り回る。

田中さんによると「一般的な盆踊りをお墓でやるイメージ」。墓踊りには、老若男女問わず参加をしていて、浴衣を着て踊る人もいるそうだ。

その成り立ちははっきりとはわかっていないが、「明治から大正あたりに先祖供養のために始めたのではないか」と田中さんは述べた。

平川市も岩美町も全く形は異なるが、地域の人々の祖先を思う気持ちから「墓踊り」は生まれたと考えてよさそうだ。

Jタウンネット

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