【医師監修】妊娠中は寿司や刺身を食べても大丈夫? 生魚のリスク・注意点とは

8月30日(金)20時0分 マイナビウーマン子育て

妊娠がわかってから、食べ物に気をつけているママは多いことでしょう。十分な栄養を摂って赤ちゃんと自分を元気づけてあげたいですね。今回は栄養豊富な食材として人気の魚について。妊娠中に生魚を食べるリスクや、火を通していても量には少し注意が必要な点についても紹介します。

この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

魚は栄養たっぷりな食材

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魚はもともと栄養豊富な食材。まずは妊婦さんにうれしい、魚の栄養を紹介します。

魚に含まれる良質な栄養素

魚介類には、良質な動物性たんぱく質がたくさん含まれています。さらにビタミンD・E・B12やカリウム・カルシウム・マグネシウムなどの必須ミネラル、DHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸も多く含まれているのです。

さらにカロリーは低いことが多いので、健康的な食生活には欠かせない食材といえます。

妊娠中に魚介類を摂るメリット

妊娠中は妊娠前に比べて、さまざまな栄養素をバランスよく摂りたいものですが、何をどのくらい食べればよいのか迷うことも多いですよね。ここでは、妊娠中に摂りたい栄養素のうち、魚介類に含まれることが多いものについて見ていきましょう。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」[*1]によれば、たんぱく質は妊娠中期には1日10g、後期には25gも、妊娠前よりも多めに摂るように推奨されています。

また、ビタミンDの1日あたりの摂取目安量は、妊娠していない18歳以上が5.5μgなのに対して、妊娠中は7.0μgに増加します。ビタミンEは妊娠していない12歳以降の目安量が1日当たり6.0mgなのに対して、妊娠中は6.5mgです。ビタミンB12は1日あたりプラス0.4μg、マグネシウムはプラス40mg、妊娠前よりも多く摂るように推奨されています。

さらにDHAやEPAなどに代表されるn-3 系脂肪酸は、妊娠していない18〜49歳までの摂取目安量が1日に1.6gなのに対して、妊娠中は1.8gが目安量となっています。

厚生労働省の乳肉水産食品部会によれば、魚介類を全く食べない集団は高度不飽和脂肪酸が欠乏してしまうため、子どもの知能低下や大人の心臓病のリスクが上昇するという報告もあるそうです。妊娠中に魚介類を食べると、自分とお腹の赤ちゃんにいいことがたくさんあるのです。

妊娠中、寿司や刺身は食べていいの?

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妊娠中は、食べないほうが安全とされています

魚介類が栄養豊富で体に良いといっても、妊娠中は生魚は食べない方が安全とされています。リステリアなどの食中毒を引き起こす可能性があるからです。

生魚に潜んでいる細菌や原虫のリスク

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リステリアによる食中毒

リステリアは河川や動物の腸など、さまざまな場所に潜んでいる細菌です。

リステリア菌に感染すると、リステリア・モノサイトゲネス感染症(リステリア菌による食中毒)を発症します。発症した時の症状は発熱や悪寒、頭痛、背中の痛み、嘔吐などですが、妊婦さんが感染し胎盤や胎児にまで感染が及ぶと、流産や早産を引き起こしたり、ときに赤ちゃんが死に至ることもあります。

リステリア菌は塩分にも強く、冷蔵庫の中でもゆっくりと増えるため、冷蔵庫に長期間保存された食品を加熱しないでそのまま食べた場合、リステリア菌による食中毒を起こす可能性があります。妊娠中は抵抗力が落ちているため、妊娠前よりもリステリア菌に感染しやすくなっており、生魚は食べない方が安全です。

リステリアによる食中毒を予防する方法は、冷蔵庫で保存していたものも期限内に使い切ること、食べる前に十分に加熱することが基本です。なお、魚介類の場合は、生魚に加え、買ったあと火を通して食べることのないスモークサーモンや魚のパテなども控えた方が安心です(加熱殺菌していないナチュラルチーズや生ハム、肉のパテも同様に避けた方がよいとされています)[*2]。

アニサキスによる食中毒

アニサキスは寄生虫の一種で、その幼虫はアジやサバ、サケ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類に寄生しています。アニサキス幼虫が寄生した魚介類を生で食べると、アニサキス幼虫が食べた人の胃壁や腸壁に入り込んでアニサキス症という食中毒を起こします。

アニサキス症になると、激しい腹痛や気持ちの悪さ、吐き気などを起こします。アニサキス幼虫によるお腹の赤ちゃんへの影響については不明ですが、妊婦さんが発症した場合、吐き過ぎて脱水症状を起こしたり、胃や腸に食い込んだ虫により全身状態が悪くなることは考えられます。

アニサキス症も、一番の予防法は、食べる時、魚の中心までしっかりと火を通すこと(70℃以上、または60℃なら1分)。冷凍処理(-20℃、24時間以上)も有効とされていますが、家庭用冷蔵庫の冷凍室の貯蔵温度は一番低い機種でも−18℃以下と規定されており[*3]、釣った魚を家庭で冷凍したときなどは冷凍処理が不十分な可能性があります。ちなみに、酢や塩、しょうゆ、わさびではアニサキス幼虫は死にません[*4]。

妊娠中はとくに、アニサキスが寄生しやすい魚介類を刺身や寿司など、生の状態で食べるのはやめておきましょう。

魚に含まれる水銀にも注意しましょう

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自然界には鉱物から発生したものや工業的に排出された物質の形で水銀が存在しています。魚は小さい魚がより大きい魚に食べられ、その大きい魚がもっと大きい魚に食べられるという食物連鎖でつながっています。大きな魚は小さな魚に含まれる水銀も一緒に食べることになるため、大きい魚には小さい魚よりもたくさんの水銀が取り込まれています。

私たちがこうした大きな魚(イルカ、クジラを含む)を極端にたくさん食べると、水銀を多めに摂取する可能性があります。とくに妊娠中はこの水銀がお腹の赤ちゃんに影響を与える可能性があると言われています。

水銀が赤ちゃんに与える影響

お母さんが水銀の含まれた魚を食べると、お腹の中の赤ちゃんにもその水銀が届きます。お腹の中の赤ちゃんは体の外に水銀を排出できないため、水銀の影響を受けることになります。大人の場合は食べてしまった水銀を徐々に体の外に排出できるため、平均的な食生活をしている分には健康への影響はあまり心配ないとされています。

赤ちゃんに現れる影響ですがとしては、推奨されている目安量よりもかなり多く食べ続けていた場合であっても、生まれてから音を聞いての反応が1/1000秒以下のレベルで遅れる可能性がある程度と言われています[*5]。

基本的な考え方として、同じ食品を食べ続けると、その中に良くないものが入っていた場合にリスクになるので、いろんなものを食べるようにしたほうが良いですね。

水銀の多い魚とは

もっともたくさん水銀を含んでいるのはバンドウイルカ、次に多いのがゴンドウイルカの仲間のコビレゴンドウです。

キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラにも水銀が含まれています。また、これらの魚介類よりは少ないですが、キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ 、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツも水銀を含んでいます。

これらの魚介類は妊娠中食べてはいけないわけではなく、量が多すぎなければ食べても問題はありません。なお、キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶、サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオは、妊娠中でも水銀のことを気にせず食べることができます[*5, 6]。

魚を食べる時の目安とは

魚を食べるならこのくらいの量を

日本人が1回の食事で食べる刺身や切り身などの魚の量は、平均すると一人前で約80gとされています[*6]。1回に80gだけ食べるとすると、妊婦さんの場合、バンドウイルカは2カ月に1回まで、コビレゴンドウは2週間に1回までであれば問題はないと考えられています。

また、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラは週に1回、キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ 、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツは週に2回まで食べても問題ないとされています。

いろいろな魚を組み合わせて食べる時には、それぞれの量を工夫することになります。たとえば週1回食べられるクロマグロとメカジキだけをその週に食べる場合は、食べる量をそれぞれ1/2にします。週1回食べてもOKな魚のなかで3種類を食べるなら、食べる量はそれぞれ1/3にしましょう。

保存状態にも気を付けて

食べる量や調理方法は合っていても、保存状態が悪いと食中毒を起こしやすくなります。特に夏場は食べ物が痛みやすいので、保存の仕方に気をつけましょう。

魚介類や肉を買う時には消費期限が切れていないかチェックして、できるだけ早く家に持って帰ります。氷や保冷剤で冷やしながら帰るとより安全です。

買い物から帰ったら、汁がもれないように袋に包んだまますぐに冷蔵庫に入れましょう。なお、生魚はその雑菌が移らないよう、生で食べる食品とは離しておきましょう。生魚を切った後の包丁とまな板はすぐに洗い、熱湯をかけておくことも大切です。

妊娠中は消化機能が低下していることも忘れずに

妊娠すると、女性ホルモンの影響で胃腸の動きが鈍くなったり、胃酸が逆流しやすくなります。妊娠後期に入ると、妊婦さんの70%が逆流性食道炎を起こすとも言われています[*7]。さらに妊娠中は便秘と下痢を起こしやすいものです。

そのため、妊娠前は普通に食べられていたものでも、妊娠してからは受け付けなくなったり、食べると胃腸の調子が悪くなることもあります。魚介類に含まれる水銀や細菌に注意するのはもちろん、妊娠中は消化機能が落ちていることも覚えておきたいですね。

まとめ

妊娠すると、お腹の赤ちゃんのことが気になってつい食べることによるリスクに目が向いてしまうことと思います。妊娠前に比べて胃腸の調子が悪くなると、食べるのが怖くなることもあるかもしれません。でも、食べるのを控えてばかりいると、お母さんと赤ちゃんに必要な栄養分が不足してしまいます。「どんなものをどんなふうに食べると、どんなリスクがあるのか」、正しい知識を持てば、安全に十分な食事を取ることができます。おいしく食事を味わいながら、お腹の赤ちゃんと一緒に楽しい妊娠期間を過ごしていきましょう!

(文:大崎典子/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

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