【医師監修】 妊娠中の温泉はダメなの!? 妊婦の温泉、気を付けるポイント

8月30日(金)18時0分 マイナビウーマン子育て

「温泉でも行こうよ」なんて言葉がまるで挨拶のように交わされるほど、日本人は温泉好きです。「子どもが生まれて忙しくなる前に温泉でゆっくりしたい!」と思う妊婦さんも少なくありません。妊婦さんが温泉に入るとき、気を付けたいポイントを確認しておきましょう。

この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

「妊婦は温泉に入ってはいけない」は昔の話

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以前は温泉法で「禁忌」とされていた

日本には温泉資源を守ったり、適切な温泉利用をすすめるために「温泉法」という法律が定められています。そして、意外に思われるかもしれませんが、なんと、ごく最近まで温泉法では妊娠中(とくに初期と末期) の女性の温泉浴は「禁忌」とされていたのです。「禁忌」とは、「やってはいけないこと」という意味です。

この法律は戦後すぐに作られた法律でした。しかし、産まれて最初の沐浴からずっと温泉を使っている大分県別府市の産科医などが「温泉が妊婦に良くない」という根拠はないとして、その理由を検証するように訴えました。結局、妊婦を温泉浴の禁忌症とする医学的根拠はないことがわかり、2014年の法改正で禁忌ではなくなりました。

妊娠中、温泉に入ることで体に起こる変化

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法律上の問題はなくなったものの、妊婦さんの入浴には注意しておきたいこともあります。温泉ではないお風呂でも同様です。やはり妊娠中は非妊娠時とは体の状態が大きく異なることに注意する必要があります。ここでは、入浴により妊婦さん、お腹の赤ちゃんに起こると考えられる体の変化をあげます。

母体への影響

妊婦さんに限りませんが、一般的に、入浴して体を温めると全身の血管が拡がり、血圧はやや低下します。また、心臓から送り出される血液の量が増え、代謝も促進、疲労回復につながるとされます。さらに、1回であっても、入浴は交感神経や筋肉の緊張を低下させ、ストレスを軽減させる作用もあるとされています。ただし、これは通常のお風呂でも同じことです。

赤ちゃんへの影響

続いておなかの中の赤ちゃんへの影響を考えてみましょう。

温泉かそうでないかに関わらず、40〜41℃の湯舟に10分入浴すると妊婦さんの深部体温(環境の変化を受けにくい、からだの内部の体温)が一時的に1.0〜1.5℃上昇します。これに伴って、おなかの赤ちゃんの心拍数や臍帯血流量も増加します。これは赤ちゃんの体温が上がりすぎるのを防ぐために起こる変化と考えられています[*1]。

なお、いくつかの動物実験では、妊娠初期に母体の体温が38℃以上になると、胎児の神経系に影響を及ぼすという報告があります[*2]。また、ヒトでも、母体が発熱している場合は、胎児の酸素需要量が増加し、通常より胎児機能不全となりやすい可能性があるとも言われています[*3]。

しかし、40〜41℃の湯舟に10分など、通常の入浴の仕方であれば体温が長時間38℃以上になることはほとんどなく心配ないとされています [*4]。

ただし、経産婦(出産経験がある妊婦)では、10分以上の入浴をしていた妊婦さんで切迫流産による入院が有意に増加したという報告もあり、この点からも妊婦さんが温泉につかるのはだいたい10分以内にしておいたほうが安全と言えそうです[*5]。これも、通常のお風呂でも同じことが言えます。

妊娠中の温泉 感染症のリスクは?

ここでは、不特定多数の人が出入りする温泉によって、感染症がうつる可能性があるかどうかについて確認しておきたいと思います。

妊娠中は免疫力が低下している

妊婦さんはそもそも、自分自身とは別の生命である赤ちゃんを異物と認識して排除しないようにするため、免疫の働きが抑制されています。それによってさまざまな感染症にかかりやすい状態になっています。

温泉に入る際の感染症のリスクはどのくらい?

とはいえ、温泉入浴することが外陰や腟、子宮の感染症を増やすことは証明されておらず、それを否定する学会報告もあるとしている専門家もいて[*6]、温泉水を介した感染はあまり心配しなくても良さそうです。ただし、入浴する際は、できるだけ衛生的に管理されている施設を選び、洗い場の椅子や洗面器などはよく洗い流してから使用するようにしましょう。

妊婦さんが温泉に入るときに注意したい点

妊娠経過にとくに問題がなく、切迫流産・早産などの心配があまりない妊婦さんが、近場の温泉に入浴する分には比較的安全と考えられます。ただ、出血や腹痛など、突然何かが起こっても不思議ではないのが妊婦さんの体です。心身ともにリラックスできる温泉を上手に利用するために、妊婦さんが気を付けたい点をまとめておきます。

温泉に行く前の準備

身体の負担を考え、長距離の移動は避けましょう。また出かけるときは、必ず母子手帳を携帯しましょう。

脱水に注意!長湯をしない

妊娠中は血液が固まりやすくなっています。それは、出産のときに胎盤がはがれ出血することに備えるからだの自然な変化と考えられていますが、この傾向があるために妊婦さんは血管の中で血液が固まってしまうことがあり、その結果として脳梗塞などの重大な病気が引き起こされる可能性があります。

長時間の温泉浴や入浴によって、発汗のためにからだが脱水状態に近づくと、血液の固まりやすさが助長されます。これを防ぐため、こまめに水分を補給するようにしてください。また、サウナに入るのはやめましょう。

浴室内や脱衣場で転ばないように

妊娠中は血圧が不安定になります。さらに入浴後は一時的に血圧が下がってのぼせるため、浴場や脱衣スペースで転倒するリスクが高まります。また、温泉施設は自宅の風呂よりも広く、慣れていないことも、転ぶ危険性を増やします。

加えて、おなかが大きくなってくると、からだの重心が偏るため、それもまた転倒しやすくする原因です。

温泉施設に行ったときは、できるだけマットが敷いてあるなどの滑りにくいスペースを歩くようにし、また入浴直後はすぐに立ち歩かず、しばらく座椅子に座ってのぼせを覚ましてから動くようにしましょう。

温泉に入るべきでない時とは?

食事のすぐ後や寒暖差の激しい時は、入浴を避けてください。また、熱があるとき、出血があるとき、お腹の張りがあるときも避けた方が良いでしょう。迷うときは、まず、医師の診察を受けてください。

一人での入浴を避ける

妊婦さんは普段より血圧が低めになっています。また、温泉で温まるとさらに血圧は下がりやすくなります。加えて、妊婦さんはもともと起立性低血圧による立ちくらみも起こりやすくなっています。ふらついた時に支えてもらえたり、万が一、倒れてしまってもすぐに見つけてもらえるよう、できれば一人ではなく、家族や友人と入浴するようにしましょう。

熱すぎる/ぬるすぎる湯は避ける

湯舟の温度が42℃以上の熱いお湯、または30℃以下のぬるすぎるお湯では、交感神経が刺激され血圧が上昇するため、妊婦さんはとくに避けるべきでしょう。40〜41℃のお湯に10分程度つかり、1日2回を限度に入浴するのが良いとされています[*1]。

なお、冬の露天風呂、雪見風呂はとても風情があるものですが、外気温とお湯の温度の差が大きく、体感温度が急変するため、これも妊娠中は避けた方が無難です。

まとめ

温泉に入ると、心からリラックスできたと感じる女性は多いのではないでしょうか。妊娠中も楽しみたい温泉ですが、妊娠していないときと比較して、やはり気を付けたい点がいくつかあります。過度に怖がる必要はありませんが、何かあってから後悔するのではなく、何事も事前にリスクの可能性を知っておけると安心ですね。ここでお話ししたポイントを把握したうえで、お腹の赤ちゃんとともに湯の香を心ゆくまで楽しみましょう。

(文:久保秀実/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

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